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すとぷりはメタバースのど真ん中に入れた――リーダー・ななもり。インタビュー

宗像明将音楽評論家
すとぷり(提供:株式会社 STPR)

若年層からの圧倒的な支持を得ている6人組エンターテインントユニットのすとぷり。さまざまな変化が起きる配信シーンの中でも人気を伸ばし続け、2022年2月時点で関連アカウントを含む動画総再生回数は50億回にものぼっている。その一方で、昨年は「うたコン」(NHK総合)や「しゃべくり007」(日本テレビ系)にも出演。そんな2021年を経て、2022年1月からはコロナ禍で断念していたドームツアーをすとぷりが開始。2021年の歩み、そして2022年の展望をななもり。に聞いた。

自然に受け入れられる雰囲気になってきている

――2021年12月6日には「しゃべくり007」に出演されましたね。

ななもり。:バラエティー番組に出演させていただくのは、2021年6月の「マツコ会議」さん以来だったのですが、その時とも全く違った空気感で、番組によってこんなに違うんだなと感じましたね。

――リスナーのみなさんの反応はいかがでしたか?

ななもり。:僕たちが普段活動しているYouTubeなどの生配信では、いつも2時間ぐらいの配信をしているので「テレビだと一瞬で物足りない」という声もあれば、「テレビに出てくれると、友達や家族にも見てもらえるからうれしい」という声もあって、本当にさまざまなのですが、喜んでいただけてよかったです。

――2021年11月2日には、「うたコン」にAR技術を駆使して出演されていましたが、歌番組の感想はいかがでしたか?

ななもり。:実は、ARの技術であのように出演できる状態まで作っていくのが本当に大変で、NHKさんにもすごく協力をしていただきました。

――AR技術を活用しながら歌番組に出ようと踏み切った理由はなんだったのでしょうか?

ななもり。:なかなかリアルなライヴができない状況の中、歌番組に「AR技術で出演」という過去にない新しい届け方の機会をいただけたので、挑戦しようと思いました。リスナーさんに喜んでいただけることならどんどん挑戦していきたいですね。

――とにかくテレビに出たい、というわけではないんですね。

ななもり。:そうなんです。リスナーさんに「すとぷりらしさ」を「喜んでいただける形」で出演させていただくことがとても大切だということを、この数年でとても感じていました。

――リスナーの方は若い子が多いですよね。

ななもり。:そうですね。高校生から大学生ぐらいの方が多いですね。

――そのぐらいの子たちは、いつもテレビを見ているとは限らないですよね。

ななもり。:あまり見ていない方が多いように感じています。「うたコン」さんに出演させていただいた時も「久しぶりにテレビをつけた」という声もありましたね。

――リスナーの方以外の反応で印象的なものはありましたか?

ななもり。:「しゃべくり」さんだとパネルがあったり、「うたコン」さんだといきなりバーチャルの僕たちがARで出てくるので、びっくりする方も多いだろうなと思っていたのですが、そのような反応があまりないことに驚きました。「こういうのもあるよね」と、自然に受け入れられる雰囲気になってきているような、世間の方がネガティヴな反応をすることもないぐらいに、馴染んできているのかなと思います。

――NHKの「うたコン」に出たとなると、「紅白」も意識されますか?

ななもり。:挑戦したいです。

――すとぷりが出るならどういうスタイルがいいと思われます?

ななもり。:チャンスをいただけるなら、リスナーさんにも喜んでいただけて、僕たちをあまり知らない方にも「こういうものもあるんだ」と楽しんでいただけるような形で出演できたらいいですね。

――すとぷりとして、世間に対してサプライズをもたらしたいという気持ちがエンターテインメントグループとして大きいのでしょうか。

ななもり。:そうですね。「歌」を届けるということは、すとぷりの活動の中では「言葉」を届けていくことのひとつの方法なので、見ている方の印象により残るようなものを届けたいという強い気持ちがあります。

取材に応じてくれたななもり。(提供:株式会社 STPR)
取材に応じてくれたななもり。(提供:株式会社 STPR)

最近は音声配信が求められている

――株式会社STPRの代表取締役としてのななもり。さんとしては、コロナ禍で大変だったことも多かったのではないでしょうか?

