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故郷のリングに上がるWBOアジアパシフィックミニマム級王者

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 7月6日に、WBOアジアパシフィックミニマム級タイトルの初防衛戦を控える重岡優大(25)。日本ミニマム級チャンピオンの実弟、銀次朗と共に故郷、熊本県立総合体育館のリングに上がる。

 弟がセミファイナル、兄、優大がメインイベントを務める。優大の相手は、フィリピン人のクリス・ガノーサ。OPBF東洋太平洋で10位にランクされる。

 東京オリンピックに出場してからプロ入りする青写真を描いていた優大だが、ライトフライ級が五輪から外されたため、大学を4年で中退して世界王座を目指すことに進路を変更した。

 一足早くプロ入りした銀次朗の返上により、空位となったWBOアジアパシフィックミニマム級タイトルを獲得したのは昨年11月12日。小浦翼に判定勝ちしたものの、自身は課題を感じた。

 優大は言う。

 「小浦がどうのこうのと言うよりも、相手陣営の声ばかりが耳に入ってしまって、気になって仕方なかったんです。『ホールド!』とか『効いているぞ!!』とか。『うるせえなぁ』と思ってしまって、集中力が削がれていました。逆に自分のコーナーの声はほとんど聞こえませんでした。対応出来なかったのは、自分の力不足です。

 小浦戦を終えて、色々と反省しました。場の空気に呑まれてしまった点がマズかったですね。ボクシングを楽しむ事が肝心です。今回は地元の仲間が沢山応援に来てくれますから、いつも以上に緊張するかもしれません。また、相手が予想以上にタフかもしれない。でも、どんな状況になっても、楽しみたいです」

撮影:筆者
撮影:筆者

 優大を指導する町田主計(ちから)トレーナーも語る。

 「およそ60ラウンドのスパーリングをこなしました。クリーンヒットに拘らずに、強弱をつけて相手の体にパンチをヒットしていくことをテーマにしています。左右のボディーでダメージを与え、KOさせますよ。

 このところ、優大は精神的な余裕が生まれました。僕だけにではなく、ジムメイトにも常に笑顔を見せるくらいの調子の良さと、ゆとりがあります。以前はもっとピリピリしていたんですがね。しっかり会話も交えて練習してきました。日々のトレーニングを乗り越えたからこその"楽しみ"を見出したのでしょう。トレーナーとしては嬉しいことです。小浦戦以降、僕の言葉を聞いてからの受け答えも、肩の力が抜けた感があります」

 優大は結んだ。

 「町田さんに言われたことを体に染み込ませて、試合で出すことも勿論大切ですが、それプラス、一瞬一瞬の閃きを大事にして戦おうと考えています。練習でやったことだけでなく、その場でのリアクションがあるじゃないですか。強い選手は、積み重ねたこと以上の何かをリングで発揮しますよね。そういう自分を見せていきたいです」

 7月6日、重岡兄弟に注目だ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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