Yahoo!ニュース

日本海オセアンリーグ開幕シリーズ、石川ミリオンスターズにハンカチ王子・斎藤佑樹がやってきた!

土井麻由実フリーアナウンサー、フリーライター
金沢の地にやってきた斎藤佑樹氏

■石川ミリオンスターズのホーム開幕戦、ゲストは斎藤佑樹氏

 新生独立リーグの日本海オセアンリーグが開幕した。4月2日は滋賀GOブラックス、3日は福井ネクサスエレファンツ、9日は石川ミリオンスターズ、10日は富山GRNサンダーバーズがそれぞれの本拠地で、独自の趣向を凝らして開幕戦を開催した。

 石川球団がゲストに招待したのは斎藤佑樹氏。早稲田実業高校時代、「ハンカチ王子」の愛称で一世を風靡し、早稲田大学を経て北海道日本ハムファイターズに入団。昨季限りで引退した。

始球式
始球式

 金沢市民野球場のマウンドに、今季リニューアルされた石川のプロモーションカーに乗って登場し、“人生初”という始球式を行った斎藤氏。ふんわりとした高めのボールで空振りを奪うと、スタンドからは大きな拍手が送られた。

 「なんか変な緊張をしました。なかなかこういうチャンスはないので、ありがたい機会です」と笑顔でマウンドを降りたあとは石川対富山のゲームを観戦し、抽選会やサイン会なども行った。

プロモーションカーに乗って登場
プロモーションカーに乗って登場

■石川ミリオンスターズと北海道日本ハムファイターズの深い縁

 金沢の地には「思い出もゆかりも全然ない」とはいうが、「ファイターズに一緒にいた選手とかスタッフの方がこのミリオンスターズから来た選手が多かったので、どんなチームなんだろうと来てみたかったという思いはあります」と明かす。

 たしかに両球団は縁が深い。ファイターズの木田優夫ファーム監督は2013年、クローザーとして石川の優勝に大きく貢献し、独立リーグ日本一の胴上げ投手になっている。翌年もGM兼任投手として活躍し、友人の明石家さんま氏を招いてBCリーグ最多入場者数となる1万5877人を集めるなど観客動員にも寄与した。

 多田野数人ファーム投手コーチは15年から17年まで投手コーチ兼任選手として自身もプレーしながら、後輩たちを熱心に指導した。

 武田勝1軍投手コーチは17年に総合コーチ、ヴァイスプレジデントとして、18年から19年には監督として指導にあたり、選手たちに非常に慕われていた。また、地元の放送局に番組も持ち、石川県でも人気を博した。

 さらに打撃投手の上條優太氏は12年から16年まで、1軍マネージャーの枳殻涼介氏は13年から14年まで、それぞれ選手として活躍した。

 石川だけでなく、富山から海老原一佳選手、新潟アルビレックスBCから長谷川凌汰投手、樋口龍之介選手、群馬ダイヤモンドペガサスから速水隆成選手らがルートインBCリーグからドラフト指名され入団しているように、ファイターズと独立リーグの結びつきも強い。

 この日、実際に独立リーガーのプレーを目の当たりにした斎藤氏は「今日見て思いましたけど、すごくレベルの高い選手が多いですし、ほんとに技術的というか体力的にもNPBで活躍できる選手がたくさんいるんだろうなというイメージを持ってます」と、その泥臭く戦う姿に感銘を受けていた。

サイン会での斎藤佑樹氏(撮影は筆者)
サイン会での斎藤佑樹氏(撮影は筆者)

■石川ミリオンスターズが今季初勝利

 さて、ゲームは6―1で石川が初勝利した。後藤光尊選手兼任監督にとって、指揮官として初めての勝利だ。

 「先発の石本が安心できる内容のピッチングをしてくれて、打線もなんとか繋がってくれて、いい形で地元で1勝できた。やはり地元のファンの力は大きい。選手たちも躍動感をもって試合に臨んでくれた。今日だけに限らず、今後も継続してしっかりと地元のファンの方に応援していただけるように一生懸命やっていきたい」。

 そう言って後藤監督も手応えを深めていた。

 石本光紀投手から「監督、どうぞ」と手渡されたウィニングボールには「こんな経験も初めて。嬉しいな。大事にする」と喜び、「石本にサインでももらっておこうかな」と茶目っ気たっぷりに相好を崩した。

初勝利を挙げた後藤光尊監督(撮影は筆者)
初勝利を挙げた後藤光尊監督(撮影は筆者)

■先発・石本光紀投手は斎藤佑樹氏のエールに感激

 わずか2安打、1失点で完投勝利した石本投手にとっても初白星だ。テンポよくストライクを先行させ、ときおりカーブを織り交ぜるなど緩急も使いながら9回を投げきった。

 前日、後藤監督の前で「完封宣言」をしていた。「ホーム開幕で、たくさんの声援にいい形で応えられるのは完封勝利」と目標に掲げていたのだ。惜しくも届かなかったが、十分すぎる快投だった。

 「最少失点で乗りきれるように丁寧に投げた。自分の持ち味であるゾーンで勝負をするというピッチングができた」と満足そうに振り返った石本投手は、奪った9つの三振について「狙ってはなかったけど、取れる場面で取れればいいかなっていう感じで丁寧に投げた」と、何度も「丁寧」という言葉を繰り返した。

リーグ最初の完投勝利
リーグ最初の完投勝利

 徳島県の出身で海部高校、日本福祉大学、西濃運輸を経て石川に入団した。安定の社会人野球から「一度きりの人生なので、後悔するくらいなら勝負したい。チャレンジ精神をもって選んだ」と独立リーグの世界に飛び込んだ。もちろんNPB入りという夢を叶えるためだ。

