出口を意識した氷見野日銀副総裁の講演内容
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氷見野良三日銀副総裁は6日に大分県で講演し、その内容が日銀のサイトにアップされた。これはなぜか日銀の「公表予定」には記載がなかった。このケースは過去にもあり、むしろ記載なき講演の方が金融政策の運営そのものにかかわることが多かったようにも思われる。
「最近の金融経済情勢と金融政策運営」
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231206a1.pdf
個人的にも氷見野良三日銀副総裁の動向が気になっていた。6日の講演のなかでは特に物価に関する発言が多くなっていたが、注目したいのは「日本銀行の金融政策運営」の部分となる。
「粘り強い緩和の継続」を最初に指摘していたが、そのあとに「将来出口を迎えた場合に何が起こるのか」との発言が続いた。
「では、仮にいよいよ賃金と物価の好循環が強まり、「物価安定の目標」も持続的・安定的に達成できる、と見通せるようになったら、何が起こるのでしょうか。」
「その際に生じるのは、金融政策の変更で通常想定されるような消費や投資への影響だけなのか。徹底した金融緩和をきわめて長期間続けてきただけに、国民生活や企業経営、金融機関に追加的なストレスをかけてしまうのではないか」
そのストレスが意識されて日銀が慎重になっていたとの見方もできなくもないが、むしろ何かしらの理由で金融政策の修正が大きく遅れた結果、そのストレスの度合いも大きくなることが予想されてしまうことで、さあどうしようとなっているのではなかろうか。
「本日は、一つの視点として、過去、金利のある世界から金利のない世界に移る過程で各主体の金利収支に何が起きたかを見てみたいと思います。そもそも昔のような金利の水準に戻るとは限らないわけですし、また、逆の過程で逆のことが起こるとももちろん限りませんが、参考にはなるのではないかと思います。」
確かに参考になるかもしれないが、金利のある世界を知っているからといってその経験を生かせるのかは大いに疑問である。たとえば長期金利の形成にしても、当時と現在では国債の発行量や残高、財務省の国債管理政策も進んでおり、市場も様変わりしているなど、当時の経験が生かされるかどうかは疑問も残る。
それでもこういったシミュレーションは必要なのかもしれない。
この氷見野副総裁の講演内容は今後の日銀の金融政策の動向を読み取る上でも重要なものになると私はみている。そのなかで現在の物価に関しての認識をあきらかにするとともに、「出口」に関する発言があったことで、日銀が出口を準備しはじめているということもあらためて認識できる。
マイナス金利の解除は来年に入ってから、特に4月との見方も多い。ただし、12月の決定会合でも何かしらの動きがあってもおかしくはないのかもしれない。