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第2回新潟国際アニメーション映画祭 長編部門の話

前田久アニメライター
著者撮影。

今月15日から20日にかけて開催中の第2回新潟国際アニメーション映画祭にプレス枠で参加してきた。全体の所感については稿をあらためて書きたいところだが、とりいそぎ長編部門(コンペティション)について。

私が拝見したのは下記の5本。

『アザー・シェイプ』

『深海からの奇妙な魚』

『マーズ・エクスプレス』

『マントラ・ウォーリアー ~8つの月の伝説~』

『スルタナの夢』

いずれも見応えがあり、それぞれ異なる意味で考えさせられる作品だった。「アニメーションのスタイルとテーマの関連性についてどこまで意識的であるべきか」「プライベートなテーマから始めた創作を、どのようにすれば社会的なものへと開くことができるのか」「ハリウッド映画や日本の商業アニメのようなグローバルに支持されるエンターテインメントのフォーマットと、自国のローカルな文化の枠組みをどう適合させるか」などなど。

上記の5本だと私のイチオシは『マーズ・エクスプレス』。サイバネティクス技術が現在よりもはるかに進展し、人間と機械の境がゆらいでいる近未来の世界を舞台に、女性の私立探偵とその相棒である死後にロボット化して復活した男性のコンビが少女の失踪事件を追う。やがて事件の真相が意外な結末に……。

フランスのBD的な世界をアニメにした作品との触れ込みだったが、日本のアニメにどっぷり浸かった目からすると、これは『アミテージ・ザ・サード』や『イノセンス』といった作品に近似の表現に感じられて、ようするに「これ、私の好きなやつ!」である。めちゃくちゃ堪能した。

https://niigata-iaff.net/programs/mars-express/

(以下、ちょっとネタバレ)

この世界では人間が自分たちに近い存在となったロボットを差別しており、とある勢力がその差別意識を利用してロボットを宇宙に棄民させることにより利権を得ようとするのだが、そうした動きはロボットたちからしてみれば……というクライマックスの展開は、登場人物のひとりがそれを決断するきっかけとなる出来事も含めて、ただ驚きを喚起するだけではなく、エモーショナルで実によかった。

(ネタバレ終わり)

観られる機会があったら、ぜひ鑑賞してほしい。『神々の山嶺』のアニメを見たときにも感じたことだが、90年代〜2000年代中盤に日本で隆盛したある種の劇場用長編アニメのスタイルは、ヨーロッパの一部に息づいているような気がする。この動向はこれからも気にしていきたい。私にとってはアニメ好きとしての魂のふるさとの一部なので。

……劇場公開してくれないかなー。吹替版も作って。上映が無理なら、配信かパッケージ販売を……。

アニメライター

1982年生まれ。ライター。通称"前Q"。アニメーション関連のインタビュー、作品紹介、コラム等を各種媒体で手掛ける。主な寄稿先は「月刊ニュータイプ」(KADOKAWA)。作品の公式サイト、パッケージ付属ブックレット、劇場パンフレットなどの仕事も多数。著作に『オトナアニメCOLLECTIONあかほりさとる全書~“外道"が歩んだメディアミックスの25年~』(洋泉社、オトナアニメ編集部との共編著)、原稿構成を担当した本に『声優をプロデュース。』(納谷僚介著、星海社新書)がある。https://twitter.com/maeQ

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