徳島「第2回 にし阿波の花火」(11/11開催)予想以上の内容に感動、さらなる発展に期待!
2023年11月11日(土)、徳島県で「第2回 にし阿波の花火」が開催されました。四国で唯一、そして西日本でも希少な花火競技大会であり、屈指の大規模花火大会でもあります。参加煙火店のラインナップからも、かなり期待できそうと思っていましたが、期待以上の内容でした。今後もぜひ継続し発展していってほしいと感じたその内容をご紹介します。
文句なしに豪華で質の高い花火
吹筒花火の披露も
花火大会のスタートに、徳島県および、海部郡美波町の指定無形民俗文化財である「吹筒花火」が披露されました。残念ながら自分の席からは距離があり、あまりよくは見えなかったのですが、こういう伝統文化が披露されるのは楽しいし、県外からも多数の人が訪れていたので、地元の文化財を知ってもらう貴重な機会だと思います。
競技花火の内容は?
競技花火には、地元徳島の煙火店はもちろん、東北や中部、関東から、計9社の煙火店が参加。いずれも、大曲や土浦の全国花火競技大会に出品していたり、各地の大規模花火大会を担う、花火ファンならほとんどがその名を知っているであろう煙火店でした。会場で出会った地元の方曰く、「これだけの煙火店が四国に集まることはめったにない」とのこと。
競技花火は、10号玉の「芯入割物」「自由玉」、そして「スターマイン」の3部門が実施されました。
10号玉とは、直径約30cmの花火玉で、尺玉とも呼ばれます。約300mの高さまで上がり、開いた時の直径も約300mある大玉花火。
そのなかで、「芯入割物」とは、丸い花火の中にまた円(=芯)がある、つまり同心円状の花火。芯は1つだけでなく二重、三重に入っていることが多く、五重芯(外輪の円と合わせて六重の円を描く)などの非常に複雑なものもあります
「自由玉」とは、「芯入割物」のような規定がなく、より自由で独創的な花火で競います。
「スターマイン」とは「速射連発花火」のことで、短時間にたくさんの花火を連続して打ち上げる方式。「にし阿波の花火」では音楽と合わせたスターマインでの競技が行われました。
競技花火の結果は翌日には発表され、優勝は長野県の伊那火工堀内煙火店、準優勝は徳島県の岸火工品製造所でした。すべての作品は紹介しきれないので、優勝煙火店の作品のみ簡単にご紹介します。
「芯入割物」は「昇り曲導付 四重芯菊先紅緑銀乱」。芯が四重、全体で五重の同心円の花火。層のくっきりとしたバランスのいい、完成度の高い四重芯でした。
「自由玉」は、「夕暮れの明星(一番星の輝き)」のタイトル。和火ベースに見えましたが、その中からぱっと八方に呼び散るカラフルな光が、なるほど薄闇の中できらりと瞬く星なのかと思わせるとても印象的な作品でした。
「スターマイン」は「季節のうつろい~秋から冬へ~」、曲は坂本龍一「energy flow」。里山の豊かな緑に、だんだん赤や黄色が混じり、落葉のなか少しづつ白が入ってきて、やがて雪景色に染まってゆく。ストーリーはとてもシンプルなんですが、描き出される情景はとても美しかったです。
競技花火はあらかじめプログラムで作品名が明かされることが多いのでどんな花火が想像しながら見ると、より深く楽しめます。
個人的に好きだったのは、片貝煙火工業(新潟)の「三重芯漣」。
小松煙火工業(秋田)のスターマイン「瑠璃色の星」。
参加煙火店9社というのは競技大会としては少な目ですが、普段あまり花火を見ない人でも集中力を切らさず見られるちょうどよいバランスだったように思います。
それぞれ質が高いだけでなく、スターマインの選曲も含め個性的で、多彩な作品を楽しめました。
また、「メッセージ花火」では競技参加社以外の煙火店の花火が上がったため、総勢18の煙火店の花火が上がっていました。通常、「メッセージ花火」はシンプルな花火が上がることが多いのですが、ここでは各社おなじみの玉が上がったりもして、観客になるべくたくさんの煙火店の花火を見せたいという主催者の熱意の表れだと思いました。
