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実力は「B2中位以上」 3チームがナゼか“再来季”の昇格を巡って運命をかけるB3の激アツ最終節

大島和人スポーツライター
B3TVを視聴するファンにアピール (C)TOKYO EXCELLENCE

来季はB3からB2への昇格なし

Bリーグのチャンピオンファイナルは2勝先取で行われ、千葉ジェッツが6月1日の第3戦を71-62と勝利して新B1王者となった。しかし“B”の2020-21シーズンはまだ終わっておらず、実はB3の重要カードが残っている。

バスケ界はコロナ禍の影響で、昇降格のレギュレーションが修正された。2019−20シーズン(昨季)、2020-21シーズン(今季)は成績を理由にした降格が停止されている。一方でB2→B1の昇格は継続されており、B1は2019-20シーズンの18チームから20チーム、22チームとシーズンごとに増えている。

ただしB3→B2の昇格は封じられた。2020-21シーズンのB2は2チーム減の16チーム体制となっていた。

今季のB2に昇格した唯一のクラブが佐賀バルーナーズ。アリーナ問題で2020-21シーズンのB2ライセンス交付を受けられなかった東京エクセレンス(東京EX)の穴を埋めるための昇格だった。2021-22シーズンはクラブライセンスのダウングレードがなく、B2からB3の降格も出ない。つまりB2への昇格も発生しない。(※東京EXは2021-22シーズンから横浜市へ移転し、B2ライセンスも回復)

B3はプロと実業団と混合リーグ

チーム数が増えれば、各クラブへの分配金は減る。B1・B2の総チーム数を「36」に留めた判断には、既存クラブの利益を優先する意図があった。ただし上昇志向のB3クラブにとって、2020-21シーズンは難しいものとなった。

B3はプロ9クラブ、企業2チームで競われる3部カテゴリー。B2以上とは運営法人が分けられて「一般社団法人ジャパン・バスケットボールリーグ」が管轄している。今季は1月上旬に開幕し11チーム総当り4回戦制、合計(最大)40試合で争われていた。今週末の第23節で全カードが終わる。

B3はポストシーズンがなく、レギュラーシーズンの戦績だけで順位が決まるレギュレーションだ。なお今季はコロナの影響で中止になったカードがあり、各チームの試合数にバラツキがある。

再来季の昇格をかけた戦い

アイシン・エィ・ダブリュ アレイオンズ安城(アイシンAW)が現在30勝6敗で、2試合を残して既に優勝を決めている。一方で今季と来季は2位争いが重い。2位チームも2022-23シーズン(再来季)の昇格に絡むチャンスがあるからだ。

B3は「2021-22シーズン終了後におけるB2昇格対象について」として、1月15日にこのようなリリースを出している。

2020-21シーズン終了後の入替戦の開催はありませんが、2021-22シーズン終了後にB2との入替の対象(自動昇格もしくは入替戦)となるのは2クラブ(2020-21シーズンから1クラブ、2021-22シーズンから1クラブ)となります。

・B2クラブライセンスを取得したクラブの中から、2020-21シーズンおよび2021-22シーズンの成績における最上位クラブ(4位以内)から決定する

・2クラブのシーズン順位が同一の場合は、順位決定戦を講じる

まず2020-21シーズンの「B2ライセンスを取得した最上位クラブ」は自動昇格、もしくは入替戦出場の資格を得られる。今期の結果が2シーズン先のカテゴリーに影響する仕組みは異例だが、昇格の機会が奪われることによる救済措置の意味合いだろう。

「Bリーグ」の最終結論は未提示

今季のB3制覇を決めたアイシンAWは企業チームで、B2ライセンスを付与されていない。したがって2020-21シーズンは2位チームがこの対象になる。2021-22シーズンの1位・2位が今季の2位と別チームで、なおかつB2ライセンスを持っていた場合は、2位同士の順位決定戦が組まれる。

念のため無粋な説明すると、この内容は決定事項でない。先述の通りB2以上とB3は法人が違い、B2に昇格するクラブはBリーグ(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)に改めて入会する必要がある。

平たく言うと「B3が昇格させたいチーム」と「Bリーグが昇格させたいチーム」の不一致が起こった場合は、後者が優先される。実はこの問題についてBリーグの理事会がどう判断を下すか、まだ明確でない。当然ながらBリーグからのリリースも出ていない。

