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魚離れ、「いか」を食べなくなった日本人。その理由は・・・

池田恵里フードジャーナリスト
いかの写真ですが、それ以外にも書きますです。(写真:アフロ)

魚離れ

「魚離れ」とよく言われているが今に始まったことではない。

2001年からじわじわと減少の一途なのだ。

そこで外務省の方からFAO(国連食糧農業機関)に聞くのが最も確かな数字ということで、問い合わせしたところ、魚介類の一人当たりの年間消費量の30年間の推移では、2005年までは日本は世界的にみて、魚介類の消費量は断トツに1位を維持していた。しかしその後2006年には韓国、2010年にはノルウエーに追い越され、魚の消費量は3位となっている。ちなみに4位が中国、5位がEUとなる(国連食糧農業機関、「Food Balance Sheets] 参照)。

このところ巨大な人口を持つ中国の消費量が1995年からじわじわ増量している。中国では流通のインフラが整備されてきており、その為、随分以前から買い負けが起こっている。一人一人の消費量が増加すれば、今後はますます日本の魚の価格はアップしていくであろう。

とはいえ、その前になぜここまで日本人が魚から離れていったのだろうか。

スーパーでも肉は好調、一方、魚は売れない

スーパー関係者に聞いてみると、

「確かに魚が売れないのですよ、肉は売れるんですけど・・・・」

「魚惣菜を中心にし、その中に「刺身」を販売するという逆発想も必要かも・・・」といった声も聞かれる。

そこで水産庁の平成25年に実施した消費者モニター自由回答をみてみることに。

魚を食べるメリットとして

  • 健康的
  • 季節感を感じることができる

魚を購入した際のデメリットとして

  • 魚のメニューで思い浮かべてもレパートリーが少ない
  • 肉に比べ割高感がある
  • 生ごみが発生しやすい
  • 日持ちがしない

小売りの方々も生ごみ問題は認識されており、

「ごみ日の前日は鮮魚の売り上げがアップするのです」

魚から肉食へ変わっていく日本人

そこで魚の購入をより詳しく見てみると、日本人の一人当たりの消費量の内容では2001年をピークに2009年以降、肉にシフトしていることがわかる。

 1人、1年あたりの消費量:農林水産省「食料需給表」
 1人、1年あたりの消費量:農林水産省「食料需給表」

このほかに、農林水産省が平成25年に消費者モニターによるアンケートを実施された内容を見ると、平成9年(1997年)と平成25(2013)年2月では、魚を食べる頻度が高い者(「週に4〜5回位」又は「ほぼ毎日」魚を食べる者)の割合が49.9%から32.1%と17.8%減少している。そして外食でも肉類より魚介類を選ぶとする消費者が減ってきているのだ。

イカが1位から4位に陥落

さて家計調査2016年魚の購入量を種類別で調べてみた。

2000年から辿ってみると、NO1だったイカがなんと4位に陥落しているのだ。

そこで2000年から総務省の家計調査から図を作成してみた。

2001年から魚の消費量が減少しているため、その前の年、2000年から作成した。

家計調査では購入頻度(100世帯当たり)支出金額、平均金額なども載っていたが、購入数のみ抽出した。

 1人当たりの年鑑購入数量 その推移 総務省「家計調査年報」2世帯
 1人当たりの年鑑購入数量 その推移 総務省「家計調査年報」2世帯

このようにイカは2005年に急激に減少し、サケは2009年より1位に安定して君臨している。

イカはレジームシフトに影響を受けやすい

中でもスルメイカはイカの漁獲量の77%を占めるとされている。しかし過去5年を見ると30%とスルメイカの減少が著しく、その影響は大きい。当然のことながら価格も高騰している。

大きな要因として

1988年1989年に生じたレジームシフトにより北西太平洋を寒冷期から温暖期に移行された(Yasunaka and Hanawa 2002)。

レジームシフトとはなにか

簡単に言えば、本来、イカは幼生は18度から23度適しており、温暖化によりスルメイカが減少したのだ。

とはいえ、解決策もあるようで

スルメイカの短期(翌年)予測の可能性について

そして今、北海道水産研究所と日本海区水産研究所で予測システムを使用した解析が進んでいる(加賀敏樹、久保田洋「スルメイカの資源と漁獲の現状(アクアネット))。

ジョンリチャードバウアー博士が学位論文題名A Biological Study of Egg Masses and Paralarvae of the Squid Todarodes pacificus(スルメイカの卵塊と幼生に関する生物学的研究)スルメイカの卵塊と幼生に関する生物学的研究を読むと、20年経った今、海洋研究はこの2つの論文ならびに資料を比較し、いかに進歩したかが伺える。

高齢化によるイカ離れ

さて意外に知られていないのは、今、イカを販売しても売り上げが芳しくないことだ。高騰していることもあってかと思うと、意外な返事が返ってきた。

老人向けの宅配弁当の関係者から聞いた話。

「弁当価格が一律同価格なので価格は関係なく、おかずにイカをいれるとたちまち残ります」

「イカは老人になればなるほど歯のこともあり食べなくなるよ」

ということで、イカを取り巻く環境の変化、他国の消費が増大したことは言われているが、加えて高齢化によって咀嚼能力の低下から敬遠されているようだ。

魚における栄養から訴求

今回は主にイカについて取り上げたが、一人当たりの年鑑購入数量を図で示したように、現在、上位にランクインしている魚を見ると、サケ、ブリと脂身、旨味を感じる魚が長らく上位を占めている。肉に対抗できる味とでもいうのか、勿論、小売りの売り場を見ると、これらの魚、なかでもマグロの販促が関東の売り場を見ると強化されている。3位にランクインしているいずれの魚も高単価でも納得してもらえ、加えて最近では解凍技術も進み、褐変が少なくなったこと、見た目もきれいな状態で売り場に並んでいることも大きい。

とはいえ、今回取り上げたイカをはじめ、魚離れは確実に進んでいる。

栄養的に考えて、魚の脂肪量が増加しても、それに伴ってオメガ3脂肪酸が増加するため、安心して食べられる。肉ばかりだとそれら栄養は47%しか満たせない(アクアネット2017年7月 女子栄養大学栄養学部教授川端輝江 参照)。いかに魚が栄養バランスが良いのかがわかる。

今後、メニュー提案の拡大化、栄養訴求、中小企業ではなかなか難しいことではあるが、漁獲したものを売り場に並べるだけでなく、ロスへの有効利用(発酵、加工)といったことまで手掛けることも大切ではないかと思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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