競技以外の豪華なプログラムも
競技以外には、音楽つきのスターマインが、オープニング・フィナーレを含め、全部で5つ披露される、とても豪華な内容でした。
個人的に印象深かったのは、山梨県のマルゴーによるミュージックスターマイン「地球儀」。
マルゴーといえば、花火の常識を揺さぶるようにトリッキーに光が動く時差玉(イルミネーションのように光が移動したり回ったりする花火)や、LEDのようだとさえ言われる鮮やかな発色。
そういうマルゴーらしいインパクトの強さはありつつも、ゆっくりしたテンポの米津玄師「地球儀」に合わせ、押し引きする音の波に合わせた抑え目な表現との緩急が素晴らしかったです。
そしてグランドフィナーレの、地元徳島の岸火工品製造所による「焱神~ヒノカミ~」。「カルミナ・ブラーナ」の壮大で重厚な旋律にのせた花火は圧倒的な迫力。
この花火大会を背負う地元煙火店として、岸火工品製造所の覚悟を見たように思いました。これを見る人々に全力を叩きつけるよう。
まさに「火の神」=花火が会場全体を支配していました。厳かであり、恐ろしくさえあるのにやはりとても美しくて、その世界に引き込まれてしまいました。
会場の様子やアクセスは?
「にし阿波の花火」の会場は、吉野川河川敷の三好市と美馬市にまたがる西部健康防災公園。三好市・美馬市のみならず、徳島県もかなり協力的な印象でした。また、JR四国も臨時便の増便や増結、たくさんの駅員の方々を動員して協力体制を敷いていました。
JR利用の場合のアクセス
会場最寄り駅の江口駅から出ると、すぐに下の写真のような案内図を渡されました。最寄り駅から会場へ徒歩で向かう場合、このような案内図をいただけることはあまりないと思います。
江口駅から会場までは、東三好橋を渡ったらひたすら吉野川の堤防をまっすぐ。徒歩約30分です。
この広さの堤防が車両通行止めとなっていたので、歩きにくいわけがない。凹凸もなく道もわかりやすいので、とても快適でした。
会場内の様子
会場内は、堤防上はカメラマン席と展望ペア席、河川敷の平地部分にイス席やテーブル席が配置されていて、斜面に近いところに仮設トイレ、その手前に出店が並んでいました。
この仮設トイレの数がなかなか壮観。観客数に対してかなり多めに設置されていたように思います(写真に写っていない、左側のさらに先にもあります)。ピーク時でも、何十分も並ぶような感じはありませんでした。観客席と出店、トイレで動線が分けられていたのもとてもよかったです。
カメラマン席では、大まかな打ち上げ場所を教えてもらえたのもありがたかったです。こういうのも他の花火大会ではあまりない特典だったと思います。全体的に細かく配慮されていて、花火大会をたくさんの人に楽しんでほしい、満足して帰ってほしいという主催者の気持ちが感じられました。
最後に課題が見えるも…
花火大会で一番大変なのは、帰りです。行きはそこそこバラバラに集まってきますが、帰りは一斉に人が動くので当然といえば当然。
「にし阿波の花火」も例外ではなく、会場のゲートで人が詰まってなかなか動きませんでした。私も列の最後に並んでから列を抜けるまで、1時間近くかかりました。それでも、JR利用者は途中で左端に集められて進んだので多少早くなりましたが、駐車場へのシャトルバス利用者はさらに時間がかかったようです。列に並んでから、駐車場へのシャトルバスに乗るまでに2~3時間かかったという話もあり、かなり大変だったようでした。
もちろん事故を起こさないことを最優先した結果なので、やむを得ない部分はあると思いますが、さすがにこれだけ先の見えない長い待ち時間が発生すると疲労感が大きく、せっかくの花火の良い印象も薄れてしまいます。
基本的にとても配慮の行き届いた運営だったので、すでに次回以降の課題として挙がっていると思いますが、ぜひ改善を期待したいです。
その点を除いては、本当に満足度の高い花火大会でした。
今後も秋に開催されるのであれば、時期的に他の花火大会とバッティングしにくいし、遠方からの四国旅行を兼ねての鑑賞もおすすめですよ!