W杯出場決定!なでしこジャパンが多彩な攻撃でタイを圧倒、アジアの頂点まであと2つ
相手に反撃の暇を与えない、完膚なきまでの勝利だった。AFC女子アジアカップ準々決勝で、なでしこジャパンはタイと対戦。7-0で大勝し、9大会連続のW杯出場を決めた。
一方、トーナメントの逆の山では、韓国が優勝候補のオーストラリアを1-0で破った。なでしこが優勝するためにはオーストラリアが最大の壁だと思われていただけに、意外な結果だ(同国は来年のW杯は開催国として出場する)。
DF清水梨紗は、「オーストラリアはすごくいいチームですし、正直なところ対戦したかったです」とポツリ。ただ、「それは叶いませんでしたが、目指すものは変わらないので。相手がどこでも優勝を目指します」と、目標は揺るぎない。
このタイ戦で日本の2トップを組んだのは、新型コロナの隔離明けで完全復帰したFW岩渕真奈と、タイにルーツを持つFW田中美南。ゴールへの気迫がみなぎるプレーで、立ち上がりから相手陣内に押し込んだ。その後、開始9分で田中が負傷交代を余儀なくされるアクシデント。しかし、代わってピッチに立ったFW菅澤優衣香が国内得点王の真骨頂を見せた。
持ち前の強さとゴールへの嗅覚を生かし、クロス、PK、ヘディング、ミドルシュートと多彩な形で4得点。アシストも2つ記録し、なんと7ゴール中6ゴールを演出した。中でも、菅澤が「自分のベストゴール」と語ったのは、MF宮澤ひなたの鋭いクロスに完璧なタイミングで合わせたダイナミックな1点目だ。
このゴールできっかけを掴んだ日本は、前半終了間際にも美しいゴールを決める。
右サイドでDF清水梨紗、MF長谷川唯、岩渕のトライアングルが相手を翻弄。最後は岩渕のグラウンダーのパスをファーサイドで宮澤が押し込んだ。後半も日本は攻撃の手を緩めることなく、緩急を利かせた攻撃から、ボランチのMF隅田凜や途中出場のFW植木理子が得点を重ねた。
グループステージ3試合では、守備を固める相手を崩すアイデアが限定されており、タイミングが合わないシーンも見受けられたが、この試合ではチーム全体が連動し、さまざまな崩しのイメージをシンクロさせることができていた。得点力があって周りも生かせる岩渕が復帰したことは大きい。じっくり相手を食いつかせて崩す、イマジネーションあふれる駆け引きも数多く見られた。
試合ごとに、チームは細部の修正をしっかりと積み上げてきたようだ。
格上のチームとは対戦しておらず、積み上げてきた守備の成果を披露する場面は多くない。ただ、池田太監督は、「奪われてから守備に変わる瞬間の切り替えの速さは習慣づいてきたと感じます」と、着実にチームコンセプトが浸透している手応えを示した。
とはいえ、タイがかなり厳しい状況でこの試合を迎えていたことは考慮したい。
複数の主力が負傷し、試合前の検査で新型コロナウイルスの陽性者が確認されたため、控え選手はDFとMFの3名のみ(日本は12名全員がベンチ入りした)。指揮を執る岡本三代監督(日本サッカー協会から派遣されている)もベンチ入りできず、代わって轟奈都子GKコーチ(同)が指揮を執る非常事態だった。
開催国のインドでは感染が拡大しており、クラスターに見舞われた国は他にもある(インド女子代表は大会からの撤退を余儀なくされた)。日本は開幕前に岩渕が陽性(無症状)となり、2戦目まで欠場した。ホテルでの隔離期間中は、部屋で(フィットネス)バイクを漕ぎ、リフティングや(部屋の中で)ドリブルをしてボールタッチの感覚を維持していたという。
大会中、PCR検査は頻繁に行われている。佐々木則夫女子委員長は、「見えない敵との戦いは凄まじく、検査で全員が陰性とわかると拍手が起こるほどです」と、緊張感が張り詰めた現場の現状を明かした。
また、インドは暑く、この試合はピッチ上の気温が40度を超えていたという。日本は5つの交代枠をフルに使えたことも大きい。
ここまでの4試合で、池田監督はWEリーグのチームメートや、年代別代表で長くプレーしてきた選手たちを近いポジションに置き、連係をうまく機能させている。その中で、調子の良い選手は自信を掴み、途中から出場した選手も活躍できる好循環がある。「1分でも長くピッチに立ちたい」と思うのが選手の心理だと思うが、交代する選手と新たに入る選手が笑顔でタッチを交わしているシーンは、チームの一体感を象徴している。
2月3日の準決勝の相手は中国だ。1月27日には、男子のW杯予選でサムライブルーが中国を2-0で下しており、アベック勝利を飾りたいところだ。チームの調子も上がっており、ハイレベルな戦いが期待できる。
中国女子の世界ランクは19位で、アジアではオーストラリア、日本、韓国に次ぐ4位につけているが、フィジカルの強い選手が多く、油断ならない相手だ。左サイドバックのDF宮川麻都は、「1対1で負けなければ(試合に)負けることはないと思うので、対峙する相手には絶対に負けたくないです」と、対人での勝利を誓っている。
新たなヒロインの誕生にも期待したい。
試合は日本時間の2月3日、23時キックオフとなる。