仙台でネットカフェ閉鎖による「ホームレス」が急増 支援団体がホットライン開催
コロナウイルス感染拡大の影響で、勤めていた会社が休業や事業縮小、閉鎖などになり、生活苦に陥る人が日に日に増えている。
河北新報の報道によれば、仙台市内で路上生活者支援を行う「仙台夜回りグループ」にも、コロナの影響で仕事や住む場所を失って路上で生活せざるを得なくなったという相談が4月に入り30人余りから寄せられたという。
そのうち3分の1が20代や30代であり、仙台駅周辺のベンチにいた30代男性は3月にアルバイト先を解雇され、アパートの家賃が払えなくなり路上生活を始め、「何とか仕事を探し、部屋に入って普通の生活がしたい」と話したという事例も紹介されている。
参考:4月27日 河北新報「<とびらを開く>コロナ禍に向き合う 路上生活者支援の仙台夜まわりグループ」
これまでは非正規などで何とか生活を成り立たせていた人が、コロナ切りに遭い、さらにコロナの影響でどこも新しく雇ってくれないため、急速に困窮して路上生活に陥っているのである。
こうした「ホームレス状態」にはあるのは屋外で過ごさざるを得ない人たちだけではない。貯金がまだわずかでもあるうちはビジネスホテル、さらにお金がなくなるとネットカフェに滞在している人も多い。ネットカフェに泊まるお金もなくなると、路上で生活するかしかなくなる。
私が代表を務めるNPO法人POSSEの仙台支部(仙台POSSE)にも、コロナの影響で勤めていた飲食店が閉店になり、ネットカフェで生活しているという相談や、派遣でホテルの仕事をしていたが持病とコロナの影響が相まって雇止めになり、ネットカフェでしばらく生活しているという相談などが寄せられている。私たちに相談した時点で所持金が数千円以下、あるいは数百円以下という場合もある。命の危険がある水準の困窮である。
宮城県によれば、4月22日の時点で県内に20店舗以上あるネットカフェに、100人近くが長期間寝泊まりしているという。コロナの影響が長期化することで、こうした住居喪失者がさらに増加していくことが懸念されるが、行政の支援は行き届いていないのが現状だ。
ネットカフェへの休業要請でよりピンチに
ネットカフェは一般に三密空間になりがちだ。長期間寝泊まりすればコロナの感染のリスクは大きい。こうしたことから、緊急事態宣言が出た自治体を中心にネットカフェへの休業要請が広がっている。だがこうした対策は感染防止のためには必要だが、移動先の宿泊場所が確保されていなければ、路上生活者のさらなる増大を招きかねない。
こうした事態を受け、宮城県は4月22日にコロナの感染拡大防止策としてネットカフェに休業を要請する代わりに、利用者が1泊3000円程度で宿泊できる個室利用可能なホテルを22日時点で青葉、宮城野両区の宿泊施設で6か所、計359室確保した。
参考:4月23日 河北新報「宮城県、ネットカフェに休業要請 代用の割安ホテル確保」
(5月2日現在宮城県内に確保された宿泊施設数は22か所となっている。宮城県の公表している宿泊施設のリスト)
こうした措置は、東京都で当初問題になった多人数の相部屋など感染拡大のリスクが高い無料低額宿泊所ではなく、個室を当初から行政が用意したという点で評価できる。
しかしながら、この代替の宿泊施設の平均1日3000円の宿泊費は利用者の自己負担だ。「コロナ切り」で仕事を失った人にとっては決して少なくない金額である。金額を聞いて最初から利用を諦め、路上生活に陥ってしまった人が大勢いるのではないかと危惧される。
リーマンショック時の制度を今こそ活かせるはず
こうした問題を受け、「東北生活保護利用支援ネットワーク」、「反貧困ネットワークみやぎ」、「NPO法人POSSE仙台支部」の3団体は4月28日に宮城県と仙台市に、
ネットカフェ代替施設の宿泊費の無料化
住居喪失者に対する生活困窮者自立支援制度・生活保護・住居確保給付金等の制度についての周知
を積極的に行うことを柱とする運用改善を要請した。
さらに、同ネットワークでは次の三つの提案もしている。今回と同様に大量の住居喪失者が発生したリーマンショック時に行われた、公的住宅(公営・UR・公社)のストックの活用にならった提案だ。
(1)公的住宅の空き室の住居喪失者への無償提供
(2)改正住宅セーフティネット法に基づく「セーフティネット住宅」等を活用し、民間住宅の空き家・空き室を行政が借り上げて住居喪失者に無償提供し災害救助法に基づく「みなし仮設」制度に準じた制度を導入すること
(3)ホームレス状態の生活困窮者への個室提供とすみやかな居宅移行支援を行うなどの制度改善をぜひ行政には実現していただきたい。
コロナ切りで住居を失っても使える制度がある!
気がかりなのは、宮城県が用意した代替施設に移行できなかったネットカフェ生活者である。28日の3団体申入れの際の県の回答によれば、28日の時点で用意した宿泊施設に来たネットカフェ生活者は把握できている限りで7名のみだったという。
100名中7名はあまりに少ない。この時点で営業を続けているネットカフェがあったため、全員がいきなり路上生活に陥っているわけではないだろうが、少なくない方が路上生活を強いられているのではないかと危惧される。
ではもし、コロナ切りでネットカフェや路上での生活に陥ってしまったら、3000円の費用が必要な県の用意したビジネスホテルの利用以外には、どういった制度が利用できるだろうか?
