372年ぶり夏至の日食、予報は曇り時々晴れ
2020年6月21日と聞いてザワザワする方、そう、たぶん「日食病(関連記事参照)」にかかっています。この日、東京を含め日本から東南アジア、アフリカにかけて広範囲に部分日食と一部で金環日食が見られます。
日食には「部分」「金環」「皆既」の三種類があります。作家の故・赤瀬川原平氏は「金環日食が10万円だとすると皆既日食は100万円ぐらい」と述べていますが私自身は、金環日食は部分日食と同じカテゴリーで、価値は皆既日食の足元にも及ばないと思っています。(もちろん天文学的な意味では無く、個人の趣味としての感想です)
日食は地球と月の距離で決まる
皆既日食も金環日食も、太陽が月によって隠されるのは共通していますが、地球と月との距離が遠いと金環日食になります。
地球と月の平均距離はおよそ38万キロ。±2~3万キロほど変化します。前回(2019年7月)南米で起きた皆既日食では、月と地球の距離は36万キロ。そして今回は39万キロと月が遠いところにあるので、東南アジアなどでは金環日食、そしてその端にあたる日本列島では部分日食となるわけです。残念ながら、今回は皆既になるところはありません。
300年以上無い 夏至の日食
日本で部分日食が見られることは、それほど珍しいことではありません。国立天文台のデータによると、東京に限っても過去100年間で40回ほどあったので、およそ2~3年に1回の頻度、昨年にいたっては1年に2回もありました。しかも部分日食だと太陽がほとんど「隠れた感」が無く、天気が悪いと関心も持たれにくい。そうしたことから、日食に対しての世間の反応はそれほど高くありません。
しかし実は、日食というのは太陽と月が微妙な位置関係にあって、この広大な宇宙の中で点と点が重なってその影を地球で見ることが出来ると考えると、奇跡のような天文現象だと言えます。さらに現在の月は1年に3.8センチほど遠ざかっているので、およそ6億年後には皆既日食は見られなくなるわけです。まぁ、人間の時間軸とは違いますが。
そして今回は、夏至の日に見られる部分日食です。北半球では太陽高度が一番高く(東京・約78度)、日本全国で見られます。国立天文台やNASAのデータを調べた限りでは、1648年(慶安元年 徳川家光が将軍の頃)以降、日本で夏至の日に日食が起こったことはありません。
意味のある事かと言われると困りますが、今回は日食病の人にとってはたまらない現象なのです。
日食の見え方と観測の注意
太陽の欠ける割合は南ほど大きく、東京では約3分の1が欠けます。日食の開始は16時頃からで、最も欠ける時間帯は17時頃の予想です。
また、観測時には、以下のことに注意してください。
・日食専用のグラスや遮光板を使う
・ピンホールを利用する
・専用の道具をつけた望遠鏡で観察する
絶対に肉眼や下敷き・サングラスなどで見てはいけません。
当日の天気 東京でも晴れ間が出るか
これまで述べてきて身も蓋もない話ですが、一番重要なのは当日の天気です。
6月下旬の晴天率は梅雨のない北海道や梅雨明け後の沖縄で6割、関東から西では2割弱ですが、18日時点での予報では、梅雨前線が沖縄あたりまで南下する予想で、九州から北では晴れ間がでる見込みです。東京も午後には日差しが出て、日食が見られる可能性があります。
次は約800年後に・・?
もし、今回天気が悪くて見られなかったら、次に広範囲で見られるのは10年後の2030年になります。さらに夏至の日食でいうと、2802年なんてデータも。その頃には地球はどうなっているのか。そう考えると今回の日食がますます貴重に思えてなりません。
ちなみに、その5年後2035年は約150年ぶりに本州で皆既日食が見られるチャンスです。
今後の日食予定
2023年4月20日 部分日食(九州南部、紀伊半島など)
2030年6月1日 金環日食(北海道)部分日食(全国)
2035年9月2日 皆既日食(北陸から北関東)
【参考資料】