データ解析ツール『スタットキャスト』が弾き出した『メジャー最強ホームラン打者』は誰だ?
メジャーリーグの本塁打王争いは、24本塁打でトップのブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)を大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が1本差で追っている。現地6月24日(日本時間25日)が終わった時点で、7人の選手が20本塁打以上を放つ混戦模様だ。
ホームランは選手にとって公平とは言い難く、球場の特性に左右される。メジャーリーグの球場はユニークなものが多く、外野フェンスまでの距離に差があるだけでなく、ボストンのフェンウェイパークにそびえるグリーンモンスターのように11メートル以上の高さを誇るものもある。
平均的な球場のホームラン率を1.0とした場合、今季、最もホームランが出ているシンシナティのグレート・アメリカン・ボールパークのホームラン率は1.70。逆に最もホームランが出にくいミルウォーキーのミラー・パークのホームラン率は0.56しかない。その差は実に3倍以上もある。
ゲレーロJr.が所属するブルージェイズは新型コロナウィルス感染拡大を防ぐ目的で、カナダとアメリカの行き来が制限されており、今季のホームゲームはカナダのトロントにあるロジャース・センターではなく、春季キャンプ施設のTDボールパークと、傘下のマイナーリーグ球場であるセーレン・フィールドをホーム球場として使用。どちらもメジャーリーグの球場ではなく、TDボールパークのホームラン率は全体で3位となる1.46、セーレン・フィールドも6位の1.27。ゲレーロJr.はホームランが出やすい球場の恩恵を受けている。
そのゲレーロJr.を追う大谷だが、こちらもホームのエンゼル・スタジアムはホームラン率が1.42(4位)とホームランを打ちやすい球場。
ここで疑問として出てくるのが、球場の特性に関係なくホームランを打てる『メジャー最強のホームラン打者』は誰なのか?
その答えを出してくれるのが、データ解析ツールの『スタットキャスト』だ。
メジャーリーグの公式スタッツ専門サイト『Baseball Savant』では、スタットキャストのデータを分析して、打球を「Doubters(疑惑の本塁打)」、「Mostly Gone(ほとんどの球場で本塁打)」、「No Doubters(文句なしの本塁打)」の3通りに分けている。
「No Doubters」はメジャー30球場全てでホームランとなる打球で、「Mostly Gone」は8~29球場でホームラン、「Doubters」は7球場以下でしかホームランにならないラッキーな打球だ。
上の表は『Baseball Savant』による今季の打球分析結果だが、これによると大谷こそがメジャー最強のホームラン打者であることが分かる。
大谷が放った打球の内訳は、「Doubters」が4本、「Mostly Gone」は16本で、「No Doubters」は11本。47.8%の打球がメジャー30球場全てでホームランになる「No Doubters」だった。
このデータを元に球場の特性に関係なく、各打者が放った『真の本塁打数』を求めたのが「xHR」。大谷の「xHR」は23.1本塁打で、2位のサルバドール・ペレス(xHRは22.2本)、3位のゲレーロJr.(xHRは21.4本塁打)と抑えて、スタットキャストが弾き出した『メジャー最強ホームラン打者』となった。
ちなみに大谷は実際のホームランとxHRの差が-0.1とほぼ同じだったが、この差が最も大きかった「ラッキー」な打者はジャスティン・ターナー(ロサンゼルス・ドジャース)の+4.8。「アンラッキー」なのは-6.6のトレバー・ストーリー(コロラド・ロッキーズ)だった。
なお、このデータは各球場のサイズのみを考慮にしたもので、標高、湿度、気温、風向きと風速などは無視している。
今年のオールスターゲームとホームラン競争の舞台である標高1600メートルの高地にあるクアーズ・フィールドを本拠地とするロッキーズの打者は、実際の本塁打数よりも「xHR」の方が多いが、それは打球が飛びやすいクアーズ・フィールドの標高を考慮していないからだ。