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誤爆? トランプ前大統領が突如ブルース・スプリングスティーンを「口撃」した因縁とは #専門家のまとめ

2024年の米大統領選挙、ジョージア州の集会でのトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

8月3日、米大統領選の激戦州ジョージアでの集会の壇上で、前大統領のトランプが米ロック界大物のブルース・スプリングスティーンについて「私は彼を、決して好きだったことはない!」などわざわざ言及。民主党の候補指名確実のカマラ・ハリス(数日前にジョージアで旬のポップスターを交えた華々しい集会をしたばかり)を批判する流れでの発言だった。トランプの「あせり」ゆえの誤爆に見えるこの背景には、じつは長年の因縁があった。

ココがポイント

▼「私は自分を好きになってくれる人しか、好きじゃないんだ」←これがトランプがスプリングスティーンを「嫌う理由」

・Donald Trump hits out at Bruce Springsteen and rips 'I never really liked him' in bizarre Georgia rally rant (The Mirror US)

▼上記集会でのトランプは、ハリスを「IQが低い」とまで言って罵倒。このタガの外れっぷりは彼の「あせり」ゆえからとの指摘も

・民主ハリス氏が猛追 共和トランプ氏に焦り(共同通信)

▼じつは悪口の先攻はスプリングスティーンだった。16年、民主党ヒラリー候補応援の彼はトランプを「まぬけ(Moron)」呼ばわり

・Bruce Springsteen Calls Trump a “Moron,” Might Campaign for Hillary Clinton (VANITY FAIR)

▼しかし同年の投票日前日、ヒラリー陣営で歌うスプリングスティーンの「ダンシング・イン・ザ・ダーク」には、すでに不穏な影が…

・ブルース・スプリングスティーンもヒラリーのサポートでアコギ・ライブ! 映像(rockin'on.com)

▼そして米大統領選における「有名人歌合戦」を過熱させたのは、やはり16年のトランプ(の無許可楽曲使用)だった

・トランプよ、俺の歌を使うな! ニール・ヤングもR.E.M.も大激怒……お騒がせ男の「炎上選曲」が止まらない(現代ビジネス)

エキスパートの補足・見解

もはや遥かなるむかし、アメリカの大統領選は、こんなではなかった。耳を覆いたくなる侮蔑が飛び交い、まるでTVのリアリティ番組みたいな「芝居がかった」ポーズやアピールで相手陣営を徹底的に粉砕すべく攻撃するのは——これらのほとんどは、トランプ前大統領が「過熱」させたものだと言っていい。2016年の予備選挙の段階から(おそらくは「わざと」無許可で楽曲を使用するなど)奇矯さは格別で、そこに僕は着目。上記のリンク、現代ビジネスの記事にした。そしていま、SNSをも総動員した「熱狂勝負」の渦中で、政界の元祖リアリティ・スターであるトランプが逆に劣勢に立っているようにも、僕の目には映る。鉄壁の守りを固めるMAGAの砦に篭って、なにやらそこから、意味がよくわからない(だが語感だけは強烈な)揶揄や罵倒が時折投擲されてくるかのような……そんな現状について、出発点からの流れを、おもにスプリングスティーンとの因縁を軸にまとめてみた。米ショービズ界と大統領選挙のかかわりの一例がここにある。

作家。小説執筆および米英のポップ/ロック音楽に連動する文化やライフスタイルを研究。近著に長篇小説『素浪人刑事 東京のふたつの城』、音楽書『教養としてのパンク・ロック』など。88年、ロック雑誌〈ロッキング・オン〉にてデビュー。93年、インディー・マガジン〈米国音楽〉を創刊。レコード・プロデュース作品も多数。2010年より、ビームスが発行する文芸誌〈インザシティ〉に参加。そのほかの著書に長篇小説『東京フールズゴールド』、『僕と魚のブルーズ 評伝フィッシュマンズ』、教養シリーズ『ロック名盤ベスト100』『名曲ベスト100』、『日本のロック名盤ベスト100』など。

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