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オートバイのあれこれ『デザインテーマはイルカ!個性が光ったヤマハのジール』

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は『デザインテーマはイルカ!個性が光ったヤマハのジール』をテーマにお送りします。

カワサキ『ゼファー』の登場により盛り上がった1990年代のネイキッドブーム。

▲ネイキッドブームの火つけ役となったカワサキ・ZEPHYR
▲ネイキッドブームの火つけ役となったカワサキ・ZEPHYR

400ccのゼファーから始まったこのブームでしたが、この波はクウォーター(250cc)クラスおよび大型クラスにも広がっていくこととなります。

そのなかで生まれたネイキッドモデルの一つが、ヤマハの『ZeaL(ジール)』(別称:FZX250)でした。

▲ネイキッドブームのなか、ヤマハは400ccクラスにはXJR400、250ccクラスにはジールを投入した
▲ネイキッドブームのなか、ヤマハは400ccクラスにはXJR400、250ccクラスにはジールを投入した

ジールがデビューしたのは、1991年(平成3年)のこと。

91年というと、ホンダ『ジェイド』やカワサキ『バリオス』のデビューイヤーでもあり、この年は250ccクラスにおけるネイキッドブームの始まりの年といっても差し支えないでしょう。

▲ホンダのJADE。ジールと同じ91年にリリースされた
▲ホンダのJADE。ジールと同じ91年にリリースされた

ジールは、比較的スタンダードな作りだったジェイドやバリオスに対し、各部に個性が盛り込まれていました。

最も分かりやすいのが外観で、ジールのデザインモチーフは「ジャンプするイルカ」でした。

▲ジールのスタイリングイメージは「ジャンプするイルカ」
▲ジールのスタイリングイメージは「ジャンプするイルカ」

たしかにそう言われると、燃料タンクからシート、テールカウルにかけての一連のシルエットが、身体をしならせたイルカのように見えてきますね。

タンクの下に備わるシュラウドや、右側2本出しのマフラーも目を惹くポイントといえるでしょう。

またジールは、若年層(10代〜20代前半)のビギナーライダーにターゲットを絞って開発されており、エンジンはレーサーレプリカモデル『FZR250R』譲りのものでありながらも、低中速トルクを重視した特性に改められ、トランスミッションも、高速道路などを快適に巡航できるようにと、6速がオーバードライブの設定とされていました。

▲ジールのパワーユニットは、FZR250Rに搭載された水冷4気筒エンジンが元になっている
▲ジールのパワーユニットは、FZR250Rに搭載された水冷4気筒エンジンが元になっている

そして、ジールのディテールとしてぜひ注目しておきたいのが、タンク前方の小物入れとシート下に格納されたミニバッグです。

小物入れはコインケースやタバコが入るくらいのサイズで、ミニバッグは使用時に取り出してタンデムシートの上に固定し使えるようになっていました。

(デザイン的な流行もあるのでしょうが、)コンパクトさとコストが重視され、なんだかんだ荷物を積みづらくなっている最近のオートバイと比べると、ジールのこの実用性の高さ(=ヤマハの手厚い配慮)は、今改めてとても魅力的に思えます。

個性を演出しづらいネイキッドモデルにあって、ジールはオリジナリティが強く光る1台だったといえるでしょう。

しかし、その個性は当時のトラディショナルスタイル(旧来的な形)を求める風潮の下で広くは受け入れられず、ジールは一度のマイナーチェンジが施された後、数年でカタログ落ちしてしまったのでした。

画像引用元:ヤマハ発動機/本田技研工業/川崎重工

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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