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“T部長”を走らせ続けるヒヤヒヤ感

中西正男芸能記者
“T部長”こと日本テレビの土屋敏男さん

 1992年にスタートした日本テレビ系「進め!電波少年」など数々の人気番組を手掛けてきたのが“T部長”こと日本テレビの土屋敏男さん(62)です。大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで来月7日から開催されるライブエンタメ「NO BORDER」ではプロデューサーを担当。常に「これまでになかったもの」を追い求める土屋さんですが、その原動力になっているのが“ヒヤヒヤ”感だと言います。

ものすごーく怒られた

 僕、昔から、新しいテクノロジーとかが好きなんですよ。かつて「電波少年」の時代はCGセットの中で司会の松本明子、松村邦洋をパーンとはじけさせたり(笑)、それまでの大きなテレビカメラではなく小さな家庭用カメラでロケをやったり。

 あの小さなカメラだったから「猿岩石」のヒッチハイク企画もできたんですよね。ディレクターがカメラを持って、あとは「猿岩石」の二人だけという小さなユニットでロケができるようになったから、走ってきた普通の乗用車に乗せてもらうこともできる。

 今では当たり前に行われている“ディレクターがカメラを持つ”ということを最初に始めたわけですけど、当時は「こんなもん、放送できるか!」と日本テレビ内でものすごーく怒られました。ただ、それをやることで見てくださっている方々はすごく喜んでくださった。そして、結果的に今ではそれが当たり前にもなりました。

 それと、ヒッチハイクみたいな誰もが「えっ?」となる企画をやることで、それまでのテレビとは違うこともできるようになりました。というのは、それまでのテレビって“見たことある人”が映っているものだったんです。でも、誰もやっていなかった強い企画があれば“見たことがない”「猿岩石」という二人が映っている形でも成立するようになった。

 これはこれでね、正直、最初の1カ月ほどは「こんな知らないヤツのロケじゃなくて、松村のアポなしが見たいんだ!」「あんな、ワケわかんないものやめちまえ!」という声もたくさん聞きました。

 ただ、それでも自分の中では面白くなると確信していたし、実際、たくさんの方に喜んでもらえたし、そういう流れを今もすごく思い出しますね。

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なかったものを作る

 なので、僕は「新しいテクノロジーは新しいコンテンツを生む」と思っていて、常に何か新しい技術はないかと探し続けてきたんです。

 そんな中、1年ほど前、吉本興業(会長の)の大崎洋さんとメシを食ってまして。そこで「今度、大阪に新しい劇場ができるんだけど、アジアとか海外の方々にも楽しんでいただけるような、あまり日本語に依存しないものができないかな?」と言われまして。

 そこで(開発ユニット)「AR三兄弟」川田十夢君にも話をして、3D スキャンの展示会みたいなところにも案内してもらったんです。3Dスキャンしたものがすぐに画面の中で動いたり走ったりするのを見て「あ、これ使えないかな」と。そこがスタートですね。そこからパナソニックさんにも相談して、今までになかったものを作ってもらうようになっていった感じです。

 ただ、こうやって今までになかったものをやるとなると、困ったこともありまして…。一つ一つの機器に、値段がないんですよ。以前から使われていて流通しているものなら、もちろん値段もあるし、相場もあるんですけど、世の中に出ていないということは、そのあたりの予算の計算が全くできない。

 いったい、どれくらいお金がかかるのか。ものすごく大事な基本なのに、そこが定まらない。これはね、ぶっちゃけ、ヒヤヒヤもんでしたよ(笑)。本当に。

ヒヤヒヤがワクワクに

 ただね、それがすごく好きなんです。これまでも、ずっとヒヤヒヤしてきました。自分でもイヤなクセだなぁと思うんですけど…、やめられない。今も本番に向かって、まだまだヒヤヒヤしています。 でも、本番に向けて少しずつ具体的になってくる。自分の妄想でしかなかったものが、形になってくる。それがまたすごく嬉しいんです。

 どっかで“ヒヤヒヤ”が“ワクワク”になるんです。この魅力的な変化があるから、いつまで経っても、ヒヤヒヤがやめられないんです。ヒヤヒヤを味わうためにも「今はまだ、ないもの」を作ろうとするんですよね。

 例えば、2008年から11年までかけてやった間寛平さんの「アースマラソン」。これも最初は「できるわけないだろ」と言われました。マラソンとヨットだけで世界一周。そりゃ、体力的にもけた外れのことだし、中東とかの情勢がどうなっているのかも分からない。実際、思いもよらないことが幾重にも起こるわけです。

 でも、多くの人が見てくださっている。ならば「とりあえず行ってみて、そこで決めよう」。そんな感じが今でも考え方の軸になっています。

 今回の「NO BORDER」も、実際始まったら、どんな反応が皆さんからあるのか。ヒヤヒヤしてますけど、ワクワクしてます。それこそ、実際に体験された中国の方が「ウチの国でもやってください!」となるかもしれないし、タイの方からオファーがあるかもしれない。そうなるように頑張って面白いものを作らないといけないし、そう考えると、ワクワクしてきます。

 おそらく、秋ごろには「NO BORDER」のワールドツアーのスケジュールがかなり詰まっているはず!というイメージを持って(笑)、本番までもうひと踏ん張りしたいと思います。

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(撮影・中西正男)

■土屋敏男(つちや・としお)

1956年9月30日生まれ。静岡県出身。79年、日本テレビに入社。「電波少年」シリーズ、「ウッチャンナンチャンのウリナリ!」など数々のバラエティ番組を手がける。64年に行われた東京オリンピックが開催された1964年の東京の街を3Dバーチャルリアリティで再現するプロジェクトを2017年にスタートさせ、一般社団法人「1964 TOKYO VR」を設立する。大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで来月7日から開催されるライブエンタメ「NO BORDER」ではプロデューサーを務めている。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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