北米野球の底力、独立リーグでも1試合2000人台の観客動員:2022年世界プロ野球観客動員データから
昨シーズンの世界プロ野球の観客動員について、前々回、前回に続く3回目のレポート。今回は121位から200位までを見ていく。ここは、1試合当たりの動員数にしてだいたい4000~2000人のゾーンだ。このゾーンには、MLB傘下のマイナーリーグの3A級が3球団、2A級が15球団、A級が28球団、北米独立リーグ球団が25球団入っている。おおむね、マイナー下位のA級、そして独立リーグのボリュームゾーンと言えるだろう。
2022シーズン世界プロ野球観客動員(121-140位)
球団名 カテゴリー 1試合平均観客数
121 シャンバーグ 米独立 4041
122 フレズノ A 4025
123 カンペチェ メキシコ 4004
124 シカゴ 米独立 4000
125 チャールストン A 3992
126 ビンハムトン 2A 3978
127 シュガーランド 3A 3970
128 富邦 台湾 3961
129 統一 台湾 3959
130 マートルビーチ A 3935
131 バーミンガム 2A 3925
132 コーパスクリスティ 2A 3909
133 アクロン 2A 3904
134 レオン メキシコ 3830
135 スポケーン A 3788
136 スプリングフィールド 2A 3754
137 ベラクルス メキシコ 3645
138 ハリスバーグ 2A 3595
139 オグデン 米独立 3540
140 NWアーカンソー 2A 3538
マイナー下位レベルの台湾、メキシコの下位球団
一方で、各国のトップリーグであるメキシカンリーグの18球団のうち5球団、台湾リーグ5球団のうち2球団も入っている。つまりは、メキシコや台湾の観客動員下位チームは、アメリカのA級や独立リーグ並みの動員力ということだろう。
もっとも、台湾リーグの下位2球団(富邦ガーディアンズ/128位, 3961人)、統一ライオンズ/129位, 3959人)は、それでも1試合当たり4000人程度の観客は集めている。ところが、メキシカンリーグの方は、123位にランキングされているカンペチェ・ピラタスの4004人(リーグ18球団中10位)の下は4000人を切り、152位(リーグ13位)のプエブラ・ぺリーコスでかろうじて3000人オーバー。その下のタバスコ・オルメカス(200位/1944人)に至っては2000人を割り込んでいるという有様だ。メキシカンリーグの下位4球団は200位圏内にも入らず、リーグ最下位のドゥランゴ・ヘネラレス(全体221位)に至っては、1573人とアメリカ独立リーグの下位球団並の動員力しかない。この球団は、2016年に別の町から移転してきた新球団だが、度々チーム消滅、移転の噂が立つのもむべなるかなだ。
1試合当たり6000人近く集める3A、4000人超の2Aのチームは、このあたりで「打ち止め」となっている。3A最下位は、前回の記事でもその名が出てきたブレーブスの3A球団、グウィネット・ストライパーズで、2961人(155位)で3000人を割り込み、2A最低のブリュワーズ傘下、ビロクシ・シャッカーズは2326人で180位となっている。
2022シーズン世界プロ野球観客動員(141-200位)
球団名 カテゴリー 1試合平均観客数
141 ランカスター 米独立 3471
142 ファイエットビル A 3459
143 ミッドランド 2A 3428
144 ウィニペグ カナダ独立 3414
145 コロンビア A 3394
146 ウィスコンシン A 3390
147 メンフィス 3A 3375
148 ボイズ 米独立 3348
149 ウィチタ 2A 3341
150 チャタヌーガ 2A 3238
151 ゲーリーサウスショア 米独立 3185
152 プエブラ メキシコ 3158
153 リンカーン 米独立 3074
154 ファーゴ 米独立 3064
155 グウィネット 3A 2961
156 カナポリス A 2912
157 サザンメリーランド 米独立 2905
