【宝塚市】素朴でおおらか、人気の沖縄伝統工芸「やちむん」の魅力にハマる―つむぐ舎
おおらかな絵柄と渾沌(こんとん)を含んだ色彩が、原始のエネルギーを感じさせる沖縄のうつわ「やちむん」。いま人気の琉球工芸が「つむぐ舎」さんで充実展示中です。貴重な機会に、いちど覗いてみませんか。
伝統的な技法をいまに受け継ぐ「やちむん」
阪急宝塚線・山本駅北口から徒歩3分。機能的で美しい「用の美」を備えた民藝のうつわを扱う「つむぐ舎」さん。全国の窯元から店主が選び抜いた手づくりのうつわは、普段使いにぴったりのリーズナブルで外れなしの逸品ぞろい。
年間を通して定期的に商品が入れ替わりますが、ここ1、2ヵ月は沖縄のうつわ「やちむん」が充実しています。「やちむん」とは、沖縄の方言で「焼き物」のことで、その起源は1600年代の琉球王朝時代にまでさかのぼります。
近隣諸国の影響を受けながら、装飾性の強い日用品として独自の発展を遂げてきました。その後、昭和に入り、沖縄を訪れた民藝運動の提唱者・柳宗悦(やなぎむねよし)らによって紹介されることで、広く知られるようになります。
自然の釉薬がおおらかな美を生む
沖縄の土は赤土で、焼成すると黒くなります。そこで絵付けをするための土台づくりとして、白い土に浸す「白化粧」という技法が生まれました。
上の写真のお皿は、むかしながらの染料を使い、伝統的な絵柄「唐草文」を描いたもの。中央に「蛇の目」と呼ばれる白い輪っかがあります。
おおらかで素朴なデザインは、ずっと見ていても飽きることがありません。
とは言え、長く伝えられた技術は、様々な工程を経る手の込んだものです。
スポイトのようなもので釉薬を絞り出す「イッチン(筒描き)」、表面の釉薬を指で掻いて線を描く「指掻き」など、手仕事だけでこんなに豊かな文様がうまれるのかと、思わずうなるものばかり。
このほかにもペルシャ釉を使った青いお皿など、自然の美を活かした個性豊かなうつわがたくさんありました。
光る職人の技
店主の小山真弓さんに、今回展示されている沖縄の作り手さんの印象を尋ねたら、
「『職人』って感じですね」
という答えが返ってきました。
例えば、5寸のお皿というオーダーであれば、納入されたお皿のどれもが、ピタリと同じ5寸の大きさで揃えられてくるそう。作陶のスピードもとても速いといいます。
赤土の粘土はとても柔らかく、成形するのが難しいのだとか。それを同じ形に揃えるには長い鍛錬が必要です。その時間の積み重ねがリズムを生み、うつわの美となって表れているのではないでしょうか。
今回は伝統的な絵柄が多かったですが、躍動感がありパワフルなのに、そこはかとないゆるさが親しみやすく、見ているだけで愛着が湧いてきます。
長いあいだ変わらなくていい
沖縄のうつわのどういうところに魅力を感じるのですかという問いに、言葉にするのは難しいと取材の間ずっと悩みつつも、最後に小山さんが答えてくれました。
「民藝のうつわ全部に言えることですが、長く変わらないもの、というのが好きなんです、たぶん。長い間、変わらなくてもいいんじゃない?ってことが」
より良い社会、より良い未来を目指して余計なものを切り捨てて進み続けること。大事なことだけれど、それがすべてではないし、ときに窮屈に感じることも。
沖縄のおおらかで素朴なうつわたちは、影を感じさせる渾沌とした色彩を持っています。
悠久の時間に育まれ、複雑な陰影をはらみながら変わらずそこに「ある」。その豊かさが、やちむんの魅力なのかもしれません。
いかがでしたか。今回はやちむんをご紹介しましたが、ほかにも魅力的なうつわがいっぱい。それぞれのうつわの個性を比べてみるのも楽しいですね。お天気の日のお散歩コースにぜひどうぞ。
店舗情報
つむぐ舎
■ 場所:兵庫県宝塚市平井1-7-24
■ Open:11:00~17:00
■ 定休日:日・月曜日
■ 公式インスタグラム
(お電話での問合せはお控えください)