ななもり。:普段の生配信や動画投稿の活動自体は、全くと言っていいほど影響がありませんでしたが、リアルのライヴに協力していただいている会社さんやスタッフさんとは、コミュニケーションが薄くなってしまっていたということを改めて感じました。今まさに、ドームツアー中なのですが、「関わってくれている数百人の方々と一から走り出すのって、こんなに大変なんだ」っていうのを、この4、5か月ですごく感じています。

――動画配信は順調なのに、それでもライヴをやろうとするのは、やはり重要な活動だからなんですね。

ななもり。:リアルでのライヴは、僕たちがリスナーさんと直接会える特別な機会ですし、リスナーさんにとってもすごく大事な場所なんじゃないかと思うんです。ネットで仲良くしているお友達と初めて会うのが、僕たちのライヴだったりすることも珍しくなくて。リスナーさんと僕たち、そしてお仕事で関わってくださる全ての方にとって、定期的にライヴがあることで、ひとつの「居場所」ができるんじゃないかと感じています。

――すとぷりのリーダーとしてのななもり。さんから見て、コロナ禍が長く続くことによって、ファンの子たちの精神面での変化はありましたか?

ななもり。:コロナの影響もありお家で過ごす時間が増えて、インターネットで何かを楽しもうとしたときに、すとぷりを知って好きになってくれた方たちもいいますね。リアルのライヴなどで僕たちと会ったことがある方とない方、メンバーの思いを感じて応援してくれている方、もっとライトに楽しんでいる方とさまざまなリスナーさんがいますね。

――ファン層が広がった感覚があるわけですね。

ななもり。:すごく広がったと思います。特に、若い方と同じぐらい大人の方が見てくださるようになりました。10代の方から支持をされているというお話をされることも多いのですが、僕たちから見えている景色では、学生さんから大人の方まで、本当に幅広い年齢層の方がいて、世の中のイメージとは少し遠いところに来ているんだな、という感覚はあります。

――そういう世代の方たちには、すとぷりの何が刺さっていると思いますか?

ななもり。:最近は、何かをしながら聞くことができる音声配信のほうが求められているように僕は感じていて、僕たちの生配信の「音だけでも十分楽しめる」ところなのかなと思いますね。

2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)
2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)

すとぷりはリアルにもバーチャルにも行ける

――すとぷりの動画総再生数は50億回だそうですね。VTuberのシーンではいろいろ起きているなかで、すとぷりはなぜここまでファン層を広げられていると思いますか?

ななもり。:VTuberさんと比較をするものではないですが、僕たちとVTuberさんやアニメキャラクターに大きな違いがあるとすれば、僕たちには意図的に作られた「物語」がないんです。僕たちがやってきたこと、感じていることはすべてリスナーさんと一緒に築いてきたもので、架空の物語だったり、設定があるわけはないんですよね。僕たち自身がオリジナルの「物語」というか……。VTuberさんの設定は、ある意味で「物語」のうちのひとつだと思うのですが、第一線で活躍されている方たちは、どんどん「人間」らしくなってきている感じがしているんですよね。キャラクターと生身の人間の境界線が、いい意味で曖昧になってきたように思います。メタバースを求めている方たちにとって、僕たちは、そのど真ん中に入れたんだなと感じています。そもそもの僕たちは人間で、だけどキャラクターとリアルと、どちらにも行ける……。僕たちがやってきたこと全部がオリジナルの「物語」で、その「物語」に、リスナーさんは参加できるんです。

――設定を作り込まなくても、すとぷりの6人が話していること自体のリアリティーが強いわけですね。

ななもり。:僕たちの生配信は、身内のノリもたくさんあって、聞いてくれているリスナーさんもいつだって身内になれるんですよね。

――2019年にななもり。さんにお話をうかがった時に、自分たちがVTuberとかYouTuberとか一言で表現できないことに悩んでいると話されていましたが、1年経ってみて、まだ悩んでる部分はありますか?

ななもり。:悩んでいる部分はありますね。「動画配信エンタメユニット」と言いつつも、動画の部分と生配信は、リスナーさんに「楽しい」を届ける活動のひとつなので。最近では「エンタメユニット」と言うことも多かったりします。

――その変化のポイントはなんだったのでしょうか。

ななもり。:現実とバーチャルの空間が、どんどん近づいてきているあたりでしょうか。CGで作られたアニメも、どんどん人間らしくなってきていますし、バーチャルがリアルに寄ってきているのか、リアルがバーチャルのほうに寄っているのか、分からなくなってきていますよね。でもすとぷりは、リアルもバーチャルも、どちらにでも行けるんだな、と改めて感じたんです。もちろん、それを狙っていたわけではないのですが、どちらにも行ける存在は、意外といなかったんだなと思いました。

