国が守るべき、先住民族の日を侮辱したノルウェー与党の発言が波紋を広げる。なぜサーミ議会の廃止?
2月6日はスカンジナヴィア諸島北部に居住する先住民族サーミ人のための「サーミの日」として、ノルウェー全土で祝典が催された。その一方で、ノルウェーの現政権を担う右翼ポピュリスト政党の進歩党の国会議員が、この日を侮辱するかと思われるような発言をし、物議を醸している。
事の発端は、進歩党で国会議員であるウルフ・レイルスタイン氏が、ソーシャルメディアのツイッターに投稿した一言。
この投稿はすぐに注目を浴び、サーミの日にふさわしい発言ではないとして非難を浴び、国営放送局などの現地メディアでも大きく報道された。
サーミ議会「これはいじめだ」
これに対して、サーミ議会の代表ヨーン・アーレ・ガスキ氏は、国営放送局に対し、「これはいじめであり、精神的な嫌がらせである」と抗議。保守党と進歩党という保守派が2013年から政権を担って以来、言語や文化への補助金が大幅にカットされている中、国会議員からこのような発言がでることは危険であるとした。
長年国家の支配に置かれていたことから、各国ではサーミ人の権利の擁護に積極的だ。ノルウェーでも、強制的同化を試みようとした歴史を反省し、国営放送局ではサーミ語でのニュース番組の枠を設け、サーミ議会やサーミ法が独自に存在している。
ソールバルグ首相(保守党)は、暴走しがちな進歩党をコントロールできていないと、他政党やメディアから非難されることもある。
以前から、サーミ議会の廃止を求めていた進歩党
減税を重視し、メディアをはじめとする各機関への補助金廃止を求める傾向にある進歩党は、移民や難民政策にも最も厳しい政党だ。反発が多いことから国会では採用されていないが、進歩党の政策には、「サーミ議会の廃止」が以前から明記されている。誤った支配の歴史を反省し、サーミ文化を守ろうとするノルウェー国家の方針とは対照的だ。
進歩青年党(FpU)の代表アトレ・シモンセン氏は、党の「サーミ議会の廃止」を求める理由について、「大きな枠組み」で理解してほしいと過去の取材で語っていた。
「進歩党の政策は、減税や国家機関における支配の制限を軸としています。つまり、国家における出費を減らすべきという考えです。我々もサーミ文化の保持は大事だと思っています。しかし、1989年に廃止されたサーミ機関を復活させるなど、巨額の補助金以外での、よりより支援方法があるだろうと考えています」。
「中学校の社会科の授業は落第しないように」
人権の保護において、進歩党と対立する考えを持つのは緑の環境党だ(MDG)。同党の政治家であるアンネシュ・シール・ダニエルセン氏は、サーミの日を「ナショナルデーだと知らなかった」という進歩党議員の投稿を冷やかし、自身のツイッターやフェイスブックで以下のように述べ、周囲から共感を呼んでいる。
「子どもたち、中学校の社会科の授業で落第はしないように。人生の最終地点は、国会与党かもしれないからね」
Text:Asaki Abumi