3Dのデータは「有罪」フィジカル展示は「無罪」の謎
KNNポール神田です!
クラウドファンディングの出資者に対して、自身を型取りした3Dデータのダウンロード可能なサイトのURLをメール添付は「わいせつ」であり有罪で罰金40万円という判決だった。一方、物理的な形状をモチーフとしたフィジカルな展示は無罪となったという。
検察は、「不特定有数の出資者に、送ったメールに記された3Dデータのダウンロード可能なURL」を「性器を公然に露出したことと同じだ」とわいせつ性を指摘したそうだ。それに対して東京地裁は「有罪」と認めた。
3Dプリンタでデータを再現してプリントアウトする為には、コストも時間もかかり、そして何よりも3Dプリンタそのものがないことには「カタチ」を再現することがまったくできない。しかも、その3Dデータそのものには、0と1のビット情報しかない。ファイルを開いたところで、一般の人が興奮を及ぼすような「わいせつ性」はどこにも存在しないだろう。たとえマシン語がそらで読める人でも、興奮できるような符号にはなっていなかったのではないだろうか?しかも、3Dプリンタで作成されたABS樹脂オブジェクトが本当に「わいせつ」に見えたかどうかも疑問だ。
しかも、そのデータの保存場所を指定するURLを明示しただけで、「性器を公然に露出したことと同じ」「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」に当たるという感覚が不思議で仕方がない。
今回の司法判断、プログロムも「わいせつ」
刑法175条によると「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする」とある。
今回の判決はいままでのわいせつ概念の「文書」「図面」だけではなく、「わいせつ物」を再生することができる3Dデータ。またそれがダウンロード可能なURLの頒布も問題となった。つまり「プログラム」も「わいせつ」であるという司法判断となったことにショックを受ける。一方、フィジカルな型取りをした石膏の展示はアート作品として「無罪」となった。直接女性器に触れて型取りされたモノはアート作品となり「無罪」。3Dプリンタで再現性のあるデータのURLは「有罪」。なんだか、新たな「デジタルわいせつ」をとりしまる詭弁に思えて仕方がない。
「あなたは18歳以上ですか?」にわざわざ「いいえ」を押す小学生はいない
そもそも、現在のインターネットで女性器、男性器を見ようと思えばURLひとつで世界のサイトから、いくらでも登場する。もはや、小学生でさえも、「セーフサーチ フィルタ」のオフの仕方を最初に覚えるそうだ。親よりも子供たちの仲間情報の方が、よほどかしこい。また、日本のアダルトコンテンツでも、「あなたは18歳以上ですか?」の質問に「いいえ」を押す人がいるのだろうか?アダルトコンテンツの事業者側が守られているといってもおかしくない。
ヘアヌード以外はボカシというガラパゴス国のわいせつ概念
ヘアヌードは、1990年代に事実上の解禁となった。わいせつの基準は最高裁判所が示した「(1)しゅう恥心を害し、(2)性的興奮を過度に刺激し、(3)善良な性道徳を害するものである」その時代、時代に応じた「わいせつ」を鑑みて判断されるようだ。現在、外性器は「わいせつ」であり、肛門や内性器である膣という内蔵は「わいせつ」でないという飯櫃な勝手ルールができてしまったようだ。クスコで内蔵を見せる素人がいるようなアダルトビデオチャットや、むしろ、ちゅうとハンパなボカシが入っているアダルトコンテンツのほうが筆者にとっては、「(3)善良な性道徳を害するものである」と感じてしまうほどだ。わいせつの時代性こそもっと審議されるべきだと思う。地上波テレビでも、かつてはヌードは氾濫していたが、いまやたまたま観た「タモリ倶楽部」のオープニングにさえ驚きを覚えるくらいに浄化されており、一般視聴の状態でヌードを見ることはなくなった。それだけ「しゅう恥心を害される」ことはなくなった。だからこそ日本だけのヘアヌードはOKのようなガラパゴスルールではなく、欧米と同等の「わいせつ」に関しても先進国をめざすべきだと思う。
ろくでなし子さんは、即日控訴をされたそうなので、その後の行方がとても気になるばかりだ…。