週末に寝だめをする人は、生理が重い?最新調査が示す睡眠と月経の関係は
いわゆる生理(月経)による痛みやむくみ、そしてイライラなどの症状にお悩みのかたも多いと思います。
最近、生理の「重さ」が「睡眠習慣の乱れ」と関係しているという研究が発表されました。
発表したのは、明治薬科大学の駒田陽子准教授を中心とする研究チームです。駒田さん達は、大学に通う女性150人に協力してもらい、生理に関連する症状の重さと、睡眠習慣について調べました。
その結果、平日に比べ土日などの休日に長く眠る、いわゆる「寝だめ」をする人は、しない人に比べ、生理に伴う症状が重くなることがわかりました。
具体的には、「痛み」「むくみ(水分貯留)」「行動の変化(出不精になるなど)」に違いが見られました。
この結果は、女性の生活にとってどのような意味を持つのでしょうか?研究を行った駒田陽子准教授に聞きました。
「週末の寝だめ」と生理の重さが関係している?
Q)まず、この研究を行ったきっかけを教えてください。
月経症状は女性にとってとても身近なもので、多くの女性が生理痛や月経過多、貧血症状、むくみ、イライラなどに悩まされています。
以前から、昼夜を交代して働く看護師や、時差のある地域を飛び回る客室乗務員など、不規則な生活をする女性は月経の周期が異常になりやすいことを示す研究はありました。
では、例えば「週末だけ朝寝坊をする」といった身近な生活習慣の乱れであっても、月経に関連する症状に変化はあるのだろうか?と思ったことが研究のきっかけです。
Q)どのようなことが分かったのでしょうか?
週末に寝だめをする人は、平日と休日で生活時間に変化が生まれます。いわば「時差ボケ(ジェットラグ)」のような状態になっているわけです。
このような、海外に行ったわけではないのに引き起こされる時差ボケは「社会的ジェットラグ」と呼ばれています。
今回の調査で「社会的ジェットラグ」が1時間以上起きている女性は、規則的な生活をしている女性に比べて月経症状を重く感じていました。
つまり「週末に数時間だけ朝寝坊をする」程度の睡眠習慣の乱れでも、月経に関係する可能性が見えてきたわけです。
Q)つまり、生理の重さに悩んでいる人は「寝だめをしないほうが良い」ということでしょうか
今回の研究だけでは、そう言い切るのは難しいかもしれません。月経症状の重さが、睡眠とは別の要因で起きている可能性も否定できないからです。
例えば、ストレスがある人は睡眠習慣の乱れがあり、それが(睡眠とは無関係に)月経の症状と関連しているかもしれません。
「あるものがあるものの『原因』となっている」という関係を「因果関係」といいますが、今回の調査方法では因果関係があるかどうかまではわからないんです。
とはいえ今回の結果は、女性にとって毎月のつきあいを少しでも楽にできる方法として、「睡眠を見直してみる」ことがひとつの手段として期待できることを示しています。
仕事に家事に忙しく、なかなか「規則正しい生活をしよう」といわれても難しい…と思われるかたも多いと思います。
でも、少し意識して「睡眠の習慣を規則的にしよう」とすると、月経を含めた女性の体のリズムを整えるうえで役に立つことがわかってきました。
日々の生活を見直そうかな?と思われたときに、少しでも今回の調査による知見がお役に立てばと願っています。
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(取材協力)
駒田陽子さん(明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授)
早稲田大学 文学部 心理学専修 卒業。早稲田大学大学院 人間科学研究科 博士課程修了・人間科学博士。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所特別研究員、東京医科大学 睡眠学講座 准教授 などを経て、2017 年より現職。
※参考文献
Social jetlag and menstrual symptoms among female university students.
Komada Y, Ikeda Y, Sato M, Kami A, Masuda C, Shibata S.
Chronobiol Int. 2019 Feb;36(2):258-264. doi: 10.1080/07420528.2018.1533561.