「ChatGPTでガンガン壁打ちができる!」
「外部からプロのファシリテーターなんて、もう必要がない!」
多くの人がすでに試しているだろう。ChatGPTを使っての壁打ち、ブレスト(ブレーンストーミング)。
圧倒的な処理速度、使い勝手で、コンサルティングの仕事にはもう、なくてはならないツールとなっている。
特にアイデア創出には、素晴らしい効果を実感している。
そこで今回は、ChatGPTを活用して新規事業アイデアを創出する手順や、効果的な質問方法について紹介する。プロセスがよくわかるマインドマップも掲載したので、ぜひ最後まで読んでもらいたい。
※こちらが、最終的にできあがったマインドマップ。5回ほどの質問で、ここまでアイデアが発散された。
■人間だけでブレーンストーミングする限界について
集団でブレーンストーミングしようとすると、まず壁にぶち当たるのが、優秀なファシリテーターの調達だ。ファシリテーションがヘタだと、ブレストは確実に失敗に終わる。
私はファシリテーションに自信があるが、社内の人間が参加メンバーだと、十分に力を発揮できない。自分が答えやアイデアを持っているケースがあるため「絶対的な客観視」が難しいからだ。
また、参加メンバーも経験が豊かすぎると、チャレンジングなアイデアを出せないというジレンマに陥る。無意識のうちに脳内で削除してしまうから、健全な発散ができない。
このように、人間だけでブレーンストーミングしようとすると、どんなに慣れていても簡単にはいかないものなのだ。
※ファシリテーションはチャンクアップ、チャンクダウン、スライドアウト等、「具体と抽象の往復運動」ができる質問力が重要。
■ChatGPTを活用したブレーンストーミング3つのメリットと手順
いっぽう、ChatGPTなどのAIチャットボットを活用すると、この悩みは大幅に解決する。メリットは3つだ。
- 効果的な切り口を与えると一瞬でアイデアが発散される
- 抜け漏れのない(MECE)アイデアが創出される
- 繰り返すと無限にアイデアが発散される
人間が相手では、とてもできない芸当だ。では、実際にやってみることにする。このときのポイントは3つだ。
- アイデア発散の切り口を与える
- 発散されたアイデアをさらに発散させる切り口を与える
- アイデアを具体化させる切り口を与える
とにかく、効果的な切り口をタイミングよくChatGPTに与えること。ここが重要だ。(アイデアを発散させるための効果的な切り口を、ChatGPTに質問してもいい)
■人材紹介会社の新規事業アイデアをChatGPTとブレストしてみた
それでは、実際にChatGPTを使ってみよう(モデルはGPT-4を活用)。
※スマホでも閲覧しやすいように引用文として紹介する(画像ではなく)。
まず最初は、次のようにChatGPTに依頼してみた。
私がアイデア発散のために選んだ切り口(フレームワーク)は「オズボーンのチェックリスト」である。SCAMPER法も試したが、オズボーンのチェックリストのほうがChatGPTからいいアイデアを引き出せたので、こちらを紹介する。
実際に出てきたアイデアは以下の通り。驚くべき結果だ。
どうだろう? 多角的な視点でアイデアを提供してくれた。人間が考えたら、どこかの切り口に偏ってしまうか、従来の発想から抜け出せない平凡なアイデアしか出てこないことが多いのではないか。
※マインドマップで表現すると、こうなる。一瞬でこれだけの事業アイデアが提供された。
私はこの中で、以下のアイデアに注目した。このアイデアをさらに発散させたいと思った。他のアイデアより現実的に取り組めそうであるし、マーケットも大きそうだと判断したからだ。
適応(Adapt):
異業種への転職を希望する求職者向けに、専門性を活かせる職種への適応をサポートするサービス
そこで、次のようにChatGPTに依頼してみた。またもオズボーンのチェックリストを使ってアイデア発散をお願いした。
すると、次のようなアイデアを一瞬で提供してくれた。
