「拝啓、イーロン」スペースX社近くに不思議な広告ボードが出現
KNNポール神田です!
2017年12月5日(火曜日)イーロン・マスク率いる、ロサンゼルスのスペースX 本社横の広告ボードに、一風、変わったメッセージの広告が登場した。
『Dear,Elon. Our ambition is mashi-mashi as yours. LOVE ×ROBOT = LOVOT From another X in Tokyo』(拝啓、イーロン、私たちの野心は、あなたのように mashi - mashi です 愛×ロボット、 ラボット 東京のもうひとつのX より)
スペースX本社の社員は、この広告を出社時に必ず見かけることだろう…。そして、同様にイメージすることが、「イーロン"mashi-mashi"って一体なんだ?」…だろう。
イーロン・マスクの行った新宿のラーメン二郎にmashi-mashiが!
「mashi-mashi」とはなんだ?
その答えは、イーロン・マスクのツイート(2014年9月7日)にあった。新宿のラーメン二郎の増量メニューの「増し増し(マシマシ)」に由来している。にんにく、野菜、アブラ、カラメ(しょうゆ)などのトッピングの最大級の注文方法が「mashi-mashi」だったのだ。
つまり、『拝啓、イーロン、私たちの野心は、あなたのように、全部山盛り です』となるのだ。
ネットで 「mashimashi」 を検索すると、山盛りてんこ盛りの意味がわかることだろう。かなりひねりが複雑だ。そんな、わざわざ、なぞかけのような広告を出してまでも、アピールしたかったのは、スペースX 同様に、もうひとつ東京にXがあることを知らせたかったからだ。
ソフトバンクPepperの開発リーダーが創業したGROOVE X株式会社
GROOVE X株式会社は、トヨタ自動車、ソフトバンクのキャリアを持つ、林要(はやし・かなめ44歳)が2015年11月2日に設立した会社。現在のメンバーは約60名。Pepperの元・開発リーダーが、新世代家庭用ロボットを開発していること以外、この2年間の活動はすべてベールに包まれている。しかし、資金調達だけは順調に進み、未来創生ファンドと産業革新機構らから第三者割当増資で最大64億円、累計で80億円を調達していると2017年12月4日に発表があった。しかし、何も製品を発表せず、しかも販売までには足かけ4年もかかるという異例だらけのベンチャーである。製品のマイルストーンとしては、【1】2018年末までにLOVE×ROBOTという「LOVOT(ラボット)」を発表し、【2】2019年内に販売するということだけである。
参考事例としては、2013年にスタートしたフリマアプリの「メルカリ」が第三者割当増資で84億円を調達したのは、たったの9ヶ月前だ。日本発のユニコーン企業で知名度も利用度もあるメルカリとGROOVE Xは、株式ではほぼ同様の扱いなのだ。
筆者は林要氏と同期のソフトバンクアカデミア生なので、Pepperの発表時からも、よく知っているつもりでいたが、そこまでの株式評価に驚きを隠しきれない。
これだけの変化の激しいロボットの激戦市場で、しかも販売が今から2年後という足の長い、一般向けのロボットプロジェクトは前代未聞である。さらに、イーロン・マスクにわざわざ、その存在を知らしめるPR戦略を取る…代表取締役の林要氏に直接聞いた。
イーロンが、火星に連れていきたくなる「LOVOT(ラボット)」を目指す
「スペースX本社の真横のアドボードにわざわざ、プロジェクトの存在を知らしめしたのは、火星につれて行きたくなるようなロボット、いやLOVOTを作るんだという意気込みだ。また、今、存在するいろんな技術をマッシュアップしたようなロボットを作るのではなく、全く一から新しいハートを持ち、人に寄り添う癒やしがあり、愛着が持てるLOVOTというハードウェアを設計している」と言う。
巨額の出資を決めた役員にも一言で製品について標榜してもらった。最大64億もの出資を決めた両社、未来創生ファンド運営のスパークス・グループ株式会社 代表取締役の深見正敏氏(右端)は「(製品計画などのスケジュール感に)まさに驚いている」という。同様に株式会社産業革新機構の専務取締役の土田誠行氏(左端)は「とても愛おしい」という言葉で表現している。一層、謎は深まるばかりだ…。それはティザームービーを見ても一緒だ。ただ、効率化や合理化の為のロボットではないということだけはわかる…。
囲みの記者会見での林要氏の言葉をまとめると…「LOVOT(ラボット)」は、都市部の生活者によりそうロボットとなる。ソニーのaiboよりは大きく、ソフトバンクのPepperよりは小さい。電気はマストで必要だが、インターネットを使うかどうかは答えられない。「インターネットは、当然使う」という返事を期待したが、そこを濁すということは、IoTのロボット端末という発想ではないかもしれない。林要氏は、著書の「ゼロイチ」の中でも、「プロフェッショナルな素人が最強」と言う。中途半端な専門家には「思考の死角」が生まれると語る。もしかするとネットが主流でない、パーソナルなローカルでの情報のみでネットに奪われた時間を取り戻してくれるような存在はありかと、ふと思った。ネットで効率化を考えれば考えるほど、モノの価格は下がり続け、人の価値も大きく2極化しているように思える。もしも火星に連れていきたくなるようなロボットといえば、ネットでわかることを調べてくれるようなことではなく、本当の自分の心に寄り添えるような、良い相談役であり、自分を鼓舞してくれ、家族の一員のようなロボットなのかもしれない。
キャンペーンサイトを見ればみるほど、LOVOTにインターネットはいらないかも…という気になってきた。
「ロボットではありません。わたしは、LOVOTです。」