住居確保給付金や緊急小口資金の貸付が、最初に検討すべき選択肢だろう。しかし、所持金が残り数千円しかない場合、1日か2日で宿泊費や食費を使い果たしてしまう。給付金や貸付金の手続きを進めたり審査の結果を待つ時間的余裕すらない場合も多い。
そうした場合、実は生活保護制度を利用してビジネスホテルなどに一時宿泊するための費用をもらい、入居できるアパートを探す方法がある。
生活保護は申請してから、通常14日以内、特別な事情があっても30日以内に決定の可否を出すと定められている。コロナを受けて国も簡素化した手続きで迅速な審査を自治体に求めているが、それでも一定の日数がかかってしまっているのが実情だ。
そこで実は、生活保護には、住居喪失者が申請してから決定を待つ間にビジネスホテル等に宿泊した費用を、保護開始後の保護費総額とは別に、1か月分の住宅扶助費に等しい金額の範囲内で支給できる仕組みが存在している。これはリーマンショック時に厚労省が全国の自治体に出した通知に根拠があり、今回のコロナを受けてあらためて厚労省から通知が出ている。
(3月10日 新型コロナウイルス感染防止等に関連した生活保護業務及び生活困窮者自立支援制度 における留意点について)
この通知では、この宿泊費は保護の開始以後に支払われるとされているが、所持金が極めて少ない場合には、申請後にすぐにこの費用を支給するよう求めることができると考えられる。。
残念ながら、自治体によっては「住所がないと生活保護を申請できない」、「これから住む予定のアパートの見積書や契約書を持ってこなければ申請を受け付けない」という説明を行政から受けることがある(生活保護費の一部は自治体の負担であるため、他の自治体に申請してほしいと思ってこういう行動をとるケースが実際に存在し、社会問題となっている)。
しかしこれらはすべて生活保護法に反する説明である。実際には、ネットカフェでも路上でも知人宅の居候状態であっても、生活保護を申請することが可能だ。
行政にはコロナ切りによる住居喪失者の支援のため、上記のように現在使える制度を積極的に通知し、リーマンショック時の先例も活かしながらより良い制度運用を図っていただきたい。
現在コロナ切りにあってネットカフェ、路上生活、知人宅への居候状態で過ごしている方で、どこに相談すればいいか分からない、行政に相談しても対応してもらえないなどお困りのことがあれば、NPO法人POSSEをはじめ支援団体に気軽に相談してほしい。本日5月3日は以下の通り相談ホットラインも開かれるのでぜひ活用していただきたい。
新型コロナ労働・生活総合ホットライン
5月3日(日)13〜20時
対象:全国の労働・生活相談を抱えている方。学生や外国人労働者の方も対応可能。
※通話無料、相談無料、秘密厳守
◆相談ダイヤル
○代表:0120-333-774
※回線の混雑が予想されます。各地方のダイヤルや生活相談専用ダイヤル、業種・職種別の相談窓口もご利用ください。
各地方の相談窓口(メールの返信は数日要する場合もあります)
【北海道】
さっぽろ青年ユニオン TEL:080-3262-6023 MAIL:seinenunion_sapporo@yahoo.co.jp
【東北】
仙台けやきユニオン TEL:022-796-3894 MAIL:sendai@sougou-u.jp
みやぎ青年ユニオン MAIL:miyagi.union@gmail.com
【関東甲信越】
首都圏青年ユニオン TEL:03-5395-5359 MAIL:union@seinen-u.org
全国一般東京東部労働組合 TEL:03-3604-5983 MAIL:info@toburoso.org
総合サポートユニオン TEL:03-6804-7650 MAIL:info@sougou-u.jp
日本労働評議会 TEL:03-3371-0589(両日とも13時~17時)
【東海】
名古屋ふれあいユニオン TEL:052-526-0661(5/2のみ)
【関西】
大阪全労協 TEL:06-4793-0735
【九州】
連合福岡ユニオン TEL:092-273-2114、092-273-2161 MAIL:fukuuni@hyper.ocn.ne.jp
【生活相談の専門窓口】
反貧困ネットワーク埼玉:048-864-1622(4回線・代表番号)
【外国語対応の相談窓口】
英語・フランス語対応:東ゼン労組 TEL:090‐9363‐6580 MAIL:info@tokyogeneralunion.org
英語対応:POSSE外国人労働サポートセンター TEL:03-6699-9359 MAIL:supportcenter@npoposse.jp
【学生アルバイトの相談窓口】
首都圏学生ユニオン TEL:03-5395-5359 MAIL:syutokengakuseiunion@gmail.com
ブラックバイトユニオン TEL:03-6804-7245 MAIL:info@blackarbeit-union.com
【業種・職種別の労働相談窓口】
飲食店ユニオン TEL:03-5395-5359 MAIL:restaurant.workers.union@gmail.com
自販機産業ユニオン TEL:03-6804-7650 MAIL:info@sougou-u.jp
介護・保育ユニオン TEL :03-6804-7650 MAIL:contact@kaigohoiku-u.com
日本労働評議会(クリーニング) TEL:03-3371-0589(両日とも13時~17時)
総合サポートユニオン(コールセンター) TEL:03-6804-7650 MAIL:info@sougou-u.jp
日本労働評議会(産業廃棄物) TEL:03-3371-0589(両日とも13時~17時)
私学教員ユニオン TEL :03-6804-7650 soudan@shigaku-u.jp
日本労働評議会(タクシー) TEL:03-3371-0589(両日とも13時~17時)
美容師・理容師ユニオン TEL:03-5395-5359 MAIL:ribiyou@seinen-u.org
常設の無料労働・生活相談窓口
03-6699-9359
soudan@npoposse.jp
*筆者が代表を務めるNPO法人。訓練を受けたスタッフが法律や専門機関の「使い方」をサポートします。
022-796-3894(平日17時~21時 土日祝13時~17時 水曜日定休)
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