日本の物価への日銀総裁の認識
世界の中央銀行がインフレ沈静の見極めに苦慮している。急ピッチの連続利上げにもかかわらず、物価の基調が衰えない懸念が強まっているためだ。利上げの終結を見通せず、市場もシナリオの修正を迫られる(29日付日本経済新聞)。
27日から29日までポルトガルの首都リスボン近郊にある世界遺産の観光都市シントラにおいて、ECBの中央銀行フォーラム2022が開催された。ECBの「ジャクソンホール版」とも言われる「ECBフォーラム」であり、注目度も高い。
今回は特に28日に開催されたパウエル米FRB議長、ベイリー英中銀総裁、ラガルドECB総裁、そして植田日銀総裁が参加した討論会が注目された。
パウエル議長は討論会で「連続で動く選択肢も排除しない」と利上げの必要性を主張。ECBのラガルド総裁もインフレ基調の低下は「まだ証拠が不十分」とした。ベイリー総裁も必要なことをすると言明した。
ただし、今回のメンバーでインフレ沈静の見極めに苦慮していていなさそうな人物が一人いる。
日銀の植田総裁は、ヘッドラインインフレ率は3%を超えているが、基調的インフレ率は日銀の目標である2%を下回っているため、金融緩和を続けているとし、緩和維持の正当性を主張した。
日銀が27日に発表した「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」では、5月実績値の刈込平均がプラス3.1%、加重中央値がプラス1.4%、加重平均値がプラス2.9%となっており、植田総裁は「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」の加重中央値がプラス1.4%となっていることを指して2%以下としたようだ。ほかの数値はさておいて。
日銀は物価の基調を正確につかむため、コアCPIのほかに加重中央値や刈り込み平均値、最頻値といった指標を独自に算出し政策判断の材料にしている。そのうちのわずかひとつの指標にしがみついているといえる。
念の為、直近発表された5月の全国消費者物価指数は総合が前年同月比プラス3.2%、コア指数が同プラス3.2%、コアコアが同4.3%となっている。
インフレ率は日銀の目標である2%を上回っており、それが1年以上続いている状態となっている。今後も物価の高止まりが予想され、円安によってさらに物価に上昇圧力が掛かることも予想される。
植田総裁以外のパウエル議長、ベイリー総裁、ラガルド総裁が果たして、現在の日銀の金融政策をどう見ているのか、こちらの本音を知りたいところである。