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ウクライナ製の自律型地雷探知ドローン「ST1」開発:低空飛行で地雷を検知し情報伝達・除去は人間の兵士

佐藤仁学術研究員・著述家
自律型地雷探知ドローン「ST1」(ウクライナ政府提供)

人間が歩いて地雷を探すよりも約4倍早く探知

2023年10月にウクライナの副首相のミハイロ・フェドロフは自身のSNSで、ウクライナ製の自律型ドローン探知機「ST1」を紹介していた。副首相によると「ST1」は低空飛行しながら自律的に地面にある対人地雷や対戦車地雷を探索して、地雷を検知するとその情報とデータをリアルタイムにウクライナ兵に送ることができる。「ST1」で地雷を探索して検知する方が人間の兵士が地雷探知機を持ちながら歩いて探すよりも約4倍早く地雷を探知することができる。

「ST1」は地雷を探索して検知して、その場所の情報を兵士にリアルタイムに送るだけで、地雷の除去は人間の兵士やボランティアがその場に行って実施する。人間の兵士が地雷を探知する際に地雷に触れてしまう危険性が回避しやすい。

既にウクライナ軍では「ST1」のフィールド試験を行っており、今後量産していく予定と副首相は伝えている。

▼副首相が自身のSNSでウクライナ製の自律型地雷探知ドローンを紹介

多くのウクライナ兵や一般市民が対人地雷の犠牲になっている。地雷では殺害されることはほとんどないが、手足が吹っ飛んでしまう。また小型のおもちゃのようにも見える対人地雷は子供や一般市民が拾ってしまい、爆発したら手足が吹っ飛んでしまう大けがをすることになる。

地雷の他にも不発弾や、迎撃されたが上空で爆発しないで墜落した「爆弾を搭載した神風ドローン」なども地上に散乱しており、それらも何も知らずに踏んだり触ったりしてしまうと爆発する危険性がある。対戦車地雷は戦車を撃破することを目的にしているので破壊力も強い。人間が対戦車地雷と知らずに触ってしまったら大爆発して死亡する可能性が高い。

多くの地雷は草原や茂みなど目立たないところに敷設されていて、兵士や一般市民が地雷とわからずに触れてしまい爆発している。そのため地雷の探知と除去も命がけである。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してから、ロシア軍は大量の対人地雷、戦車用の地雷をウクライナの最前線に設置している。ロシアは対人地雷の使用、生産、移譲などを禁止しているオタワ条約(対人地雷全面禁止条約)に加盟していない。

ウクライナ政府やウクライナ軍は欧米諸国が軍事支援で提供してくれたり、ウクライナの農民自らが独自に開発したりした地雷除去用の無人車などで地雷原で地雷の除去もしている。だが大型の無人地雷除去車は大量の地雷を除去するには適しているが、作業時には大きな音もするし、上空からも目立つのですぐにミサイルや攻撃ドローンの標的にされて破壊されやすい。リモート操作の無人機なので人間の兵士が攻撃時に命を落とすリスクはない。だが地雷除去車は破壊されたら草原に鉄の塊が残るだけで、地雷除去車自体の撤去作業にも相当な労力とコストがかかる。地雷除去車の方が効率的に地雷除去はできるが、現在のウクライナには地雷原が多く、地雷除去車が足りていない。このような地雷除去車での地雷除去に比べると、ドローンで探索してから人間の兵士が除去するのは時間もかかるし、リスクも高い。

地雷は単価も安いうえに、破壊力があるのでコストパフォーマンスが高い兵器である。そのため地雷を除去しても次から次へと地雷が敷設されてしまう。リスクがあり時間はかかるが、ドローンで探知して人間が地雷を除去していかないといけない。

▼ウクライナで使用されている無人地雷除去車だが、大型で騒音がするので見つかったらすぐに破壊されやすい。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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