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「今日は真司が決めたし、自分もあの一発を」CL準々決勝を戦う岡崎慎司の葛藤と野望。

豊福晋ライター
交代後の45分間、岡崎はベンチで考え続けた。(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

ビセンテ・カルデロンに主審のホイッスルが響く。

グリーズマンが肩を落とす。コケもまったく嬉しそうではない。一方で、レスターの選手たちは歓喜こそしなかったが、表情には満足感が見てとれた。

チャンピオンズリーグ準々決勝第一レグ。試合に勝ったのはアトレティコだ。

しかしスコアは1−0。

チームの総合力ではアトレティコが圧倒的に上だ。CLでの経験となれば、両者には雲泥の差がある。アウェーゴールこそ奪えなかったものの、レスターにとって1点差の敗戦は悪くはない。

それでも、岡崎慎司の胸にはどこかすっきりしないものが残った。

「特に力の差を感じるのは、どうしても引いてしまうところ。個人的にはそれが嫌というか・・。引いて守る時間はあっていいけど、前から行く時に連動していければよかった。セカンドボールを相手にほぼ拾われていたので・・。自分やバーディが競って、こぼれてくるところは拾って五分五分にしないと、さすがに厳しい。深い位置で守るのはいいけど、あげる時はあげないと・・・」

前半、岡崎はチームメイトに“もっと上がろう”と何度もジェスチャーで訴えた。

しかし4バックもボランチもラインをあげることができず、ずるずると下がってしまう。アトレティコがボールを回す時間は増え、岡崎のプレスは簡単にかわされ、渾身の走りも空回りに終わる。

そして後半のピッチに、彼の姿はなかった。

「ゲームプランとしてはもっと前から行きたかったと思う。予想外に疲れもあって、プラン通りにいかなかったから最終的に僕を替えたのだと思う。追って追って、はがされるという、どうしようもない状況だったので仕方ないなと」

後方からのボールを前線で競った。ワンタッチで味方に落とす。器用にターンして展開する場面もあった。

一度だけチャンスもあった。前半25分のことだ。

しかし左からのクロスはエリア内に飛び込んだ岡崎の足にやや届かず、合わせることはできなかった。

「オルブライトンからのクロスはあそこに絶対抜けてくると思ったけど、(ボールが)後ろに行ったので、ちょっと読みが足りなかった。悔しいですね。あの一本しかなかったので」

プレスをかけ、ロングボールに体をはって競った上で、さらに得点も狙う。レスターのFWとして岡崎に課される複数の仕事。当然、自分はFWだという自負もある。一番欲しいものがゴールであることも変わらない。同じくCLを戦っている香川真司の得点も頭にあった。

「今日は真司がゴールを決めてたし、ああいうのを見ると、自分もあの一発、もっとFWを意識して触りきれればと思いますし・・・。考えさせられることがいっぱいありますね、今日は」

負けはしたものの、試合後のチームの雰囲気はポジティブだったという。

突破に関しては悲観はしていない。ベスト16ではセビージャに初戦で2−1で敗れたが、ホームで2−0で勝ち逆転した。

第二戦、ファンの声援を背に、チームはより前への意識を持って攻めるだろう。岡崎の持ち味もより活きてくるはずだ。

「1−0という最小限で抑えて、次はもっとアグレッシブに前から行けると思う。失うものはない。僕は次にかけたいと思います。試合に出られるかもわからないけど、どんな役割でも自分はやろうかなと。(1−0は)必死で自分たちが守りきった結果。その意味では勢いがまだ途切れてない。次の試合で勝ちに貢献できる何かをしたいなと思います」

不完全燃焼に終わったビセンテ・カルデロンでの45分間。葛藤を抱えながらも、岡崎はあくまでも前を見つめている。

ライター

1979年福岡県生まれ。2001年のミラノ留学を経て、ライターとしてのキャリアをスタート。イタリア、スコットランド、スペインと移り住み、現在はバルセロナ在住。伊、西、英を中心に5ヶ国語を駆使し、欧州を回りサッカーとその周辺を取材する。「欧州 旅するフットボール」がサッカー本大賞2020を受賞。

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