すると、先ほどと若干異なる切り口でアイデアが創出されたが、気にしないでおく。あくまでも発散段階だからだ。いずれにしても、一瞬でアイデアがここまで発散されることに驚きを隠せない。
実際にメンバーと議論する場合であっても、ここまでChatGPTにアイデアを発散してもらってから、参加メンバーでブレーンストーミングしたほうが効果的だと思った。
※マインドマップで表現すると、こうなる。2回の依頼で、これだけアイデアが発散された。
そして、これらのアイデアの中で、私が目を付けたのは、コチラだ。
●逆転 (Reverse):企業向け異業種採用支援
異業種転職支援サービスの逆転アプローチとして、企業向けに異業種からの採用を促進する支援サービスを提供します。これにより、企業は新しい視点やアイデアを持った人材を採用しやすくなり、業績向上につながります。
求職者に対してではなく、企業に対して転職の支援をするアイデアだ。まさに「逆転」の発想である。このアイデアを採用し、さらに具体的にどうすべきか。具体策をChatGPTに尋ねてみた。
まず私が尋ねたのは人材だ。この事業を推し進めるにあたって、どのような人的リソースが必要なのか。ここから考えてみたいと思い、そのヒントを尋ねてみた。
すると、返ってきた答えがコチラだ。
すると、とても無難な答えが返ってきた。しかし、この「無難さ」も重要だ。無難なアイデア、意見というものは、出そうと思っても意外と出せないからだ。
※「人材に必要な4つの条件」もマインドマップに加えてみる。
また、よくよく考えてみると「異業種間の転職」といっても、どんなものがあるのか。それがわからないと、人材にどのような経験やスキルが必要なのか、アイデアが浮かばない。そこで、ChatGPTにいくつか事例も考えてもらった。
このような質問をすると、素晴らしい答えが返ってきた。
なるほど! このたとえ話は、とてもわかりやすい。さらに3つの事例を尋ねてみた。
返ってきた答えはコチラ。
素晴らしい事例をドンドン紹介してくれる。すべて鵜呑みにはできないが、とても参考になるアイデアばかりだ。
※「異業種への転職事例」もマインドマップに加えてみる。
ChatGPTを活用してアイデアを発散しはじめたら止まらなくなる。なので、これぐらいでキリをつけたい。最後に、プライシングについて尋ねてみたので、それも紹介しておこう。
すると、ChatGPTはまたもや素晴らしい答えを提供してくれた。
なるほど。プライシングはサービス内容によって変わるため、まずはサービス内容を列挙し、プライシングの種類、そして詳細な根拠まで示してくれた。
プライシングは事業成功のための重要なファクターだ。稲盛和夫氏は、「値決めは経営」と言い切った。価格戦略を間違えては事業を継続できなくなるので、素晴らしいアイデアを最後にもらえて、私はとても感激した。
※最後に「プライシング」のアイデアをマインドマップに加えた。
これらのアイデアをベースにメンバーとブレーンストーミングすれば、きわめて質の高い議論ができそうだ。
■まとめ
ChatGPTを活用して壁打ち、ブレーンストーミングする手順や質問のやり方について解説した。そして、ChatGPTを効果的に使うためには、優れた質問の切り口、フレームワークを事前に知っておくことが重要だと、ご理解いただけたことだろう。
もちろん、ChatGPTに切り口そのものを考えてもらってもいい。だが、その切り口が本当に効果的であるかどうかは自分で判断しなければならない。スキルは足りなくても、最低限の知識は必要だ。
今回は、ChatGPTを活用して新規事業アイデアを創出するための方法を簡単に紹介した。壁打ち、ブレーンストーミングするには、素晴らしいツールだと断言できる。
繰り返すが、このような生成AI、AIチャットボットを効果的に使うには、やはりその分野の基礎知識や基本的な能力、経験も重要だ。ベースとなる知識や能力がないとAIに振り回されることになり、逆に精度の低いアウトプットが出てしまう可能性がある。
ここは気を付けたいポイントだ。