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「定年までこの会社に勤めたい」新入社員でも4割足らず

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 仕事への不満や失望から継続就業の気持ちも薄らぐ……?(写真:アフロ)

日本の終身雇用制度的慣習も薄れつつあるとはいえ、正規・非正規雇用問題や社会保障の観点も合わせると、多くの就業者は自ら門戸を叩いた企業に長年勤めたいと考えている。一方、就業してからの企業の実態を知るに及び、長期間の就業は難しい、転職や転業を考えたいとする人も多い。今回はソニー生命保険が2017年5月に公開した、新社会人に対する意識調査結果「社会人1年目と2年目の意識調査2017」(※)を基に、新社会人と、就業してから1年が経過した準新社会人における、就業企業への就業希望年数を確認する。

腰掛け的に転職を前提として入社をした人なら別だが、多くの人は新社会人として企業などに入社を果たし、長きに渡り就業を続けたいと考えている、はず。今調査対象母集団のうち社会人1年生に、最初に就職した会社でどれくらいの期間働きたいかを聞いた結果が次のグラフ。意外にも定年まで・定年後も働きたいとする人は4割近くに留まっていた。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人1年生)(2017年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人1年生)(2017年)

ボリュームゾーンは2~5年で、合わせて31.8%。2年から10年位で合算すると4割強が収まっている。回答者はその多勢が20代前半のはずだから(社会人1年生。一応調査対象は20代なので、中には20代後半以降の人もいるだろうが)、定年退職までの期間が間近にひかえているので継続就業希望期間が短くなるとの話でもない。企業に対する忠誠心、就業し続けたい想いはさほど強くは無いようだ。さらに入社直前・直後(質問をしたのは3月末から4月頭)の時点で、すでに8.4%の人が「既に辞めたいと考えている」と答えている。何か色々と複雑な事情があるのだろうが、就業を果たせない人から見れば「もったいない」との言葉しか浮かんでこないに違いない。

これが就業してから1年が経過した、社会人2年生となると、大きく心境は変化する。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人2年生)(2017年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人2年生)(2017年)

まず「定年(後)まで働きたい」とする意見が2割近くにまで減少する。そして「すでに辞めたいと考えている」との意見が24.8%と大きく上昇、「2~3年位」との意見も増え、辞めたい意向の増加だけでなく、辞めたい時期が前倒しとなっているのが分かる。最初の「1年生」と同一人物による回答では無いので誤差が生じている可能性はあるが、1年間の就業の中で、転職(少なくとも現在勤めている企業からの離職)の想いをより強く抱かせる事柄が少なからず生じたのだろう。とりわけ、どこまで本気なのか否かはともかく、1年の就業で「この会社は今すぐにでも辞めたい」と考えている人が4人に1人近くは居る実態に、驚く人もいるに違いない。

ちなみに上記2つのグラフの値を比較することで、1年の就業期間に生じた継続就業意欲の変化を推し量ることができる。

↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人1年生から社会人2年生への変移)(2017年)
↑ 最初に就職した会社でどのぐらいの期間働きたいと思うか(単一回答)(社会人1年生から社会人2年生への変移)(2017年)

大よそ「既に辞めたい」とする意見が大幅増加し、それとほぼ同率のマイナスへの振れ幅が「定年まで」に生じている。年単位での就業希望者の回答率変化は誤差程度でほとんど変化無し。「定年まで」回答者が1年間で丸ごと「既に辞めたい」にシフトしたとは考えにくく、ところてん式に就業希望の年数が短縮化したものと考えられる。

今件は新社会人にスポットライトをあてた調査で、社会人1年生と2年生に限定されているが、仮に3年生、4年生……と就業継続年数を重ねて再調査をした場合、どのような値の変動を示すのだろうか。結婚やマイホーム購入など就業継続に関わる要素が加わるため、一概に比較することは難しいが、興味深いテーマではある。

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※社会人1年目と2年目の意識調査2017

2017年3月27日から4月5日にかけて、「今春就職した社会人1年生」「就職してから1年経過した社会人2年生」(いずれも20代)に対して携帯電話経由のインターネット調査形式で行われたもので、有効回答数はそれぞれ500人。男女比はそれぞれ1対1。調査協力会社はネットエイジア。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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