ロシア・ウクライナ戦争とイラン核交渉(4)
話をウクライナ情勢に戻そう。まず、この戦争によって、エネルギー価格が上昇した。ヨーロッパ諸国はロシアからの石油と天然ガスの輸入に依存してきた。ウクライナでの戦争が引き起こした混乱でエネルギー価格は、一時期は天井を抜けた。支持率の低迷するバイデン政権にとっては石油価格の高騰は避けたいところだったので、これがイランとの合意への圧力となるだろうとの読みもあった。核合意が再建されイランに対する経済制裁が撤廃されれば、イラン原油が国際石油市場に戻って来る。現在のイランの石油輸出は日量100万バレル程度と見られているが、中長期的には、これが倍増するだろう。またイランがタンカー備蓄などで保有しているとみられる原油が1億バレル近くある。この放出が、石油市場を沈静化させるのに寄与するだろう。それだけイラン核合意の再建交渉の成功の価値が上がっている。バイデン政権にとって、そしてヨーロッパ諸国にとってである。イランの交渉上の立場が強くなった。少なくともイラン側は、そういう理解だったようだ。
この記事は有料です。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバーをお申し込みください。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバー 2023年2月
税込275円(記事11本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。