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FinTech(フィンテック)とは何か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 いまさらではあるが、FinTech(フィンテック)と呼ばれる用語について考えてみたい。FinTechとは金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。情報技術を金融サービスに利用して新しいサービスを生み出す動きともされている。

 この代表例としてビットコインが挙げられている。その値上がりピッチの早さもあって、ニュースなどでも紹介されているビットコインではあるが、その位置づけがはっきりしているわけではない。法的に金銭と評価することは現時点では難しいと、日銀の「FinTech 勉強会」における議論でもなされている。この日銀での議論のなかでは次のような指摘もあった。

 「しかしながら、ブロックチェーンや分散型台帳技術を利用する分散管理型ネットワークの特性といった新しい要素は、従来のパラダイムを大きく転換し得る観点を孕んでおり近年、様々な議論が行われている。」

 確かにブロックチェーンや分散型台帳技術についてはいろいろな応用が期待できるが、それが金融そのものを根本的に変えるかどうかは不透明である。世間の注目度としては、あらたな通貨が生まれたことで、その行方と言うか価格動向のみに注目が集まっているかのように思われる。

 ビットコインがバブルであるかどうかは、弾けてみないとわからない。しかし、その値動きは17世紀のオランダでのチューリップ価格の動きを連想させるものとなっている。チューリップであれば、それが綺麗で珍しいものであるのかは視覚や聴覚などで確認できても、電子通貨には実態はなく、あくまで価格の動きでしかない。その価値を適切に把握する手段もない。オランダのチューリップもその希少性のみで価格が上昇し、買いが買いを呼ぶことになったことで、適正価格なるものがあったわけでもなさそうである。

 私自身はFinTech(フィンテック)という用語については、懐疑的というかそれが金融の未来を変えうるものといったイメージはない。そもそも金融の世界は情報技術とともに発展していたものであり、何をいまさらといった感もある。

 コンピュータが生まれ、それを真っ先に利用した業態といえるのが金融業界であった。証券取引所のシステム化の歴史、銀行や証券会社によるシステム化の歴史をみればそれが明らかであろう。金融取引と情報技術は極めて相性が良い。だからこそFinTech(フィンテック)という用語は決して新しいものとは言えないと個人的には思っている。その代表格がビットコインとあっては尚更感も強いのである。ただし、モバイル決済などについては金融決済を今まで以上に容易にさせうるものであり、それがさらに普及するであろうとは思う。しかし、これもあくまで新たな決済方式というよりも、情報技術を使っての利便性の向上にすぎないのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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