昇降格に関わる重要条件は開幕前に確定されて、関係者はもちろんファンに周知徹底されるべきものだ。2020-21シーズンのB3を活性化させるために「2022-23シーズンの昇格」につなげる発想は理解できる。時々刻々と動くコロナ禍の社会情勢の中で、速やかな判断は容易でない。とはいえ決定、発表のプロセスに納得し難い部分もあることを申し添えよう。

来季は「黒船」がB3に参入

ともかく今季の戦いは再来季のB2昇格を考える上で重要だ。2021-22シーズンのB3がさらに厳しい戦いが予想されていて、今季のほうが明らかに上位を狙いやすいという事情もある。

2021-22シーズンのB3に長崎ヴェルカ、アルティーリ千葉、山口ペイトリオッツ、SHINAGAWA CITY BASKETBALL CLUB(品川シティ)の4チームが入会し、15チームの争いになる。

長崎と千葉はB2でも上位に入る経営の規模感を持ち、B3の「黒船」となるだろう。長崎はジャパネットホールディングスの傘下にあるクラブで、日本最高レベルのアリーナを2024年の開業に向けて長崎市中心部に建設中。6月1日にはB1の2クラブで主将を務めたキャリアを持つ狩俣昌也の獲得も発表した。伊藤拓摩ヘッドコーチ(HC)を中心としたコーチングスタッフ、クラブハウスは既にB1上位クラスの体制だ。

東京EXと岡山の直接対決は五分

話を今季の戦いに戻すと、B3は「関係者はそのつもりで動いている」「でも昇格条件がファン、メディアにきっちり伝わっていない」状態で日程を消化していた。本来だったら昇格のかかる大一番として盛り上げられたカードが、その価値が伝わりきらないまま開催されている。

5月28日(金)から30日(日)に開催された第22節の時点で、4チームに2位以上の可能性が残っていた。板橋区立小豆沢体育館では2位・東京エクセレンスと3位・トライフープ岡山(※順位は試合前)の直接対決が2試合組まれていた。

この対戦を前に東京EX、岡山はいずれも27勝9敗で並び、直接対決の戦績も1勝1敗。直接対決の得失点差で東京EXが上回っていた。残念ながらこのカードは「東京都独自の施策による引き続きの運動施設(体育館)の休業要請」により、無観客で開催された。しかし両チームの熱気、本気が伝わる熱戦だった。

(C)Tryhoop Okayama
(C)Tryhoop Okayama

28日の初戦は岡山が100-85で勝利し、29日の第2戦は東京EXが78-75でリベンジを果たした。今季の対戦成績は2勝2敗で、得失点差は東京EXが「+4」とわずかに上回る。

静岡を含めた3チームが並ぶ

しかし最終節を前に、2位争いにはさらなるカオスが生まれている。ベルテックス静岡がさいたまブロンコスに連勝して東京EX、岡山に追いつき「28勝10敗」で3チームが並んだからだ。

勝率が並んだチームの順位は当該チーム同士の対戦成績で決まる。静岡は東京EXに3勝1敗、岡山に0勝2敗という戦績だ。23節を前にした順位は2位・岡山、3位・静岡、4位・東京EXとなった。(※2日21時10分修正)

★B3順位(5月末時点)

1位 アイシンAW 30勝 6敗

2位 岡山     28勝10敗

3位 静岡     28勝10敗

4位 東京EX   28勝10敗

5位 岩手     25勝13敗

★直接対決の戦績

岡山   2勝0敗 静岡(残2試合)

静岡   3勝1敗 東京EX

東京EX 2勝2敗 岡山

参照:B3順位表

最終節では岡山、静岡の直接対決が組まれている。岡山、静岡のいずれかが連勝をすれば、2位が確定する。ただし「他力」ながら東京EXにもチャンスがある。

「結果待ち」の東京EXにもチャンス

東京EXは最終節に対戦が組まれていない。序盤の2試合が中止になったため28勝10敗で既にシーズンを終えている。なお「29勝11敗(勝率.725)」と「28勝10敗(勝率.737)」を比較するとは後者が上だ。したがって岡山と静岡の最終決戦が1勝1敗で終わると、東京EXは漁夫の利を得る。

