安倍首相の靖国参拝 英メディアの報道は?
安倍首相が26日、靖国神社を参拝した。英国のメディアはこれをどう報じたのだろうか?
私はいま東京滞在中で、ネットで記事を読むぐらいなのだが、若干紹介してみたい。
英BBCの報道の1つには、「中国が日本の安倍晋三首相の靖国参拝を非難」という見出しがつく(後で更新されるかもしれないが、日本時間の夜中12時頃のバージョンを使った)。
その後の流れは以下のようだ。
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中国と韓国は戦争犯罪者を含む日本の戦没者が祭られている神社を参拝した日本の安倍晋三首相を非難した。
韓国は「嘆かわしい」行為に激怒すると述べ、中国は参拝を「絶対に受け入れられない」として、日本の大使を呼びつけた。
日本の隣国は靖国参拝を第2次世界大戦における日本の軍国主義の象徴と見る。
米国高官らは参拝がこの地域の「緊張感を悪化させた」と述べた。
中国、日本、韓国は東シナ海の領域をめぐって、いくつもの論争の渦中にある。
紛争のために、どの国でも国粋主義的感情が熱を帯びている。
―「自省」
安倍首相による参拝は現役の首相としては2006年の小泉首相以来で、その様子はテレビで生中継された。
「中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは、全くありません」と安倍首相は述べている。参拝は不戦の行為であったという。
官邸によれば、首相は私人として参拝しており、政府を代表したわけではないという。
しかし、その後間もなくして、中国は北京の日本大使を呼び、「強い抗議」の意を伝えた。
中国のQin Gang外務省広報官は、「日本の指導者の行為を深刻に非難する」と述べた。
「参拝は2国関係の向上に、大きな政治的な障害をつくる。日本は参拝が引き起こす結果全てに責任を持つべきだ」。
中国の怒りは韓国や台湾でも繰り返された。台湾のデービッド・リン外務大臣は日本に対し、自省や隣国の感情を傷つけないよう求めた。
20世紀初期、日本は軍国主義の国家に変貌した。天皇は神としてあがめられた。
日本は台湾、韓国半島、中国の大部分を占領した。
第2次世界大戦中、日本の帝国軍はアジア東部や南東部で残虐行為を行った。例えば、韓国の女性を性の奴隷とし、中国で虐殺を行った。
上記の隣国は日本がその犯罪を償うために十分なことをしていない、歴史をごまかそうとしているとして、頻繁に不満を表明してきた。
―A級戦犯
靖国神社は19世紀半ば、戦争で亡くなった男性、女性、子供を追悼するためにできた。
神社にはこうした人々のなきがらが収容されているが、遺族が敬意を払うために向かう象徴的な場所となっている。
現在、250万人の戦没者を「英霊」と称して祭っている。その多くが民間人だ。
しかし、第2次大戦の戦犯となった数百人も祭られている。
いわゆるA級戦犯となる14人――戦争を計画した人々――もこの中に含まれている。1948年、戦争犯罪で処刑された、参謀総長東條英機も入っている。
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以下は、上記の記事についている、BBCの特派員ルパート・ウイングフィールドヘイズ氏の分析だ。
―「神社が中国や韓国にとって侮辱的な存在なら、何故安倍首相は参拝したのか
まず第一に、安倍氏がそうしたかったからだ。首相を深く観察してみると、その心は国粋主義者であり、歴史的修正主義者だ。日本の戦時の指導者たちを有罪とした裁判は「戦勝国による裁き」であったと見ている。
安倍氏の祖父であった岸信介氏は、戦時内閣に入っており、A級戦犯の疑いで米国に逮捕された。後で釈放された。しかし、中国での日本の戦争犯罪に関わりがあったという汚点は完全には消えなかった。
次に、安倍氏の支持ベースは自民党の右派勢力であることが参拝の理由だ。東京のテンプル大学のジェフ・キングストン教授によれば、安倍氏は「自分がタフ・ガイ(強い人物)であることを見せている」、中国を怖がっていないことを示しているのだという。こういう姿勢は、安倍氏を支持する人々に受けがいいのだ。
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英ガーディアン紙の見出しは「日本の安倍晋三が、戦死者の神社参拝によって隣国との緊張関係を危険にさらす」。
