Yahoo!ニュース

台風対策 明るいうちの早めの避難が絶対に必要な理由。浸水しても歩けると思っている人は令和情報に更新を

あんどうりすアウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 台風14号の被害が心配されています。ハザードマップでリスクのある地域にお住まいの方や頑丈な家ではない方は、明るいうちの早めの避難を検討してください。

 その際、平成に書かれた情報だと避難のノウハウが古い場合があります。最新の令和4年3月版の国土交通省「水害に関するワンポイント」がわかりやすいので、参考にしてください。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 「ひざ下の水位であれば浸水していても歩ける」「長靴はダメだけど、運動靴ならいつでも浸水した道を歩ける」と誤解している人もいますが、最新の国土交通省「水害に関するワンポイント」では、流れがあると、ガードレールに張り付いてしまうことや、ひざ下程度の水でも流れが強いと大人でも足をすくわれ流されてしまうこと、あふれてしまうと、徒歩でも車でも避難することが困難になることが明記されています。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 堤防が高ければ高いほど、あふれた際のエネルギーは大きくなり、流れが速くなります。この状態で浸水した道は水たまりではないので歩ける状況ではありません。また、高潮と洪水が重なるという場合には、ハザードマップで想定されていない場所で浸水が起こることがあります。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 避難する時、全てが平坦な道ではありません。低いところに水は流れていくので、坂道、階段で流れが起きます。用水路には引きこまれていきます。水がたまっている場所があっても、夜道だと深さがわかりません。車のヘッドライトが水たまりに反射すると、窪地であっても平坦な道に見えてしまい深さは分かりません。2019年台風19号21号では、移動中の車の中で命を落とした方が30名いらっしゃっいました(1)。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 そのため、最新の国土交通省の「水害に関するワンポイント」には、くどいほど、あふれる前に安全なところ逃げることが強調されています。

 浸水してきたら、水の中を歩くこと、車で避難すること自体がリスクになってきます。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 水害に関するワンポイントでは、逃げ遅れた場合、無理に水の中を歩くことは薦めていません。「もしにげおくれたら無理に避難せず、できるだけ高い場所に逃げる」と書かれています。ただし、浸水の深さによっては、上の階に逃げても助からない場合もあります。また、深さだけでなく、流れが速くなるため、木造家屋が倒壊することが想定されていたり、河岸が侵食されてしまうため、マンションでも崩落してしまう想定の地域もあります。だから、ハザードマップを確認して、あふれる前に、明るいうちの避難が必要なのです。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 さらに、今回は台風で、暴風も吹いています。浸水してからの避難がこれだけ困難である以上に、雨風での避難も困難になります。明るいうちの早めの避難がとても重要なのです。

出典 EMINBO 監修 あんどうりす イラスト エムラヤスコ
出典 EMINBO 監修 あんどうりす イラスト エムラヤスコ

 また、浸水の想定が深くないなど、外に避難するのではなく、自宅の上の階に避難することが可能な地域であっても、浸水により家具が浮いてくることも想定しておいてください。家具が浮いてしまったため、上の階に避難できず1階で命を落とした方もいることがわかっています。(2)

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 そして、上の階に防災グッズ等をあげておくことが必要になります。

出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版
出典 国土交通省 水害に関するワンポイント 令和4年3月版

 さらに、救助される時でも、浸水した水には化学物質や汚染物質が含まれる場合があるため、むやみに水に入らないことも強調されています。水に浸からず救助ボートを待ちます。リスクがあるため、安易に浸水した水の中に入ることを、最新情報では薦めていないのです。

 以上、あふれる前に避難ということが強調されているのが令和の最新の避難情報です。どうか最新情報に更新して明るいうちの早めの避難をお願いいたします。

(1)2019年11月12日 毎日新聞 台風「車中死」30人 避難や帰宅途中 19号から1カ月

(2)2019年11月19日 読売新聞 「浮いた家具 避難阻んだか」

アウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 

FM西東京防災番組パーソナリティ 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士課程 女性防災ネットワーク東京呼びかけ人 阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルをいかした日常にも役立つ防災テクを、2003年から発信。子育てバックは、そのまま防災バックに使えるなど赤ちゃん防災の先駆けとなるアイデアを提唱。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで講演が全国に広がる。企業広報誌、子育て雑誌などで防災記事を連載中。ゆるくて楽しい防災が好み。

あんどうりすの最近の記事