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ウクライナ軍、英国政府提供のストーマー装甲車で久しぶりにロシア軍の偵察ドローンを撃破

佐藤仁学術研究員・著述家
ストーマ―装甲車でロシア軍の偵察ドローンを撃破(ウクライナ軍提供)

2023年3月にウクライナ軍は英国政府が提供したストーマー装甲車でロシア軍の監視・偵察ドローンを迎撃して破壊していた。その様子を映した動画も公開している。ストーマー装甲車でロシア軍の偵察ドローンを迎撃するのは久しぶりだった。

英国政府はロシア軍がウクライナに一方的に侵攻した2022年2月からウクライナ軍に武器供与をしてきている。2022年7月に初めてストーマー装甲車6機がウクライナに供与されてからウクライナ軍は主にロシア軍のミサイルやヘリコプターなどの迎撃に使用してきた。イラン製軍事ドローンで奇襲してきた時の迎撃にも使用されていた。2022年8月には英国政府が提供したストーマー装甲車でロシア軍の偵察ドローン「Orlan-10」を破壊していたが偵察ドローンよりもミサイルなどの攻撃に使用することが多い。

2022年11月にイギリスのスナク首相が初めてウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と面会した。イギリス政府はウクライナに対して5000万ポンド(約83億円)の軍事支援を供与することを発表した。当時の英国政府のウクライナへの支援パッケージには、対空砲125門、ロシア軍が使用しているイラン製軍事ドローンを迎撃するためのレーダー、ドローン迎撃システムが含まれていた。ほかにウクライナ軍へのトレーニング支援、軍医や技術者をウクライナに派遣。2022年11月上旬にはベン・ウォレス英国防大臣が新しい対空ミサイル1000基を提供することを発表していた。

スナク首相は声明文の中で「ウクライナ軍は地上の戦場ではロシア軍を後退させることに成功しました。しかし民間人は空からのドローンやミサイルの無残な爆撃に晒されています。そのような空からのロシア軍の攻撃に備えてイギリス政府は、対空砲、レーダー、ドローン迎撃システムなど新しい対空防衛システムを提供します。また冬の寒さに備えた人道的な支援を行います」と語っていた。

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。ストーマー装甲車は明らかにハードキルである。

▼ストーマー装甲車でロシア軍の偵察ドローンを撃破(2023年3月)

ストーマー装甲車でロシア軍の偵察ドローンを迎撃するのは久しぶりだった。

偵察ドローン「Orlan-10」や小型の民生品ドローンは、ジャミングでも機能停止できるが、最近の偵察ドローンには手榴弾などの武器や弾薬が搭載されている可能性があるので、機能停止するだけでは上空からドローンが落下して地上で爆発する危険もある。そのため上空で撃破しておいた方が良い。また敵軍の監視・偵察ドローンに自軍の居場所を察知されると、その場所をめがけてミサイルが大量に発射されるので偵察ドローンを検知したらすぐに破壊したり機能停止したりする必要がある。

ストーマ―装甲車のような大型システムで監視ドローンを攻撃して爆破させるのはコストもかかるし、大げさかと思うかもしれない。しかし監視ドローンこそ検知したらすぐに破壊しておく必要がある。監視ドローンは小型でも大型でも「上空の目」として戦場では敵の動向をさぐるのに最適である。監視ドローンで敵を検知したらすぐに敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んでくる。監視ドローンとミサイルはセットで、上空の監視ドローンは敵からの襲撃の兆候である。また部品を回収されて再利用されないためにも徹底的に破壊することができる"ハードキル"の方が効果がある。

▼英国政府が提供したストーマ―装甲車

▼ストーマ―装甲車でロシア軍の偵察ドローンを撃破(2022年8月)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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