ひとり親の子どもたちのために 児童扶養手当の2人目以降の加算額を1万円にキャンペーンスタート
10月22日、「子どもを5,000円で育てられますか?貧困で苦しむひとり親の低すぎる給付を増額してください!」インターネット署名キャンペーンがスタートしました。
子どもを5,000円で育てられますか?貧困で苦しむひとり親の低すぎる給付を増額してください!
まず、たくさんの方が有志として名前を連ねてくださったことを感謝とともに報告します。
ドラマ「シングルマザーズ」で熱演した、女優の沢口靖子さんも、名前を連ねています。
当日厚生労働省の記者会見で、作家の乙武洋匡さんやジャーナリストの白川桃子さん、ファザーリンクジャパンの安藤哲也さんそしてこの問題に真摯に取り組んでいる認定特定非営利活動法人フローレンスの駒崎弘樹さん、キッズドアの渡辺由美子さんの発言を聞きながら、こんなに応援してくれる人がいる、ひとり親の子どもたちの問題に取り組もうとしている人たちがいると感じました。これまで何年も何年も、シングルマザーの当事者団体として、孤独なとりくみをしてきたわけですから。
さて、紹介されていない論点を、この日、時間がなくて伝えられなかったこととともにお伝えします。
キッズドアの渡辺由美子さんは、学習支援をしている子どもたちのお母さんにアンケートをしたところ、お子さんが1人のひとり親さんでは、ひとりあたりの就労収入は83万円だが、子ども二人の家庭では、81万円(非就労世帯を含めると45万円)、子ども3人だと33万円、子ども4人の世帯では35万円と下がっていくことを報告し、子どもが多くなればなるほど、ひとりあたりの収入が減ってしまう現実をリアルに伝えました。
その結果、進学をあきらめる、あるいは進学先のランクを2~3ランクも下げてしまう子もいるという現実があるということです。
お子さんが多いほど、労働時間を長くしなければ、食べていけないので「必然的なネグレクト状態」か、母親が「病気になる」といった言葉もありました。
必然的なネグレクト、という言葉が事実を言い当てています。
乙武洋匡さんは、東京都杉並区の学校で教員をしていた体験から、経済力の差が勉強の成績に反映してしまう現実や、サッカーができても、経済力のある子しかサッカーのクラブチームに行けない、将来が閉ざされてしまう現実を話し、どんな境遇に生まれてもチャンスが平等でなければいけないと強調されました。
白川桃子さんは、こうしたひとり親家庭の支援が不十分であることは少子化を招いてしまう、こんな状況なら産みたくないと女性たちは思う、ということで、合計特殊出生率が回復したフランスの施策では、子どもが多いほど手当額も増額されると伝えてくれました。
ファザーリングジャパンの安藤さんも社会的養護の子どもたちの支援、そして特に父子家庭も、仕事と子育ての両立が困難で、所得が低くなっている現実を伝えました。
そしてひとり親当事者の田中直子さん(仮名)は、高校生の子どもと小学生が3人いて、毎日毎日、驚くほど食べるので、ほんとうに食べさせるだけで必死である、今後子どもが中学生になれば、児童手当も減額されるので、児童扶養手当の2人目以降の加算額を増額してほしい、と話していました。自分のものは何も買わないで、子どもたちのためにお金をかけている、でもやはり大変なので、つい子どもを怒ってしまいがちだ、と悩みも話しました。
私からは、ひとり親の子どもたちが犠牲になる事件が相次いでいる、この先も何もしなければ、犠牲になる子どもが増えると話しました。
こうしてキャンペーンが始まりました。
さて、児童扶養手当とはどんな制度なのでしょうか。少し補足しておきます。
現在 児童扶養手当は父(母)と生計を同じくしない児童が育成される家庭に支給されるということになっています(1985年以降)。
ですので、1人目の児童にいくら、2人目の児童にいくら支給されるのではなく、まとめてひとり親に払われる手当です。
現在、所得が低い、年収130万円までは、満額支給の4万2000円が支給されますが、所得が上がるごとに減額され、365万円(年収)の場合、9910円が支給されることになっています。子どもが二人だと5000円の加算、3人だとさらに3000円の加算がつきます。
1961年に児童扶養手当法は成立、1962年から施行されました。母子福祉年金がその前年から施行され、死別の母子には年金が支給されるようになったため、離婚の母子家庭も同じように生活が困窮しているということで生別母子家庭にも現金給付が必要だということで発足した手当です。
発足後、1970年代には、中学卒業時までだった児童扶養手当が18歳までに延長されるなど改善し、手当額も1962年には800円で児童二人の場合は加算額が400円、3人以降の増額が200円で発足し、徐々に1人の場合の額は増額されましたが、2人目以降の加算額はなかなか増額されませんでした。
加算額は大変遅くなりながら、1973年に1人の場合6500円、2人の場合の加算は800円、3人の場合の加算400円に。その後1970年代を通じて、1人の場合の額は伸長していきますが、2人以降の加算額はなかなか上がらず、1980年には1人の場合は29300円、2人の場合の加算額は5000円、3人以降の加算額は2000円となりました。その後2人の場合の増額は35年間増額されなかったのでした。(児童扶養手当法令通達集より)
そもそも、この児童扶養手当というのは、母子福祉年金を補完するものとして、離婚などの世帯に支給されていたので、母子福祉年金と支給額は同額の時期が20年以上続いたのですが、国民年金法の改正とともに1985年に母子福祉年金と切り離され手当額も遺族基礎年金の半分以下となってしまいました。
推測ですが、加算についての考え方が確立されないまま、20数年間、児童扶養手当の2人目以降の加算額を増額せずに放置されてきた、というのが現状なのではないでしょうか。
多子になるほど、貧困率が上がります。
一般世帯で、子どもが一人の場合の貧困率は17.0%、2人の場合は13.6%ですが、3人となると19.7%、4人以上では33.5%となります。
当たり前ですが、子どもが多くなれば、貧困になりやすいのです。
複数子の加算額の増額すればすべての問題が、解消するわけではありません。
しかし、あまりにも放置され、ひどい状況である、この児童扶養手当の2人目以降の加算額を増額することを手始めに、改善していきたいと思います。
あまりにもおかしい、2人目以降5000円の手当額を1万円に。これで、子どもが1週間は食事ができる額ではないかと思います。
ひとり親家庭への理解を広げていきましょう。