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福井工大福井、手堅く初戦突破 『第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会』

中川路里香フリーランスライター
第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会1回戦、室戸に快勝した福井工大福井

 第28回全国高等学校女子硬式野球選手権大会は21日、兵庫県丹波市、淡路市で大会2日目が行われ、昨秋のユース大会で優勝したクラーク記念国際(宮城)、準優勝の福井工大福井(福井)が登場、ともに2回戦へコマを進めた。

手堅い野球で福井工大福井が勝利

 福井工大福井は初回に先頭打者が四球で出塁後、一死二、三塁とし、5番・佐藤舞奈(2年)、6番・山口凛花(3年)の連続適時打で2点を先制。二回、2死二塁から4番・山本海咲(3年)の二塁適時打などで3点を追加すると、4回にも山本が1点適時打を放ち、試合を決めた。

 投げては、エースの藤田奈那(3年)が4回を無失点におさえると、5回以降は3投手の継投で室戸打線を封じ込み、完封勝利をおさめた。

◆7月21日 福井工大福井 対 室戸

  福井工大福井 230 100 0 = 6

  室  戸   000 000 0 = 0

▼バッテリー

【福井工大福井】藤田(4回)、中富(1回)、奥村(1回)、河崎(1回)ー 佐藤、千葉 

【室戸】西内 ー 嶋村

▼二塁打 福井工大福井:山口、山本

安定の投手陣とつながる打線

  初の優勝を狙う福井工大福井が、手堅く勝利し2回戦へ。昨夏は、準決勝で岐阜第一に惜しくも敗れベスト4。新チームとなってからも、ユースで準優勝、今春の選抜でベスト8と上位の戦績をおさめ続けている。昨年も背番号1をつけて大車輪の活躍を見せた藤田は、春先のケガはあったが、今夏も健在。室戸戦では「初戦の硬さがあって、変化球の制球が多少乱れた」(藤田)と言うが、「修正して次戦は有効に使えるようにしたい」と話した。
 中村薫監督曰く「もともと良くない」という打線だが、13安打と好調だった。つないで好機を広げては適時打を放って得点するという、理想的な攻撃を見せた。


次戦相手はユース決勝で敗れたクラーク記念国際

 次の相手は、ユースの決勝で敗れたクラーク記念国際(宮城)だ。ユース後の練習試合でも一度も勝てていない。主将の山口はクラーク記念国際について「とにかく打撃のいいチーム。1番から9番まで気が抜けない」とし、藤田も「強気のピッチングをしたい」と意気込んだ。強敵ではあるが、頂点を目指すには絶対に負けられない相手。山口は、「いつも悔しい思いをしているので、集大成でもあるこの大会には勝ちたい」とリベンジを誓った。

今年も力強い投球を見せてくれている、福井工大福井・藤田奈那投手
今年も力強い投球を見せてくれている、福井工大福井・藤田奈那投手

一年たってより頼もしく。福井工大福井・中野亜瑚

 昨夏、1年生ながら三塁手としてレギュラー出場を果たしていた、福井工大・中野亜湖(2年)。昨年は6番だったが新チームから中軸入り。「去年は無我夢中で、目の前のプレーをこなすのに精一杯」(中野)だったが、一年が経ち、室戸戦では要所で味方投手に声を掛けるなど、気配りする姿が見られた。成長した部分は他にも。得意の守備が試合になると、緊張から思うように動けなかったが、経験を積んだことで緊張しなくなったこと。室戸戦でも深いところからの一塁送球やライナーの捕球などノーミスだった。3番を任された打撃では、「叩きつけることを意識」し、好機で2安打と送りバントも決めるなど、勝利に貢献した。
 「ピンチのときこそしっかり守って、チャンスで1本打つこと」という今大会の自身の目標を、初戦から実行。2回戦でも目標通りのプレーをして、チームに勝利を引き寄せたい。

福井工大福井・中野亜瑚選手
福井工大福井・中野亜瑚選手

室戸、小さなエース西内聖奈が熱投136球

 身長149センチと室戸の小さなエース、西内聖奈は、最後まで諦めず腕を振った。球数は7回で136球を数えたが、最後まで球威は衰えなかった。実戦でこれほどの球数を投げたことはなかったが、「(後ろが)しっかり守ってくれると信じていたし、打たれてもみんなが声をかけてくれたので、投げ切ることができました」。 
 打ち込まれることは最初から覚悟していた。それでも「粘って投げていれば、どこかでチャンスが巡ってきて得点できる」と信じて投げ続けた。被安打13で6失点という結果だったが、「得意のカーブで打たせてとる投球ができたところもあったので実力は出せた」と振り返った。
 室戸の部員は16人。西内が入学する前年の2021年は、部員が足らず休部状態だったが、中学時代から同じチームで野球をしていた仲間4人と「室戸(高校野球部)を復活させたい」と同校進学を決意、おかげで部は復活した。2年前は13人、昨年は18人と部員数は常にギリギリだったが、この3年間は単独チームで大会に出場することができた。高校野球が終わった今、「みんなと野球ができてよかったです」と話し、後輩たちには「また明日からきつい練習が始まると思うけれど、来年の夏に後悔しないように頑張って欲しい」とメッセージを残した。

力投した室戸高校・西内聖奈投手
力投した室戸高校・西内聖奈投手

 3年生5人が引退した後の新チームにも9人以上の部員が残るが、ユースは近隣の安芸高校と合同チームで出場予定という。実力的に、単独チームでは難しくなるとの判断からだ。4年間の同校コーチを経て、昨年から監督に就任した丁野晃輔監督は、専用グランドがあるなど、練習環境は整っていると話す。全寮制なので県外から進学してきた部員もいる。「勉強も野球も頑張りたいという生徒にとっては、うちは打ってつけだと思う。来年、また新たな仲間が増え、単独チーム出場を目指したい」と話した。丁野監督の信条である「粘り強く」、最後まで諦めない新チームを作って欲しい。

(撮影は全て筆者) 

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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