東京の雨 50年前より強烈に
熊本豪雨、1時間に150ミリ!数字を疑うほどの衝撃を受けた。凄烈になるばかりの雨に、天気予報が追い付かない。
東京を例に調べてみると、50年前と比べ明らかに雨が激しく、豪雨が頻発する実態がみえてきた。
17年ぶりの猛烈な雨
沖縄の梅雨が明けると本州は本格的な大雨シーズンというけれど、先日はいきなりの豪雨に慌てました。
熊本県甲佐町で1時間に150ミリの雨が降ったと知らされたとき、一番に頭に浮かんだのが「まさか!」という言葉。これほどの豪雨になるとは予想外でした。
1時間に150ミリといえば、日本歴代1位との差はわずか3ミリ。時間雨量150ミリを記録したのは1999年10月以来、17年ぶりです。
近年、集中豪雨、ゲリラ豪雨と大雨災害が頻発し、世の中の関心がこれまで以上に高いと実感しています。実際、短時間に激しく降る雨が昔よりも増えているという調査があります。
昨年9月の関東・東北豪雨では、茨城県常総市を流れる鬼怒川がはん濫し、甚大な被害があったことは記憶に新しい。これまでよりも雨が激しくなったと感じる方も多いでしょう。
昔と比べて、雨の降り方は変わったのでしょうか。
いろいろな角度から研究、調査が行われていますが、いま(21世紀)と50年前(20世紀)の雨の降り方を、極値統計解析を使って調べてみました。
東京における日最大1時間降水量と日降水量、それぞれを10年に1回、20年に1回、30年に1回と、出現する可能性がある降水量を推定しました。
すると、短時間に激しく降る雨(日最大1時間降水量)は50年前と比べて、明らかに増加していました。
たとえば、30年に1回の短時間強雨をみると、50年前は65ミリだったのが、今は76ミリと10ミリほど増えているのが分かります。
さらに、頻度をみると、50年前は100年に1回の確率だったのが、今は30年に1回の確率になっています。つまり、短時間に降る雨は50年前と比べ、より激しく、より頻繁に起こるようになっているのです。
一方、長い時間にわたって降る雨はどうでしょうか?
意外なことに、日降水量は50年前と比べ、少なくなっているのです。
これはあくまで東京だけの話ですが、「都心の雨は短時間に集中して激しく降る」に変わってきているようです。この背景には温暖化に伴う気候の変化と都市化の影響があります。
もともと、雨の降り方には地域性が大きいという特徴がありますが、それに加えて気候が変化していることが分かります。
気候は長い時間をかけて少しずつ変化するため、なかなか気がつきにくい側面があります。それでも、どこか違うという感覚は意義深いと思います。
【参考資料】
気象カレッジ(気象業務支援センター):応用課程 統計解析と演習2,2006年
気象業務はいま2015:コラム 地球温暖化と短時間強雨の増加,気象庁
沖大幹,2016:第4章気候変動と水 極端現象の見方,水の未来ーグローバルリスクと日本,岩波書店,154-155.