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ウクライナ軍、ドローン視点で標的の撃破を見る「FPV神風ドローン」でロシア軍戦車を破壊

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍では攻撃している様子の動画や写真、破壊したロシア軍の戦車の残骸の写真や動画などをSNSで公開して世界中にアピールしている。2022年12月にはウクライナ軍が攻撃ドローンで標的のロシア軍の戦車や装甲戦闘車、軍事施設に突っ込んでいくところをFPV(ファースト・パーソン・ビュー)で撮影して、アゼルバイジャンのメディア、Kanal13が報じていた。

FPV(ファースト・パーソン・ビュー)はドローンに搭載されたカメラの視点から見えている風景が操縦者が見えること。戦車に撃墜していき画面が揺れている様子が伝わってくる。ドローンごと突っ込んでいき爆発するので最後には画面が揺れて暗くなる。また別のドローンから、FPV神風ドローンが戦車に攻撃していき、戦車が爆破されている様子も撮影されている。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】

ウクライナ軍のFPV神風ドローンによるロシア軍戦車などへの攻撃(アゼルバイジャンのメディアKanal13)【閲覧注意】

民生品FPVドローンでもすぐに「神風ドローン」に

攻撃ドローンは「Kamikaze drone(神風ドローン)」、「Suicide drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze strike(神風ストライク)」とも呼ばれており、標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンの名前に「神風」が使用されるのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン(Kamikaze Drone)」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」は一般名詞となり定着している。ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記されるが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースでもよく登場している。イラン政府がロシア軍に提供した攻撃ドローン「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」がいわゆる神風ドローンであることからメディアでも多く取り上げられて世界中でいっきに知名度を上げた。アゼルバイジャン語では「dron-kamikadze」だが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースで耳にしたり目にしたりしない日はない。

ロシア軍が使用しているイラン製の「シャハド136(Shahed136)」、「シャハド131(Shahed131)」は戦場での攻撃用に開発された神風ドローンである。また米国政府がウクライナ軍に提供した「Switchblade300」も攻撃用に開発された神風ドローンである。だが民生品ドローンでも爆弾を搭載して敵軍の標的に突っ込んでいき爆破されれば、簡単に「神風ドローン」になる。ウクライナ紛争では民生品ドローンと攻撃ドローンの境目もなくなりつつある。

ウクライナ軍やウクライナ領土防衛隊では、たまにFPVで撮影した映像を公開している。2022年11月にはウクライナ国家警備隊の「オメガ」と呼ばれる部隊が民生品ドローンでロシア軍の歩兵戦闘車「BMP-1」に攻撃していく様子をFPVで公開していた。神風ドローンや攻撃ドローンがロシア軍の戦車や軍事施設に突っ込んでいき破壊している様子を伝える動画は多く公開しているが、民生品を改良した神風ドローンに搭載したカメラでFPVで動画を公開しているのは珍しい。

▼ウクライナ国家警備隊のFPV神風ドローンがロシア軍の戦車に突っ込み破壊する様子(2022年11月)

▼ウクライナ軍も公式SNSでFPV公開

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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