セナの伝説のマシンが時空を超えて、鈴鹿を走る!〜Sound of ENGINE〜
今週末、5月23日(土)24日(日)の2日間、鈴鹿サーキットでは初開催となるヒストリックレーシングカーのイベント「SUZUKA Sound of ENGINE」が開催される。1962年の開場以来、日本で最も長い歴史を誇る鈴鹿サーキットが新たに取り組むイベントだ。
これまでも開場50周年の記念イベントや恒例のファン感謝デーでは数多くのヒストリックマシンがデモンストレーション走行を行ってきたが、今回はタイムアタック競技やレース競技を行うイベントであり、海外から数多くのマシンが空輸され、競技に参加する。
セナの名を知らしめた伝説のF1マシンが走行!
海外からのエントリーの中で最も注目したいのは、F1の代名詞とも言うべき伝説のレーシングドライバー、アイルトン・セナがF1デビューの年、1984年に走らせた「トールマン・TG184」だ。
この「トールマン・TG184」は、セナの伝記的ドキュメンタリー映画『アイルトン・セナ〜音速の彼方へ』にも登場する印象的なF1マシン。1984年、雨のF1モナコGPでセナがアラン・プロスト(マクラーレン・TAG)を猛追!プロストがルーキーのセナに抜かれそうな状況の中、天候の悪化が理由で途中で終了といういわくつきの展開となったレースが有名だ。セナにとっては弱小チームながら、初の表彰台を獲得したマシンであり、初めてプロストとの優勝争い「セナ・プロ対決」を行ったマシンだ。
1984年当時は鈴鹿でF1日本グランプリは開催されておらず(87年から)、多くの日本人は雑誌の誌面などで見たことがある程度だった。実際に走る姿を見たことがある日本人はごく僅かであり、「トールマン・TG184」が時空を超えてセナの愛する鈴鹿サーキットを走るというのはファンにとってはたまらないシチュエーションだろう。
もう2度と日本で見られないマシンがあるかもしれない!
セナが走らせた「トールマン・TG184」をはじめ、こういった80年代の伝説のF1マシンは実は海外で個人オーナーによって所有され、今もヒストリックイベントの代表格「Goodwood Festival of Speed」(イギリス)やモナコGPの前座として開催されるヒストリックレースで、現役として走っている。ヨーロッパやアメリカではこういったヒストリックレースが当たり前に開催されているので、伝説のマシンの走る姿を見るチャンスは海外では多い。
しかしながら、日本国内では個人所有の名レーシングカーも数多く存在するが、名勝負の主役となったヒストリックマシンを国内メーカーが動態保存するのはごく限られたマシンだけで、レース用車両は1年から2年の「レースを戦う」という使命を終えた後、そのほとんどがスクラップにされてしまう。維持費などコストの問題に加え、情報の流出につながるため、ワークスマシンが個人オーナーの手に渡ることは稀である。
海外ではこういう古いレーシングカー転売のマーケットができあがっており、長年に渡ってオーナーから別のオーナーへとマシンが引き継がれていくが、国内では個人オーナーが伝説のレーシングカーを所有する文化ができてきたのはごく最近のこと。日本で生まれたマシンなのに、日本では動態保存されていないマシンも実は多いのだ。今回の走行マシンでいえば、ケビン・シュワンツの名機「スズキRGV-Γ」(ペプシ・スズキ)などは海外オーナーが所有しており、このイベントのために日本に運んできたものだそう。
そういう意味では、毎年定期的に来日して走ってくれるとも限らないので、こういった往年の名レースを戦ったマシンが走る姿を日本で見るチャンスは今後おとずれない可能性もある。実は1台、1台が今もなお走るということだけでも貴重な機会。エキゾーストサウンドに酔いしれながら、ゆっくりと週末を過ごすのも良いかもしれない。
SUZUKA Sound of ENGINE で走行予定の主なマシン
・フェラーリF187 (87年 F1日本グランプリ優勝/F1)
・ベネトンB190 (90年 F1日本グランプリ優勝/F1)
・トールマンTG184 (84年アイルトン・セナ/F1)
・ベネトンB193A (93年ミハエル・シューマッハ/F1)
・ホンダRA301 (68年ホンダ第1期F1活動/F1)
・マツダ787B (91年JSPC仕様/Gr.C)
・日産R91CP (91年デイトナ24時間優勝/IMSA)
・スズキRGV-Γ (89年WGP 日本グランプリ優勝/GP500)
・スズキRGV-Γ (94年WGP 日本グランプリ優勝/GP500)
・カジバV589 (89年ランディ・マモラ/GP500)
・ホンダNS500(84年フレディ・スペンサー/GP500)など