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石破首相は「利上げする環境にない」とした自らの発言について釈明

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 石破茂首相は2日、首相官邸で日銀の植田和男総裁と首相就任後、初めて面会した。面会後、記者団に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」との認識を示した(3日付日本経済新聞)。

 石破首相の発言の前に、赤沢経済再生担当相が、首相が日銀による金利引き上げに前向きだと言われるのは全体の絵として必ずしも正しくないと述べていた。

 この赤沢氏の発言もあったため、日銀の植田総裁との面会後の発言は、首相が日銀による金利引き上げに前向きではないと当然、捉えられた。

 石破氏はアベノミクスに懐疑的な立場であり、日銀の利上げによる金融正常化路線の支持者とみられていた。ただし、日銀の金融政策への関心は極めて薄いといった見方も出ていた。

 これに対し、林芳正官房長官は3日の臨時閣議後の会見で、石破茂首相が2日夜に日銀の追加利上げに慎重な発言をしたことに関連し、先立って行われた植田和男日銀総裁との会談では「金融政策の具体的手法は日銀に委ねられるべきとしており、植田総裁も首相から金融政策について具体的にこうしてほしいという話はなかったと述べたと承知している」と語った(3日付ロイター)。

 また、石破茂首相自らも3日夜、日本銀行の金融政策について、「利上げする環境にない」とした自らの発言について、政策判断に「時間的余裕はある」とした日本銀行の植田和男総裁の認識を念頭にしたと釈明した。官邸で記者団に語った(4日付ブルームバーグ)。

 「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」の「現在」がどの程度のタームを指すのかは不透明ながら、これは9月や10月に利上げをする環境ではないということを指すのであれば、たしかに日銀総裁の「時間的余裕はある」との発言と整合するかもしれない。

 それでも「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」という発言からは、株式市場を睨んだ発言と捉えられてもおかしくはない。もしまた首相がアベノミクス寄りの発言をしてくると、市場が過剰反応するとともに、衆院選の逆風にもなりかねない点にも注意が必要となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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