 「自分の夢を追いかけて、後悔しないような選択をして、自分の道に一歩でも近づくために。プロ野球選手に夢をもらった側だったので、次は子どもたちに夢を与えられる選手になる」。

 甘えを捨て、厳しい世界で自身を追い込むべく奮闘している。

チームの柱として負けない投球
チームの柱として負けない投球

 あらためてこの日、その思いを強くしたのは、始球式で斎藤氏に会えたからだ。甲子園での田中将大選手との投げ合いをテレビで観た16年前の夏、小学2年の石本少年はすでに野球を始めていた。子どもながらに「あの暑いマウンドでハンカチで汗を拭う姿とか、引き分け再試合のあとに完投する精神力の強さみたいなのは、すごい憧れ」と鮮烈な印象を受けた。

 登板直前、「すごく感動した思い出の、その人に会えた」と胸が高鳴った。そして始球式を終えた斎藤氏に「ありがとうございました」と自ら声をかけると、「頑張ってね」とエールを送られ、「嬉しかった」とさらに気合いが入った。「目の前でいいピッチングができてよかった」と、勝利の喜びが倍増した。

 「先発の柱として負けないことを、1年間通じて頑張りたい」との目標を掲げ、夢に向かってひた走る。

ホーム最初のヒーロー
ホーム最初のヒーロー

■もう一人のヒーローは2年目・植幸輔捕手

 石本投手とともに「ヒーローインタビューに呼んでほしかった」と後藤監督が讃えるのが、植幸輔捕手だ。

 「先制タイムリーもしっかり打ってくれたし、石本についてもしっかりといいリードをしてくれた。植もヒーローに値する」。

 若き女房役に、後藤監督も目を細めた。

 その場面は二回だ。2死二、三塁で打席に入った植捕手は、ストレートをしっかり引っ張って2人のランナーをホームに迎え入れた。「ここで打ったら試合の流れが変わるなと思ったんで、ランナーを還すように意識した」という、この先制2点タイムリーが決勝打となった。

 さらに五回にも無死満塁から内野ゴロで打点を挙げ、4打数2安打3打点と大活躍だった。

打撃でも投手を助ける
打撃でも投手を助ける

 もちろん守備でも、先発投手を1失点完投勝利に導いたのだから及第点だ。石本投手も「一人一人丁寧に投げていこうってコミュニケーションはしっかりとれてたんで、いいリズムで投げられたかなと思う。年下なんで、ちょっとかわいらしい弟じゃないけど、よくしゃべったりするんで、コミュニケーションはとれている」と信頼してリードを任せている。

 呼応するように植捕手も「どういう攻め方をするかしっかり話し合って、意思疎通をしっかりして取り組んでいる」と言い、この日も「しっかりテンポよく試合を進めていけるようにと意識してやっていた」と振り返る。

 テンポをよくするために捕ったボールをすぐ返すこと、それでいて単調にならないよう間を取ることなど、常に意識しているという。

 この日はストレートより30キロほど遅いカーブを効果的に配したのも奏功した。

強肩強打の植幸輔
強肩強打の植幸輔

 ここまで全4試合でスタメンマスクを任され、ゲームセットまで出続けている。「期待に応えられるように、バッティングでももっとしっかり魅せていけるように頑張りたい」と鼻息も荒い植捕手は、「(ウリは)肩の強さです」と胸を張る。

 「1年でも早くNPBに行けるように」と高野山高校から石川に入団した188cmの大型捕手だ。昨年は「体の疲れとかもあって、思うように結果をうまく出すことができなかった」と、実現させることができなかった。

 高校とは違い、野球漬けの毎日だ。しかもシーズンは長いし、移動などの肉体的負担は大きい。高卒1年目には体力的に相当きつかっただろう。「今年はしっかり体重も増やして、体重を維持しながらシーズンを通して活躍できるように頑張りたい」と、ベスト体重の94キロをキープしようと腐心している。

 「今年NPB入りできるように頑張ります!」

 瞳をキラキラ輝かせて、そう誓った。

若き正捕手
若き正捕手

■石川は勝ち点5でリーグ2位

 翌10日も富山に連勝し、これで4試合消化して2勝1敗1分けで勝ち点5、リーグ2位につけた。(*勝ち点方式⇒勝ち2点、引き分け1点、負け0点)

 「まだまだ力を発揮できてない選手もたくさんいるから、そういう選手の状態を一日でも早く上げて、もっともっといいゲームをしていけるようにやっていきたい。戦力を分析しながら週末の2試合にしっかりと合わせて調整して、ベストの状態でゲームに入っていけるようにやっていく。最終的には一番勝ち点の多いチームになれるように。一気には増えないから、2ずつ増やしていきたい」。

 初の監督業に意欲が漲る後藤監督。“後藤選手”については今後、お伝えしよう。

石川ミリオンスターズのNEWプロモーションカー(撮影は筆者)
石川ミリオンスターズのNEWプロモーションカー(撮影は筆者)

(表記のない写真の提供は日本海オセアンリーグ)

フリーアナウンサー、フリーライター

CS放送「GAORA」「スカイA」の阪神タイガース野球中継番組「Tigersーai」で、ベンチリポーターとして携わったゲームは1000試合近く。2005年の阪神優勝時にはビールかけインタビューも!イベントやパーティーでのプロ野球選手、OBとのトークショーは数100本。サンケイスポーツで阪神タイガース関連のコラム「SMILE♡TIGERS」を連載中。かつては阪神タイガースの公式ホームページや公式携帯サイト、阪神電鉄の機関紙でも執筆。マイクでペンで、硬軟織り交ぜた熱い熱い情報を伝えています!!

土井麻由実の最近の記事