★最終節のシミュレーション

・岡山2勝→岡山が2位

・静岡2勝→静岡が2位

・1勝1敗→東京が2位

東京EXの石田剛規HCに「結果待ち」の心境を尋ねると、微笑みながらこう答えてくれた。

「スケジュールも含めてルールがある中で全チームが戦っている。他会場を見守りながら順位の確定を待つのも、いい経験かなと思っています」

東京EX・石田剛規HC (C)TOKYO EXCELLENCE
東京EX・石田剛規HC (C)TOKYO EXCELLENCE

「B3上位はB2中位に勝てる」

石田HCは今季のB3についてこう述べる。

「首位を走るアイシンAWさんは順位に見合った安定感があって、穴も少なく感じました。ただ(東京EXが)そういったチームにも全く歯が立たないわけではなく、僕らや静岡、岡山はどこが首位にいてもおかしくない力をそれぞれ持っている。そういうリーグに今シーズンはなっていると思います」

岡山の比留木謙司HC兼GMに同じ内容を尋ねると、「もうちょっと昇格枠がほしい…」と軽い不規則発言を交えつつ、熱い答えが返ってきた。

「正直に言ってしまえば、B3の上位4つはB2の中位に間違いなく……間違いなく勝てると思います。それぞれのチームがシーズンを無事に終えることでなく、上を目指してもっともっとクオリティを突き詰めようとしています。競技面もそうですし、興行面もマインドの素晴らしいクラブが増えている印象です」

実際に佐賀はB2初年度ながら2020-21シーズンは西地区3位に入り、プレーオフに進出した。B3の上位がB2で戦えるというのは、決して大言壮語でない。

「上を目指すクラブ」がB3を熱くする

B2の中でもB1昇格を競った群馬クレインサンダーズ、茨城ロボッツ、仙台89ERSといったチームは相応の質とインテンシティを見せていた。ただしコロナ禍の中で「無理に上を目指さず、支出を抑えて経営を安定させる」判断をしたクラブもある。存続は昇格以上に重要なミッションで、その判断が間違いというつもりはない。

しかし貪欲に上を目指すマインドのチームと、降格の不安なく漫然と戦っているチームでは、コート上で見せるパフォーマンスに違いが出る。

今季のB3を熱くしたアイシンAW、岡山、静岡、東京EX、岩手といったクラブは、B2に伍するクオリティと熱気を見せつつ、2021-22シーズンもB3に残る。そして長崎、A千葉といった「超B3級」のニューカマーが新たに入ってくる。2021-22シーズンのB3はB2を食うリーグになるかもしれない。

長崎は5月27日にもクラブハウス完成のリリースを出している。伊藤GMが「B1でも5本の指に入る」と説明していた施設で、写真や説明を見たバスケファンは驚嘆の声を挙げていた。

岡山の比留木HC兼GMは、Twitterでこうリアクションしていた。

「俺はエリートでもない奴らばっかりで、予算も大きくないこのクラブでデカいクラブを倒せるチャンスがまたひとつできたんだって興奮してる」

岡山はフロントコートからがつがつと相手ボールを追い、外国人選手も日本人選手も無関係にハードワークを見せ、ボールを全体でシェアするスタイル。タレント性で上回る“超B3級”のチームに対して、チームの完成度やB3経験で上回る来季の彼らがどういう戦いを見せるかも大きな楽しみだ。

岡山と静岡が運命の最終節

格上のクラブを倒してやろう――。そんな下剋上のマインドがあるからリーグは盛り上がり、日本のバスケ界も活性化する。B2は強化に積極的なクラブが上に抜けた一方で、下からの底上げがないカテゴリーだ。B3は上が行き止まりとなる一方で、下からの押し上げが強烈だ。

そんな熱いカテゴリーの中で、各クラブの今後を左右する最終節が6月5日、6日にある。岡山と静岡の対戦は残念ながら無観客開催が決まったものの、B3TVで皆様もご覧になれる。激動の2020-21シーズンを締めくくるにふさわしい、当事者それぞれのパッションならB1のチャンピオンシップにも負けない“真のファイナル”だ。

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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