内容はー:
日本の首相安倍晋三氏が東京にある、論争がある戦争神社(注:靖国神社のこと)に参拝し、中国を激怒させている。
丁度1年前に2度目の首相になった安倍氏は、7年前に靖国を参拝した小泉純一郎氏以来始めて現役の首相として参拝した人物となった。
安倍氏は、アジアでの戦時中の行動についての「自虐的な」罪悪感を日本は終結する必要があると述べたことがある、保守派の人物だ。2006年9月からの最初の首相就任時に、最初の年に参拝しなかったことを残念に思うと発言したことがある。
26日の参拝は中国と韓国から予想通りの怒りを引き起こした。この2つの国は、靖国が日本の軍国主義の強力な象徴であると見ている。政治家による靖国参拝を、20世紀の前半に中国や韓国半島の一部で行った残虐行為について日本が罪滅ぼしをしていない証拠ととらえている。
「中国政府は、日本の指導者が中国やその他の犠牲となった国々の人々の感情を踏みにじったこと、歴史的正義への公然とした挑戦であることに強い憤りを表明する・・・そして、日本に対する強い抗議と深刻な非難を表する」とする声明文を中国外務省が発表した。
中国外務省広報担当Qi Gang氏は、続けて、「日本の指導者の行動に強く抗議し、深刻に非難する。日本の指導者の靖国参拝の本質は、軍事的侵略と植民地支配の歴史を美化するものだ」。
ロイター通信によれば、韓国は参拝を日韓の絆に損害を与える、嘆かわしく時代錯誤的動きだと述べた。
「私たちは、この参拝についての遺憾と怒りを差し控えることができない」と、韓国の文化・スポーツ・観光担当大臣ヨー・ジン・リョン氏が述べている。参拝は時代錯誤的な行為だ、と。
靖国神社は19世紀後半以降、戦争で亡くなった250万人の日本人に敬意を表している。連合国による裁判でA級戦犯とされた、戦時の指導者数人もこの中に入っている。
安倍首相は中国や韓国の人々の感情を傷つけるつもりは「まったくない」と述べている。
「靖国参拝については、戦犯を崇拝するものだと批判する人がいますが、私が安倍政権の発足した今日この日に参拝したのは、御英霊に、政権1年の歩みと、二度と再び戦争の惨禍に人々が苦しむことの無い時代を創るとの決意を、お伝えするためです」。
「国のために戦い、尊い命を犠牲にされた御英霊に対して、哀悼の誠を捧げるとともに、尊崇の念を表し、御霊安らかなれとご冥福をお祈りしました。貴重な人生を犠牲にした戦死者に経緯を表すために祈り、安らかに眠られるようにと願いました。靖国神社への参拝については、残念ながら、政治問題、外交問題化している現実があります」、「中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは、全くありません」。
後で発表された声明文で、安倍首相はこう続けた。「靖国神社に参拝した歴代の首相がそうであった様に、人格を尊重し、自由と民主主義を守り、中国、韓国に対して敬意を持って友好関係を築いていきたいと願っています」。
安倍氏の参拝は日本と隣国との絆にもっと損害を与えると見られている。日本は中国とは東シナ海の戦略的に重要な場所にある複数の島――日本では尖閣といい、中国では釣魚島ーーを巡って、韓国とは、韓国では独島と言われる竹島の領有権を巡って長期の対立状態にある。
安倍首相は今年、中国と韓国を怒らせてもいる。一般的になっている、日本がアジア本土で侵略戦争を起こしたという見方を疑問視したからだ。日本の隣国はまた、日本の自衛隊(注:原文は「軍隊」)を強くしようという最近の計画や、自衛隊が海外でもっと積極的な活動ができるようにするために日本の平和憲法を改正しようという動きについても、神経質になっている。
安倍氏の靖国参拝が米国を困惑させたと見る人もいる。米国は日本と隣国との関係の良好化を願っているからだ。
「(安倍首相は)おそらく、大丈夫だと思っているのだろう。比較的人気があるし、信念をもってそうしている」と上智大学の中野晃一教授(政治学)が話す。「小泉首相の場合は、彼が修正主義者・国粋主義者ではないことをみんなが知っていた。安倍首相はどうなのかと、人々は疑問に思っていた。その答えが、今出た」。
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