藤井聡太七段は17年前の「渡辺明五段」を超えられるか?
本日(28日)、第91期棋聖戦五番勝負第2局が『東京・将棋会館』で行われている。
先勝した藤井聡太七段(17)が勝って一気にタイトル奪取へ近づくか。
それとも渡辺明棋聖(36)が追いつくか。
シリーズの流れを左右する一戦になりそうだ。
戦型と将棋めし
本局の先手番は渡辺棋聖。
作戦家で知られる渡辺棋聖は矢倉戦法を採用し、第1局に続いて矢倉の戦いとなった。
藤井七段としては、序盤で作戦負けを喫しないよう、五分でついていくことが重要だ。
一方、並行して行われている名人戦七番勝負では、豊島名人に対して渡辺棋聖の作戦がうまくいっていない。
敗戦で終わった名人戦第3局から中1日で行われる本局、渡辺棋聖がどう立て直してくるか。
「将棋めし」にも注目が集まる。
第1局では、渡辺棋聖がうなぎを注文したことで話題となった。
これは、タイトル保持者が高い物を選ぶことで、藤井七段がメニューを選ぶ際に気を使わなくて済む、という渡辺棋聖の気遣いがあったようだ。
結果的に第1局で藤井七段が選んだのはカツカレーだった。
本局も第1局同様、『東京・将棋会館』で行われる。
二人が頼む「将棋めし」はなんだろうか。
2003年王座戦五番勝負
中学生で棋士になった同士は意識するところがあるという。
加藤一二三九段(80)は谷川浩司九段(58)を挑戦者に迎えた1983年の第41期名人戦七番勝負で、同じ中学生棋士同士ということで気持ちの昂ぶりを覚えたという。
中学生で棋士になった同士といえば、渡辺棋聖と羽生善治九段(49)も激闘を繰り広げてきている。
二人による初めてのタイトル戦となったのは、2003年の第51期王座戦五番勝負、羽生王座(当時)ー渡辺五段(当時)だった。
時代の最強者に中学生棋士の若者が挑む構図は、今回の棋聖戦五番勝負と非常に似ている。
棋戦は違えど、1日制という点でも共通点がある。
当時四冠を保持する羽生王座に、まだ活躍の目立たなかった渡辺五段。
前評判では羽生王座ノリの声が圧倒的だった。
しかしその評に反し、このシリーズは激闘となった。
2局目までは互いに先手番で勝って1勝1敗。
そして第3局で後手番の渡辺五段が逆転勝ちをして、王者を追い詰めたのだ。
渡辺五段の先手番で迎えた第4局。やや苦戦の羽生王座が千日手に逃れて指し直しに。
指し直し局を羽生王座が制し、勝負は最終第5局にもつれこんだ。
第5局は振り駒で渡辺五段の先手番となり、矢倉から難解な戦いに進んだ。
中盤、羽生王座がそっぽに打った銀が好手となって優位を築き、押し切った。
終盤、勝ちがハッキリしたときに羽生王座は手が震えて駒をうまく持てなかった。それほど厳しい戦いだった。
そうして五番勝負は3勝2敗で羽生王座の防衛となった。
まだ実力を認められていなかった渡辺五段も、そのポテンシャルの高さを十分にアピールした戦いだった。
2004年竜王戦七番勝負
翌年、渡辺五段は第17期竜王戦七番勝負に挑戦を決めた。
迎え撃つは森内俊之竜王(当時)。名人も保持しており、絶頂期だった。
この戦いも激闘となった。
3勝3敗で最終第7局までもつれ、最後は渡辺五段が制して20歳にして初タイトルを獲得した。
2回目のタイトル戦が、2日制の七番勝負。
相手が年齢を重ねてからタイトルを獲得した棋士(森内九段は31歳で初タイトル)であること。
7月1日に開幕する王位戦七番勝負(木村一基王位(47)に藤井七段が挑戦する)と共通点が多い。
藤井七段は渡辺五段を超えられるか
もちろん、2003年の渡辺五段といまの藤井七段で違いはある。
王座戦で羽生王座に挑戦した頃の渡辺五段より、今の藤井七段のほうが実績を重ねている。
また、渡辺五段は2回目の挑戦までに1年を要したが、藤井七段はダブルタイトル戦となる。
ただ、特に棋聖戦五番勝負については、
- その時代の最強者に挑む
- 同じ中学生棋士である
2003年と非常に似た構図といえる。
藤井七段はこの棋聖戦を制して17年前の「渡辺五段」を超えることができるか。
キーを握るのはこの第2局になりそうだ。
シリーズがもつれればもつれるほど、渡辺棋聖が底力を発揮してくるだろう。
渡辺棋聖は名人戦第3局から中1日で本局を迎え、厳しい日程である。
藤井七段も同様に厳しい日程であるが、年齢を考えると藤井七段の回復のほうが早いはずだ。
藤井七段がこの第2局を勝てば、初タイトルが現実味を帯びてくる。
渡辺棋聖が勝てば、やはり王者は強い、そんなムードに傾きそうだ。
シリーズの行方を大きく左右する棋聖戦第2局。ご注目いただきたい。