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黒潮の影響か 宮城県沖で捕獲された“悪魔のサメ”は熱帯夜の使者の可能性

小杉浩史気象予報士 / ウェザーマップ所属
仙台うみの杜水族館で展示中のミツクリザメの冷凍標本(5月5日 筆者撮影)

晴天に恵まれたゴールデンウィーク、仙台市宮城野区にある仙台うみの杜水族館に行ってまいりました。

多くの家族連れで大賑わいの仙台うみの杜水族館(5月5日 筆者撮影)
多くの家族連れで大賑わいの仙台うみの杜水族館(5月5日 筆者撮影)

大きな水槽の中でゆったり泳ぐ魚たちの姿に癒されましたが、私の目的はそれではありません。期間限定で展示されているミツクリザメです。(タイトル写真)

なかなかグロテスクな見た目をしているこのミツクリザメは、その見た目から英語ではGoblin shark=悪魔のサメと呼ばれているそうで、ちょうど1週間前に宮城県沖で捕獲されたものです。水揚げ時には既に死亡していたとのことですが宮城県沖での水揚げが非常に珍しいということであす6日(月)まで水族館に展示されています。

うみの杜水族館の方に話を聞いたところ、このミツクリザメは比較的暖かい海域の深海に生息するサメで、これまでは茨城県沖が北限とされていました。今回の捕獲はその北限の記録更新の可能性が非常に高くなっています。

近年はこうして暖かな水域に住む魚たちが宮城県沖でとれることが多くなっています。原因には地球温暖化があると思われますが、ミツクリザメは深海に生息するサメですので、海面表層だけではなく海の深い所まで暖かな海水が流れ込んできていると推測されます。その大きな要因として考えられるのが、もう丸一年以上続いている黒潮続流の異常とも言えるほどの蛇行です。

2024年4月下旬の海流 赤い所が黒潮で三陸沖にまで北上している様子が分かる(気象庁HPより)
2024年4月下旬の海流 赤い所が黒潮で三陸沖にまで北上している様子が分かる(気象庁HPより)

昨年も記事に書きましたが、本来黒潮は本州の太平洋南岸を東へと流れ、関東沖からはそのままほぼ真東に流れるのが通常です。

宮城県の連日の熱帯夜 原因は黒潮にアリ?

ところが2022年末頃からは関東沖から三陸沖にまで大きく蛇行し、暖かな海水が宮城県沖にまで流れ込んできています。今回のミツクリザメもこの暖流にのって宮城県沖にまでたどり着いたのかもしれません。

水深400mの海水温 黒潮の流れに沿って海深い所にまで暖かな海水が北上している(気象庁HPより)
水深400mの海水温 黒潮の流れに沿って海深い所にまで暖かな海水が北上している(気象庁HPより)

そしてこうして暖かな海水が宮城県沖にまで流れ込むことで、陸地においては気温の高い状態が維持されやすくなります。特に沿岸部で夜間の気温が下がりにくくなる傾向があり、昨年宮城県の沿岸部に位置する石巻では最低気温が25度を下回らなかった日数は26日に達し、それまでの1位の記録の5倍以上という異常な数字になりました。

石巻の最低気温25度以上の日数 2023年だけ突出して多くなっている(気象庁データをもとに筆者作成)
石巻の最低気温25度以上の日数 2023年だけ突出して多くなっている(気象庁データをもとに筆者作成)

ミツクリザメが北上してくるくらい、まだこの黒潮続流の異常な蛇行は続いています。今年の夏も、宮城県において熱帯夜が続出する可能性がありますので体調管理などにはご注意ください。

気象予報士 / ウェザーマップ所属

東京都出身。大学卒業後、会社員やフリーターなどを経て、2012年に気象予報士を取得。2015年からミヤギテレビにて気象キャスターとして出演中。趣味はバイクに乗ること、目標は「宮城の天気と言えばこの人!」と言われること。南東北の北東から、天気の怖さと面白さをお伝えします。

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