【ワインの歴史】紀元前4000年頃から作られていた!先史時代の人々はどのようなワインを飲んでいたの?
ある日のことである。
遠い昔、人々がまだ狩猟採集を生業とし、自然と共に生きていた時代のことです。
森の奥深く、陽光に照らされたブドウの房が鈴なりになっていました。
そこを通りかかった者が思わず手を伸ばし、甘い果汁の滴るその実を口にしたのです。
最初はただの偶然だったかもしれないが、人々は次第にその魅力に取り憑かれ、木々を巡ってその宝石のような果実を探し求めるようになりました。
けれども、この物語の核心は、木の下に残されたブドウの行方にあります。
人々が取り残した果実は、やがて熟れ、次第に発酵という神秘的な変化を遂げていきました。
ある時、誰かがその液体を口にしたのです。
まろやかな酸味と甘みが広がり、心地よい酔いが身体を包みます。
こうして、ワインの原初の一滴が生まれたのです。
科学の光を浴びるはるか前、この液体は奇跡の贈り物とされました。
人類が定住を始め、農業が発展する紀元前1万年頃には、ブドウの栽培とワイン造りはほぼ同時に始まったと考えられています。
特に、野生のブドウが生育していたアルメニア、ジョージア、イランなどの地域では、その技術が飛躍的に発展しました。
土を掘り起こし、陶器を作り、果実を潰し、液体を蓄えます。
すべてはワインという神秘を手中に収めるためだったのです。
歴史の舞台に登場する最古のワイナリーは、アルメニア南部の「アレニ-1複合洞窟」です。
そこには紀元前4100年頃のものとされる発酵槽やブドウ房の痕跡が残されています。
これらは当時の人々がいかに精緻な技術を駆使していたかを物語る証拠です。
だが、洞窟の中にはワインだけでなく、最古の靴も発見されているというのだから、当時の人々の暮らしぶりがなんとも目に浮かぶようではないですか。
やがてワインは交易路を通じて広まり、文化と信仰の象徴となっていきました。
古代ギリシアではディオニュソスがワインの神として祭られ、ペルシャでは王たちの宴に欠かせないものとなったのです。
興味深い逸話も数多く残っています。
例えばペルシャの王ジャムシードにまつわる話です。
ある日、「毒」と書かれた瓶を飲んで自殺を図ろうとしたハーレムの女性が、それがワインだと気づき、気分が晴れました。
これを知った王は大喜びし、ワイン造りを奨励したといいます。
そして現代。私たちはワインという魔法の液体を楽しみつつ、その背後に隠された数千年の歴史と、初めてその一滴を味わった人々の驚きを想像することができます。
そう、すべてのワインボトルには、果実の実る木陰で始まった壮大な物語が詰まっているのです。