158 セーラム A 2878
159 ハドソンバレー A 2876
160 レイクカウンティ A 2874
161 グレートレイクス A 2807
162 アッシュビル A 2742
163 ブルックリン A 2707
165 ボウイ― 2A 2685
165 ボウイ― 2A 2685
166 クワッドシティ A 2668
167 エリー 2A 2664
168 ヨーク 米独立 2654
169 ケベック カナダ独立 2650
170 トリシティ 米独立 2640
171 ニューヨーク 米独立 2635
172 モンテゴメリー 2A 2522
173 デルマルバ A 2497
174 エバンスビル 米独立 2451
175 ボーリング A 2437
176 クリアウォーター A 2412
177 ミシシッピ 2A 2389
178 レキシントン 米独立 2387
179 ヒルズボロ A 2356
180 ビロクシ 2A 2326
181 ロッテ(二軍) NPB 2299
182 阪神(二軍) NPB 2267
183 ユージン A 2235
184 カロライナ A 2165
185 シーダーラピッズ A 2164
186 フローレンス 米独立 2158
187 インランドエンパイア A 2148
188 アイダホフォールズ 米独立 2111
189 カンザスシティ 米独立 2106
190 ランチョクカモンガ A 2099
191 ピオリア A 2089
192 ビリングス 米独立 2056
193 ロッキーズ 米独立 2046
194 ワシントン 米独立 2040
195 アバディーン A 1966
196 エバレット A 1982
197 チャールストン 米独立 1961
198 レイクエリー 米独立 1955
199 ウィルミントン A 1947
200 タバスコ メキシコ 1944
カナダ6球団の状況
台湾、メキシコの名が出てきたので、ここでカナダの諸球団の状況を見てみたい。
現在、カナダには独自の「ナショナルリーグ」はない、アメリカ諸リーグの構成球団として加盟しているだけだ。MLBと傘下のマイナーリーグにそれぞれ1、そして独立リーグに4の計6つのプロ野球チームが米加国境近くの町に本拠を置いている。
人気ナンバーワンは言わずもがなトロント・ブルージェイズだ。MLB30球団中8位、全体でも9位の3万2763人の動員力を誇っている。
この「巨人」を除くと、「カナダ1位」は、そのブルージェイズ傘下のA級球団、バンクーバー・カナディアンズ。かつては3A級にもランキングされた老舗球団だ。A級で3番目、全体でも85位の5135人を動員している。
かつては、独立リーグ、アメリカン・アソシエーション所属のウィニペグ・ゴールドアイズが「カナダマイナー球団ナンバーワン」の称号を冠していたが、以前は立ち見を入れて2万人超の観衆を1試合に集めたこともあるこのチームの人気も落ち着いてきたようで、バンクーバーに大きく引き離され、144位となっている。それでも独立リーグ全体では6位。1試合平均3414人を集客している。この後、フロンティアリーグ勢が続き、ケベック・キャピタルズが2650人で169位にランクイン。今回の表にはないが、トロワリビエール・エーグルス(232位, 1322人)、オタワ・タイタンズ(234位, 1250人)となっている。
独立リーグの底力
このゾーン最高の121位にランキングしているのは、独立リーグのひとつ、フロンティアリーグ最高動員数のシャンバーグ・ブーマーズだ。6000席のホーム球場に4000人ほどの観客をコンスタントに入れているので、試合は常に盛り上がっていると言えるだろう。実際、筆者もここを訪問したことがあるが、こぢんまりとした球場の賑わいはいかにも「ボールパーク」という感じがして、再訪したい気にさせられた。
