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13戦全勝9KOで、WBAウエルター級タイトル挑戦者決定戦を制したファイター

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 WBAウエルター級タイトル挑戦者決定戦として組まれたエイマンタス・スタニオニス(26)とトーマス・ドゥロルメ(31)の一戦は、非常に見応えがあった。

 リオ五輪に出場後、プロに転向して9つのKOを含む12連勝を挙げているスタニオニスと、2015年4月18日に、空位だったWBOスーパーライト級タイトルを、テレンス・クロフォードと争ったドゥロルメ。

 両者はオープニングベルから試合終了まで一歩も引かずに打ち合った。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 スタニオニスのアマ時代の戦績は、36勝13敗。36勝のうちKOは1つしかなく、リオ五輪では2戦目で姿を消している。

 その彼が米国に移り住み、プロ入りしてから見違えるように力強い倒し屋となった。が、世界タイトルマッチを経験しているドゥロルメは粘り強く、ハートが折れない。スタニオニスにとって、かつてない難しい相手であった。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 甘いマスクのリトアニア人ファイターは、プエルトリコ出身のドゥロルメに対し、基本に忠実にジャブを放ち続ける。

 2人のファイターは、1400近い数のパンチを交換した。スタニオニスは常にガードを高く構え、攻めながらもディフェンスの意識が高い。その点が明暗を分けた。

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
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 結局、3-0(117-111、116-112、115-113)の判定で、昇り竜がベテランを下した。スタニオニスは自身の戦績を13戦全勝9KOとし、ドゥロルメは25勝(16KO)

5敗1分けとなった。

 試合後、スタニオニスは笑顔で語った。

 「幼い頃からSHOWTIMEのボクシング中継を見ていたので、いつかこのステージに上がりたいと思っていました。それが成し遂げられ、かつ勝利出来て嬉しいですね。ここまで辿り着くのは、長い道のりでした」

Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME
Photo:Amanda Westcott/SHOWTIME

 リトアニア人として一人目の世界チャンピオンを目指しているスタニオニスにとって、第10ラウンド開始のゴングを聞くのは初めてのことだった。3度の10回戦を経験しているが、全て9ラウンド以内にKO勝ちを収めているためである。

 「自分が12ラウンド戦えるという事を示せて、自信になりました。それなりの準備を積んだつもりですが、何が起こるか分からない競技ですし、プレッシャーもあったので」

 スタニオニスは、そう振り返った。

 同ファイトはWBAウエルター級タイトル挑戦者決定戦と名付けられたが、スタニオニスが次戦ですんなりと挑戦できるようには思えない。また、王者を脅かすのに、もう3試合は必要であろう。

 ただし、ルックスといい、負けん気といい、スタニオニスが可能性を秘めた選手であることは間違いない。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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