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英衛星放送BスカイBが個人に合わせた広告「アドスマート」を本格展開へ

小林恭子ジャーナリスト
英放送局による「アドスマート」を紹介するウェブサイト

英国の衛星放送局BスカイBが、今月中旬から、視聴者一人ひとりの好みに合わせたコマーシャルを放送する、「アドスマート」(adSmart)というサービスを本格的に始めた。

これまでに約半年ほど、試験的に提供してきた(そのときの話をこちらに書いている)。

BスカイBは英国の有料テレビ放送の最大手で、1000万戸を超える契約者を持つ。利用者は専用のセットトップボックスを買い、毎月の契約料を支払って、「スカイテレビ」の番組(スカイ・ワン、スカイ・アトランティック、スカイ・アーツなどのチャンネルがある)を視聴する。

アドスマートはこんな風な仕組みだ。番組を録画、停止、巻き戻しができるセットトップボックス「スカイ+(プラス)」にいくつもの広告が保存されている。番組の合間のコマーシャルの時間に、視聴者の年齢、収入、郵便番号(住んでいる場所)などの情報を元にして、最適なコマーシャルが流れるという。

各家庭の視聴者のプロフィールは有料テレビの契約申し込みで分かった個人情報や調査会社エキスペリアンの情報を元にして作成される。

これまでに、大手銀行のRBS、スーパーマーケットのテスコ、アメリカン航空、アウディなど40の広告主が参加している。

BスカイBが狙うのは、地元に密着したビジネスを提供する企業だ。この点からは、地方紙やテレビの地方局との競争が発生する可能性がある。

BスカイBの幹部によると、「テレビ広告の対象が広範すぎると思っている広告主や費用の面でテレビ広告にはとても手を出せないと思っている地元企業」を対象としている。

通常の広告料金より低い設定になっているのかどうかは不明だ。逆に、ターゲットを絞ったコマーシャルを出せるので、高くなっている可能性もあるだろう。

なお、このサービスに参加したくない視聴者はセットトップボックスの設定で「参加しない」という選択をすることもできる。

ネット上では、個々の利用者についての個人情報が取得され、これを元に様々なサービスが発生している。テレビもそのような道を進むことになるのだろうか?ネットでは普通に行われていることが、リアルの世界を変えてゆくーアドスマートはそんな動きの1つのようにも見える。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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