安倍総理「森羅万象」発言。歴代総理はどう発言?
統計不正問題が焦点となっている最近の国会ですが、それに関連して本日6日の国会答弁での安倍総理の発言が話題になっています。国民民主党の足立信也参議院議員から、特別監察委員会の報告書を読んだかについて問う質問への答弁の中で出た発言で、以下の通り報じられています。
この「森羅万象すべて担当している」という総理の答弁が、ネットで大きな反響を呼び、Twitterでは「森羅万象」がトレンド入りする事態にまでなっています。
森羅万象とはどのような意味でしょうか。三省堂のスーパー大辞林によれば、「宇宙に存在する、すべてのもの」とされています。辞書通りに意味をとるなら、安倍総理は宇宙に存在するすべてのものを担当していることになり、神に近しい存在ととれるわけです。
もちろん人間ひとりでそのようなことはできませんから、ネット上で大きな反響を呼んだのでしょう。Twitter上では「森羅万象担当大臣」というタグまで作られ、これもトレンド入りしています。
しかし、この言葉は本来の意味通りにとるべきなのでしょうか? 国会答弁や霞が関において、比喩的に使われている言葉だという意見がありました。ここでは過去に国会で、「森羅万象」がどう使われてきたかを見ていき、安倍総理がどのような意味で使ったかを考えてみましょう。
まず、安倍総理の過去の発言です。今になって騒がれていますが、総理になってから既に「森羅万象」を複数回使っています。
過去の安倍総理の発言を見る限り、総理という立場は森羅万象を取り扱うものだが、その全てを自分ひとりで把握・説明はできない、という認識は以前から持っていたようです。総理の立場が森羅万象を取り扱うというという認識を、他の総理大臣も持っていれば、安倍総理の発言は国会答弁における意味を踏襲したものだと言えるでしょう。
では実際に過去の総理大臣で、森羅万象を使った人はいるのでしょうか? 結論を先に言うと、過去にもいました。
上記の菅総理(当時)の発言は、東日本大震災における政府対応を巡る答弁の中で出たものですが、総理の役割は「森羅万象のことに対応」としており、また細かいところまで総理個人が知ることはできない、という意味において、今回問題になっている安倍総理のものとほぼ同じものだと言えます。しかし、当時この菅総理の発言が話題になった記憶はありません。
また、過去の総理大臣が職分的な意味で「森羅万象」を発言した例は、他にもありました。その中でも、特に総理や政府が森羅万象を所掌するような意味合いを持つものを取り上げてみます。
このように過去の総理大臣による国会答弁をみれば、政府や法が森羅万象を取り扱うもの(できるかどうかは置いて)というのは、広くある認識のようです。
このような国会での森羅万象認識について、面白い答弁がありました。石破茂議員が、田中角栄元総理から聞いた話として紹介しています。
つまり、田中角栄元総理の言葉では、森羅万象に関わるのは総理だけでなく、国会議員全員がそうだ、という意味のようです。言い換えるなら、国会議員全ては「森羅万象担当議員」ということになります。
ここまで見ると、安倍総理の「森羅万象」発言は字義通りに捉えればおかしいですが、国会答弁における歴代総理大臣の答弁を踏まえるならおかしなものではなく、むしろ与野党問わない認識を継承したものだと言えると思われます。
現政権に問題が山積しているのは事実ですが、こういう問題の無い話ばかり話題になるのもどうなんでしょうね……。