2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)
2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)

――すとぷりの音楽活動では、2021年に10曲も配信していますね。

ななもり。:2021年は、実は少ないほうですね。アルバムを出すときは、リアルでリスナーさんと会える握手券だったりライヴの応募券だったり、なにかお祭りのようなこととあわせて楽しんでいただきたい気持ちが強かったのですが、コロナの影響でそれもできないのでなかなかリリースできませんでした。STPRが音楽出版社としての登録を終えてから、今では192曲もの曲を出版しているんですが、メンバーのソロの曲もあわせると、2019年から240曲ぐらい作っているんです。日々制作してます。

――ななもり。さんも、2021年はソロで「UNCHAIN」「カナリヤ・バイバイ」を配信リリースしましたね。あの2曲を選んだポイントはどこでしょうか?

ななもり。:『UNCHAIN』は、「こういう思いで」と自分の気持ちをお伝えして作っていただいたんです。正解もたくさん落ちているんですが、正解をねじ曲げることで得する人もいるし、正解を教える代わりに何かを取ろうとする人もいるというのが、インターネットだと思っていて、「いろんな声があるけれど、ちゃんと分かった上で楽しまないといけないよ」という思いがすごくこもっています。『カナリヤ・バイバイ』は、ゆるくてまったりとした曲なんですが、「もっと気楽でいいんだよ」という思いを込めた曲です。

2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)
2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)

僕がやりたかったことがもう近くまで来ているな

――2022年、いよいよドームツアーが始まりましたね。

ななもり。:今回は、新しい僕たちを見せるのはもちろんなんですが、これまでのすとぷりをリスナーさんと一緒に再認識するようなドームツアーにしたいと思っているんです。2020年の11月に『Strawberry Prince』というグループの名前を付けたアルバムをリリースしたのですが、そこから僕たちの時は止まっていて、あまり進んでいないように感じているのは、リスナーさんと会えていないからなんですよね。なので、これまでリリースした4枚のアルバムを全部詰め込んだようなライヴにしたいと思っています。

――見せ方として考えているポイントはあるでしょうか?

ななもり。:ライヴをやるときは、本番当日までかなり準備の時間がかかっているのに、その時間はリスナーさんと共有できていないので、ライヴ本番まで楽しめるような、そしてライヴに参加しない方もその過程を楽しめるよう動画を公開したいと思っています。

2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)
2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)

――すとぷりの目指してるものに対して、今、ななもり。さんはどのぐらいまで行けていると思いますか?

ななもり。:すとぷりの活動は、今はリアルではあまりできないのですが、届けたいことと届けられる環境はあるので、あとはもう届けるだけだという気持ちでいます。その先に、リスナーさんと僕たちすとぷりメンバーの居場所、もっというとすとぷりだけじゃなく、僕たちに近しい活動者さんや、僕たちに近しいリスナーさんの居場所になるような空間をバーチャル上に作りたいと考えています。

――それはできつつありますか?

ななもり。:はい。時代の流れをみていても、メタバースというワードが先行していたり、「僕がやりたかったことがもう近くまで来ているな」というのが体感としてありました。ただ僕自身は「自分が独占したい」とか「自分がコントロールしたいんだ」という気持ちはないので、みなさんが行きたい場所があるなら、そこに僕たちが参加する形でもいいかなと思っているんです。メタバースは広過ぎて、何をもってメタバースなのか……というところもあると思うのですが……。自分がやりたいことや、自分が欲しいものが「そこ」にあって。その動機もちゃんとあって、「そこ」に自分の時間を長くかけていくことがメタバースなのかなと思っているんです。すとぷりのリスナーさんでいうと、僕たちの放送を見ながらTwitterをすることが多いですし、リスナーさん同士でグループLINEでやり取りをすることもあります。そんなネット上での関係がもっともっと広がってひとつの文化になったら、現実で誰かと会うことも、もっと楽しくなるだろうなと、そんなことを妄想しています。

2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)
2022年1月9日、福岡PayPayドーム公演(提供:株式会社 STPR)

音楽評論家

1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。著書に『72年間のTOKYO、鈴木慶一の記憶』(2023年)、『渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする』(2016年)。稲葉浩志さんの初の著書『シアン』(2023年)では、15時間の取材による10万字インタビューを担当。

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