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外国人枠拡大で何が変わる? 有力チームの助っ人外国人補強状況から見る今シーズンのJリーグの行方

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:松尾/アフロスポーツ)

外国人枠の「3+1」が「5」に拡大

 今シーズンのJリーグを観戦するうえで、ぜひとも頭に入れておきたいトピックがある。それは、今シーズンから1チームあたりの外国籍選手の登録数と、試合エントリー数に関するルールが大きく変更されたことだ。

 昨シーズンのルールでは、1チームにつき最大5人の外国籍選手の登録が認められ、そのうち最大3人が試合にエントリー(出場)できた。これにAFC(アジアサッカー連盟)加盟国の国籍を有する選手1人も追加可能で(アジア枠)、さらにJリーグ提携国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)の国籍を有する選手に関しては、日本人選手と同様の扱いとなり、外国人枠の対象から除外されていた(提携国枠)。

 それが今シーズンからは、アジア枠が撤廃されると同時に、1チームあたりの外国籍選手の登録が無制限となったうえ、そのうち1試合で最大5人(J2、J3は最大4人)がエントリー(出場)可能となったのである(提携国枠ルールは従来どおり)。

 つまり、外国人枠の「3+1」が「5」となったため、実質的な増加分は「1」になる。たしかにそう考えると微増にすぎないように見えるが、たとえば昨シーズンはブラジル人選手が3人までしか同時にプレーできなかったが、今シーズンはブラジル人選手5人がスタメンに名をつらねることも可能になったことになる。

 仮にチームの屋台骨となるGKからセンターフォワードまでのセンターラインに外国人選手4人を並べたとしても、サイドバックもしくはウイングに外国人選手を当てることができる。あるいはセンターラインを固めたうえで、センターバックを外国人選手2人で組ませることもできるし、外国人選手の2トップを形成することも可能だ。

 もちろんアジアにも優れた選手は存在するが、その供給源がヨーロッパや南米を中心とした世界中に広がったとすれば、補強策やチーム作りの考え方も大きく変わる。より高いレベルの選手を昨シーズンより2人も多く起用できると考えると、「3+1」と「5」の違いは一目瞭然だろう。

 いずれにしても、ルールが大きく変わった以上、各クラブはそれに適応しなければならないわけで、その新ルールをうまく活用できるか否かが、すなわち今シーズンのタイトル争い、もしくは残留のためのキーポイントになる。

助っ人の活躍がカギとなる注目チーム

 そして、この新ルールを最大限に有効活用すべく、いわゆる”外国人助っ人”を中心にチーム作りを進めている典型的なチームがある。それが、ヴィッセル神戸だ。

 2017年に元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキを獲得した神戸は、昨シーズンも元スペイン代表のアンドレス・イニエスタを獲得し、今シーズンは元スペイン代表FWのダビド・ビジャを補強。さらに、ここにきてポルトガルのヴィトーリアがブラジル人DFダンクレルの神戸移籍を発表するなど(開幕時点ではまだ神戸から正式発表されていない)、拡大した外国人枠をフル活用する構えだ。

 そうなれば、開幕時点での神戸の外国人登録は韓国代表GKキム・スンギュとブラジル人FWウェリントンを含めて計6人。加入濃厚と見られるダンクレルに使える目途が立てば、日本での実績が十分なウェリントンをローテーション用の戦力としてメンバー外で温存できるという、稀に見る贅沢な助っ人外国人体制が整うことになる。

 しかも神戸はセレッソ大阪からボランチの山口蛍を獲得しているため、センターラインは盤石。両サイドバックにも鹿島アントラーズから西大伍、ガンバ大阪から初瀬亮を獲得していることを考えると、残留争いに巻き込まれた昨シーズンから一転、今シーズンは上位争いに加わる可能性は高いと見ていいだろう。

 同じく優秀な助っ人外国人を揃えるのが、リオ・アヴェ(ポルトガル)からブラジル人MFジョアンと、大宮アルディージャからブラジル人FWマテウスが加入した名古屋グランパスだ。

