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「卒業式で校歌斉唱禁止」 東京都教委が異例の通知 都内公立校で異なる対応に【追記あり】

楊井人文弁護士
東京都の小池百合子知事。教育委員会は都庁に置かれ、委員は知事が任命している(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 東京都教育委員会は、今春の卒業式で児童・生徒や教職員はマスクを着用しないことを基本としつつ、校歌斉唱はマスクを着用しても実施しないとの方針を決め、都立高校などに通知していたことがわかった。

 文部科学省は2月10日、卒業式および4月1日以降、3年近く続けてきた学校内マスク着用義務を解除する方針を示し、校歌斉唱の際は「マスク着用など一定の感染症対策」を講じた上で実施するよう通知している。

 他の自治体の教育委員会では、校歌斉唱を実施する方針を示しているところが大半だが、文科省の担当課は「各地域や学校の実情に応じて、卒業式の適切な実施に努めていただく」との考えを示すにとどまり、都の方針を容認するとみられる。【文末に追記あり】

 都教委の事務局が2月15日、国歌・校歌斉唱や合唱等を実施しない旨を同日までに決定し、都立学校に通知したことを筆者の取材に認めた。

 都教委は、都立の小・中・高校、特別支援学校あわせて255校を所管しており、これらの学校が対象となる。

 一方、都内の市や特別区に設置されている教育委員会は、都教委とは独立しているため、校歌斉唱等を実施すると方針を決めたところもある。

 ある都内の教育委員会は、筆者の取材に対し、都教委から校歌斉唱等を実施しないとの方針を示した都立校向け通知が届いたものの、それに従う必要はないとの認識を示した。

 また、文科省の通知では、校歌斉唱等で「マスク着用」を必須と明記しているわけではないことから、距離をとれる場合はマスクを外して校歌斉唱等を行うことも検討している教育委員会もあった。

 同じ東京都内の公立学校でありながら、都立校か市立・区立校の違いで、校歌斉唱の実施するかの判断が分かれる事態となりそうだ。

 政府は先週、3月13日からマスク着用を個人の判断に委ねるとの方針を決定。ただし、学校での児童生徒等への事実上の着用義務は、3月いっぱい続けることとし、卒業式だけ着用しないことを認めることとなった。

 これを受け、文科省は各教育委員会の卒業式におけるマスクの取り扱いについて通知を出し、各地の教育委員会がそれぞれの方針を決めて通知を出している(愛知県教育委員会の例)。文科省は卒業式で児童生徒らはマスクなしを基本とし、国歌・校歌斉唱の際は着用を求める、との方針を示していた。

 筆者の調べでは、卒業式における校歌斉唱等の禁止を通知した教育委員会は、東京都以外に、今のところ確認されていない。

経団連は3月13日に着用ルール全面的削除へ 子供の義務解除は後回し

 一方、経団連は2月13日、「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」「製造事業場における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に記されていた、従業員にマスク着用の徹底を求めてきた記述を3月13日をもって全面的に削除する方針を発表した

 学校内での事実上の着用義務は、卒業式を除いて、3月末まで継続するため、緩和のタイミングにずれが生じることとなる。

経団連の「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」のうち3月13日に削除される記述の一部(経団連HP)より
経団連の「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」のうち3月13日に削除される記述の一部(経団連HP)より

 政府が2月10日示したマスク着用ルールの見直し方針は、「段階的緩和」の形にこだわったためか、大変わかりにくいものとなった。

 この方針を「一般社会」「業界ガイドライン」「学校」に分けて整理すると、下の図のようになる。

 ただ、大半の業種でガイドラインの改定時期や内容について検討中とみられ、多数の利用者がいる映画館、空港などを含め、いつどのように緩和するのかについてはまだ決まっていない。【文末に追記あり】

筆者作成
筆者作成

【追記】

小池知事がコメント

 都教委が卒業式に国歌・校歌斉唱をしないよう通知したことについて、小池知事は2月17日の記者会見で、東京iCDCなどの専門家からアドバイスをもらったとした上で、「今回(マスクを)外すにしても、発声については控えていきましょうという判断の表れだと理解しております」などと述べ、都教委の方針を容認した。朝日新聞記者の質問に答えた。

 ちなみに、朝日新聞社が主催する合唱コンクールは昨年秋、東京都をはじめ各地で開催され、児童生徒らの合唱を実施。都内のコンクールでは、都立府中西高校が出場し、マスクなしで合唱を行っていた(朝日新聞2022年9月4日記事)。

 問題の都教委の通知については、毎日新聞朝日新聞も報じた。(2023/2/18 14:00追記)

航空機内・空港内の着用ルールは3月13日で撤廃

 定期航空協会は、3月13日より航空機内および空港内における利用客、航空会社従業員のマスク着用を個人の判断に委ねると発表した。(2023/2/21 19:30)

弁護士

慶應義塾大学卒業後、産経新聞記者を経て、2008年、弁護士登録。2012年より誤報検証サイトGoHoo運営(2019年解散)。2017年からファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)発起人、事務局長兼理事を約6年務めた。2018年『ファクトチェックとは何か』出版(共著、尾崎行雄記念財団ブックオブイヤー受賞)。2022年、衆議院憲法審査会に参考人として出席。2023年、Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット賞受賞。現在、ニュースレター「楊井人文のニュースの読み方」配信中。ベリーベスト法律事務所弁護士、日本公共利益研究所主任研究員。

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