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「中国は非礼」本音漏らした英女王 英中蜜月の偽り

木村正人在英国際ジャーナリスト
バッキンガム宮殿での公式晩餐会で乾杯する習主席とエリザベス女王(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

お茶目なオバアちゃま、英国のエリザベス女王が久々にやらかしてくれました。ロンドンのバッキンガム宮殿で10日催された園遊会で、昨年10月、国賓として英国を公式訪問した中国の習近平国家主席一行について発言する様子が偶然、カメラに撮らえられていたのです。

英大衆紙デーリー・メールからそのやり取りを拾ってみましょう。

侍従長「習主席の一行が公式訪問した際、警備を監督した警察幹部ルーシー・ドルシさんを紹介させて下さい」

女王「まあ、お気の毒」

侍従長「彼女は中国の一行によって本当に困らされました。しかし彼女は何とか指揮者としての任務を全うしました。彼女の母親ジュディスさんは子供の保護とソーシャルワークに関わっています」

母親「はい。私は自分の娘のことを誇りに思っています」

侍従長「ドルシさん、自分の体験を話さなければなりません」

ドルシさん「はい。私はゴールド・コマンダーという職責にありました。女王陛下がご存知かどうかは知りませんが、私にとって中国国家主席の公式訪問の警備はかなりの試練でした」

女王「聞いていますよ」

ドルシさん「試練でした。一行がランカスター・ハウスから出てきた時、彼らは訪問を中止すると私に言いました。あの時は、ああ…」

女王「彼らは(バーバラ・ウッドワード駐中国・英国)大使に対しても非常に非礼でした」

ドルシさん「彼らは非礼でした。彼らは私とバーバラの2人に向かってきたのです」

女王「大変だったわね」

母親「本当に信じられないわ」

ドルシさん「非常に非礼で、外交的ではなかったと思います」

ランカスター・ハウスでは当時、「英中創造と協力」展が開かれ、ウィリアム王子とキャサリン妃が習主席夫妻をアテンドしています。エリザベス女王の発言は英BBC放送のBBCワールドニュースでも報じられましたが、中国国内では放送が突然、中断されました。

英国の君主は表向き政治や外交について意見を述べてはならないことになっていますが、過去にも何度か物議を醸す発言が漏れています。しかし、エリザベス女王も取材がオープンな園遊会で本音を漏らすとは、中国の非礼を腹に据えかねていたようです。

中国の李克強首相は2014年に英国を歴訪した際、エリザベス女王との面会を要求し、「応じないなら訪問を取りやめる」と恫喝していたことが英紙タイムズのスクープで明らかにされました。

また、訪英前に、空港での歓迎式典の段取りに目を通した中国側が「李首相の飛行機からVIPエリアまでのレッドカーペットの長さが十分ではない。3メートルも短い」とクレームをつけていたことが英紙フィナンシャル・タイムズに報じられました。

英首相キャメロンは12年5月にチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世と会談したことがあります。中国の怒りを買って、もう二度とダライ・ラマ14世とは会談しないと誓わされた上、13年12月に訪中しますが、李首相との「夕食」はドタキャンされます。

キャメロンの懐刀、財務相オズボーンが、国際金融都市ロンドンを擁する英国が習主席の経済圏構想「一帯一路」と人民元の国際化を後押しし、米中・米欧関係のブローカー役を果たす英中「黄金時代」を仕掛けています。

しかし中国の本音を人民日報の国際版「環球時報」(14年6月)が明らかにしています。「中国人民は英国人の複雑な感情を許すべきだ。台頭する国は、年老いた衰退国家の困惑と、それを隠すために時にエキセントリックに行動することを理解すべきなのだ」

英国では「三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)の礼」のことを「Kowtow」と言います。9回、手や額を地面につけて礼を尽くす追従的な動作やふるまいを指します。清朝の皇帝に「叩頭の礼」を求められた英国使節が拒否したことから、そのまま英語になって残っています。

英国は経済関係を拡大する見返りに、再び中国から「三跪九叩頭の礼」を求められています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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