 彼ら新戦力2人に、現有助っ人戦力のオーストラリア代表GKランゲラック、昨シーズンの得点王のブラジル人FWジョー、ブラジル人FWガブリエル・シャビエル、昨夏にフロンターレ川崎から加入したブラジル人ボランチのエドゥアルド・ネットを含めると、神戸と同様、助っ人外国人をローテーションしながらシーズンを戦えるという豪華さだ。

 その他、プラス2枠分にアルゼンチン人MFレアンドロ・デサバトとブラジル人FWブルーノ・メンデスを補強したセレッソ大阪は、神戸と同じく計6人の外国人をやり繰りしながら新シーズンに臨む構えで、元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスを擁するサガン鳥栖も、韓国人GKキム・ミノ、クロアチア人のDFニノ・ガロヴィッチとDFカルロ・ブルシッチ、そしてスペイン人MFイサック・クエンカを新たに加え、現有戦力のFWビクトル・イバルボも含めて外国人選手6人体制を整えた。

 また、新ルールの活用によって飛躍しそうな気配を漂わせるのが、川崎から加入したサイドバックのエウシーニョ、DFヴァンデルソン、MFヘナト・アウグストといったブラジル人をトリオで補強した清水エスパルスだ。この3人に、現有戦力の元韓国代表DFファン・ソッコ、ブラジル人FWドウグラスら日本での実績のある選手が額面どおりの働きをすれば、優勝争いに絡んでもおかしくはない陣容と言える。

資金力がチーム力の差を生む可能性

 もちろん、優勝候補と目される強豪クラブも新ルールに対応すべく強化を図っている。

 まず、昨シーズンは日本人選手を中心に戦って連覇を果たした川崎は3人の新外国人選手を補強。FWレアンドロ・ダミアンを筆頭に、エウシーニョの抜けた穴を埋めるべく獲得したマギーニョ、センターバックのジェジエウを加え、彼ら3人の活躍次第ではリーグ3連覇とアジアチャンピオンズリーグの二冠も視野に入ってくるはずだ。

 一方、現有戦力をベースに戦うのが鹿島と浦和だ。新外国人選手を補強しなかった鹿島は、昨シーズンをケガで棒に振ったブラジル人MFレアンドロが復活すれば、FWセルジーニョ、MFレオ・シルバ、GKクォン・スンテ、DFチョン・スンヒョンと、質の高い5人の外国人が揃うことになる。

 また、ズラタンに替わってブラジル人MFエヴェルトンが加わった浦和にしても、FWファブリシオの故障復帰を見越して大物助っ人の獲得は行わなかったが、新ルール導入によって昨シーズンはほぼメンバー外となっていたFWマルティノスを有効に起用できる環境が整ったことは大きい。FW杉本健勇、DF鈴木大輔、サイドバックの山中亮輔と日本人選手の新戦力も充実しているだけに、各ポジションに2人のレギュラークラスを抱える隙のない陣容が整ったと言える。

 一方、開幕時点で5人の外国人枠をフルに使っていないクラブは、4人のサンフレッチェ広島のほか、湘南ベルマーレが3人、ベガルタ仙台が2人。大分トリニータは韓国人GKムン・キョンゴン1人と、日本人選手中心のチーム作りを進める構えだ。

 もっとも、このなかには新ルールに対応するだけの十分な資金が不足しているクラブもあり、やむを得ない選択と言えなくもない。そういう意味では、今後は外国人枠の拡大によってこれまで以上にクラブ間の格差が生まれることは必至で、スモールクラブにとっては自らが生きる道を新たに模索する時代が到来したと言えるだろう。

 果たして、この新ルールがJリーグにどのような影響を与えるのか。タイトル争いへの影響と同様に、注目していく必要がありそうだ。

(集英社 Web Sportiva 2月19日掲載・加筆訂正)

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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