同じ独立リーグでも、すでに、アメリカン・アソシエーション(ケーンカウンティ、87位)、アトランティックリーグ(ロングアイランド、104位)の1位球団は登場しているが、残りのひとつ、パイオニアリーグの最高動員数を誇るオグデン・ラプターズは3540人で139位に入っている。ケーンカウンティ球団の本拠、ジェニーバやシャンバーグはシカゴ大都市圏に、ロングアイランドはニューヨーク大都市圏に位置する、言わば「ビッグマーケット」だ。対するオグデンは、メジャー球団のないユタ州の人口10万に満たない田舎町。おまけに近くの州都ソルトレイクシティにはエンゼルスの3A球団、ソルトシティ・ビーズが存在する。ちなみにこの球団の動員数は、5873人で71位にランクインしている。登録を外れたメジャーリーガーもプレーする(ひょっとするとあの大谷だってプレーするかもしれない)3Aとの野球の質を考えると、オグデンの動員力には目を見張るものがある。
現在の北米独立リーグは2つに大別される。
1993年にノーザン、フロンティアの2リーグがリーグ戦を開始したのが、現在まで続く独立リーグの始まりなのだが、その後、大小さまざまなリーグが興亡を繰り返し、やがて経営が安定し、プレーレベルも「プロ」の名にふさわしい(つまりMLB傘下のマイナーリーグにひけをとらない)、アトランティック、カンナム、フロンティア、アメリカン・アソシエーションの「4大リーグ」と、経営規模が小さく、ゆえにプレーレベルも低い「アペンディックス(付録)・リーグ」に大別されるようになった。
2020年シーズンより、MLBはマイナーリーグのリストラに着手し、元々試合興行を行っていなかったマイナー最低レベルのルーキー級は残すものの、興行を行っていた「アドバンスルーキー」級とシーズン途中のドラフト後に入団してくるルーキーたちのうち、有望株をプロの水にならす場として機能していた「ショートシーズンA」級を切り離すことにした。
その一方、独立リーグのうち「4大リーグ」と提携を結ぶことにし、カンナムリーグを解体し、新たに3リーグ体制に再編した3リーグに加え、それまでアドバンスルーキー級だったパイオニアリーグを独立リーグとして、4リーグとパートナーシップ協定を結んだ。A級(ハイ、ローの2段階ある)以下にはMLBとのマイナー契約年数の制限が設定されており、その在籍年数をオーバーした選手の「避難先」として、MLBは「パートナーリーグ」を利用することにしたのだ。
これら4つあるパートナーリーグに関しては、観客動員の統計を発表しているのだが、これ以外のアペンディックス・リーグは、それを公開していない。実際、これらのリーグの試合風景は本当にプロ野球が行われているのかというくらい閑散としており、私が経験した範囲でも、試合消化のため、本拠地でもない球場で平日昼に無観客(ただし球場に行けば無料で入場できる)で試合を実施したり、MLB球団のキャンプ地の立派な球場に15人しか観客がいなかったりということがあった。
MLBパートナーリーグのリーグ別1試合平均観客動員数は以下のとおりである。
アメリカン・アソシエーション 2591
アトランティックリーグ 2463
パイオニアリーグ 2158
フロンティアリーグ 1823
おおむね1試合当たり2000~2500人というところだ。かつては、ニューヨーク周辺に展開されていたアトランティックリーグが人気、実力とも最高とされていたが、アトランティックリーグの台頭以前に「独立リーグナンバーワン」の称号を得ていたノーザンリーグの系譜をひく(多くの球団がノーザンリーグから移籍)北米大陸中部に展開されるアメリカン・アソシエーションが人気ナンバーワンとなっている。
150位以下には独立リーグ球団が名を連ねるが、194位(2040人)のワシントン・ワイルドシングスはフロンティアリーグ所属。ワシントンと言っても首都D.C.ではなく、ペンシルバニア州の田舎町を本拠としている。この球団までが「2000人越え」である。この2000人というのは、日本の独立リーグが発足当初に観客動員の見込み数として提示していた数字で、安定した球団経営のひとつの目安となる数字なのだろう。
181、182位にはロッテ、阪神の二軍がランクインしているが、日本の「マイナーリーグ」については、また次回。
(写真は筆者撮影)