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残念ながらブルームは凱旋門賞回避。それでも武豊騎手が前向きに語る言葉とは?!

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
今春のイギリス、アスコット競馬場での武豊騎手

武豊騎手、前人未到のJRA通算4100勝を達成

 9月16日、阪神競馬第7レースをパラーティウム(牝3歳、栗東・本田優厩舎)で優勝した武豊騎手(50)。これがJRA通算4100回目となる勝利となった。

 1つ勝つたびに大記録を更新する同騎手。当然、史上初の偉大なる記録だ。レコードホルダーは言った。

 「昨年の4000勝達成からこれまで、良い馬にも沢山乗せていただき、自分なりに一所懸命やってきていますので、満足ではありませんが納得はしています」

 同ジョッキーがメイショウカズヒメに騎乗して先頭でゴールを駆け抜け、JRA通算4000勝を達成したのが昨年の9月29日。つまり1年足らずで更に100勝を上乗せした事になる。翌週22日の競馬を終えて2019年の勝利数は84。今年はまだ約3カ月を残しており、このペースで勝ち鞍を積み重ねれば、15年以来となる年間100勝も見えてきた。

前人未到の4000勝達成から1年経たずして更に100勝を上乗せした
前人未到の4000勝達成から1年経たずして更に100勝を上乗せした

 ドバイや香港だけでなく、イギリスのロイヤルアスコット開催にも騎乗した。平成から令和に変わる瞬間はフランスで迎えた。若い時から世界を舞台にして戦っているが、その姿勢は現在でも何も変わらない。

この秋も世界を舞台にオファーが目白押し

 凱旋門賞で騎乗を予定していたブルームこそ参戦出来なくなる不運に見舞われたが、アイルランドの伯楽、A・オブライエン調教師から騎乗依頼を受けるだけでも凄い事。ブルームは「武豊で凱旋門賞を勝たないと意味がない」と常々口にしている松島正昭オーナーが権利を取得した馬ではあるが、オブライエン厩舎に籍を置いたままなのだから、調教師自身も納得しているからこそのオファーだった事は疑いようがない。

A・オブライエン調教師と(2005年、英国ヨーク競馬場にて)
A・オブライエン調教師と(2005年、英国ヨーク競馬場にて)

 A・オブライエンについて、海外競馬に明るくない方にも分かりやすい例を挙げれば、日本で最初に海外馬券発売がされた時の凱旋門賞(16年)での3頭出しがある。このレースでは勝ったファウンドなど上位3着までをその3頭で独占してみせた。また、今年のアイリッシュチャンピオンSやインターナショナルSを勝ったマジカルやジャパンも同師の管理馬だ。これだけの名調教師から依頼を受ける日本人騎手が果たして他に何人いるだろうか。

 結果、ブルームによる凱旋門賞参戦は残念ながら幻に終わったが、アイルランドの伯楽は別の馬への騎乗も考えてくれている。それに関しては実現するかどうかは分からないが、他にもフランスでの騎乗予定があるためいずれにしろヨーロッパへ飛ぶスケジュールに変更はない。

残念ながら凱旋門賞の回避が決まったブルーム
残念ながら凱旋門賞の回避が決まったブルーム

 また、その前には今週末のスプリンターズS(G1)でファンタジスト(牡3歳、栗東・梅田智之厩舎)の騎乗を予定しているし、凱旋門賞の後にもJRAのG1戦線は勿論、地方交流のJBCやアメリカのブリーダーズC。その他にも現在進行中の計画もあり、世界中で騎乗スケジュールが目白押しだ。

 一見、忙しくて大変に思えるそんなスケジュールにも、日本のナンバー1ジョッキーはかぶりを振って答える。

 「競馬だから仕方ないといえ、ブルームに関しては本当に残念です。ただ、こうやって色々と依頼をいただけるのはジョッキー冥利に尽きるありがたい事です。乗せていただけるのであれば世界のどこへでも行きます」

 今春50歳となった天才騎手だが、まだまだ衰える気配はない。この秋の更なる活躍を楽しみにしたい。

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(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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