買い物は楽しみよりもストレス?ノルウェーで広がるアンチ・ブラックフライデー
アメリカ発祥の大規模セール「ブラックフライデー」がノルウェーで大きな注目を集めている。11月の第4金曜日に実施され、各店舗の売り上げが急増し、黒字になることからブラックフライデーと呼ばれている。
北欧ノルウェーでもここ数年の間で大きなトレンドとなっているが、消費者の大量消費行動に眉をしかめる人も多い。
ノルウェーでは、この時期は家族などに何個もクリスマスプレゼントを買わないといけないため、ストレスだと感じている人も多い。クリスマスプレゼント・ショッピングは約1か月前から始まる。しかし、クリスマスが終わるまでは、商品は通常価格で販売されるのが普通だ。20~80%OFFとなるブラックフライデーは、物価の高いノルウェーでは人々にとって大きな誘惑となる。
このようなセールでは、日本とノルウェーで大きく異なるのがメディアや政治家の反応だ。
ノルウェーでは、大量消費行動に走らせるセールや広告は、人々にストレスを与え、無計画で無駄な買い物をあおり、環境問題などに悪影響を及ぼすと考えられる。他者の存在を忘れ、自分の買い物ばかりに夢中になる行為は、周囲への思いやりや優しさを忘れさせる、悲しい現象だと。特に、左派政党や団体、緑の環境党は否定的だ。
その左派陣営が権力を握る首都オスロでは、自治体が主導となって、「アンチ・ブラックフライデー」キャンペーンを行っている。これは、欧州各国で開催される。無駄な消費をやめようという「Oslo Waste Reduction Week」運動の一環だ。
オスロでは、ブラックフライデーにあたる2日間、25・26日の2日間は、各地でヴィンテージ商品の交換、図書館での無料の本屋CDの貸し出しなどのイベントが開催されている。
「ブラックフライデー」に反して、環境に優しい緑の「グリーンフライデー」
市内では、新品商品ではなく、ヴィンテージを再利用して、無償交換・販売しようというファッションセールも開催された。安い新品商品の大量購入は、貧しい国の工場労働者の支援につながらず、商品の生産過程において温室効果ガスが発生し、気候変動問題を悪化させるとされる。
とはいえ、結局のところ、市民を買い物に走らせ、店頭前に行列を作るヴィンテージ・ファッションセールは、ストレス・ショッピングと変わりないのでは、とも筆者は感じる。
ダブルモラルの“批判的”メディア
批判的であることが好きなノルウェーのメディアは、ブラックフライデーに、朝早くから行列を作り、他人と押し合いながら、がむしゃらに商品を選ぶ人たちを、「哀れな」目線で報道する。セール前に通常価格を値上げさせ、割引価格をごまかそうとする店舗にも批判的だ。
日本のような、温和なセール報道とは大きく書き方が異なる。しかし、そのような記事が掲載されている新聞をめくると、ブラックフライデーの広告が大量に掲載されているという矛盾がある。
「何もしない」ことが、人生の幸せ?
広告にまどわされずに、金曜日に「何もしない」ことを提案する政治家や団体もいる。買い物そのものが「楽しみ」よりも「ストレス」だとする傾向は、のんびりとしたライフスタイルを好むノルウェーらしいといえるのかもしれない。
Photo& Text: Asaki Abumi