まもなく見納め! 私鉄の面影残す小さな木造駅舎 相模線 宮山駅(神奈川県高座郡寒川町)
首都圏にあって比較的長閑な雰囲気を残す相模線。近隣の路線と比べると古い駅舎も多く残っているが、近年は建て替えによってその数を減らしている。
宮山駅には小さな木造駅舎が残るが、5月9日より建て替え工事が始まっており、9月中旬には新駅舎に移行する予定である。その後、10月まで旧駅舎の解体が行われ、12月中旬までかけて屋根の新設工事が行われる予定だ。
宮山駅は昭和6(1931)年7月1日に開業。開業にあたっては地元住民だけでなく、近くにある寒川神社からも請願が行われたという。寒川神社は相模国一之宮としての長い歴史を持つ神社で、北条政子が安産祈願をしたとの記録もある。宮山駅は寒川神社の最寄り駅として多くの参拝客に利用されており、混雑する初詣シーズンには臨時改札口が設置される。普段は無人駅だが、この時だけは駅員も派遣されるそうだ。
無人化は平成28(2016)年2月21日。小さな駅舎内にはIC改札機と券売機、乗車駅証明書発行機があるものの、とても数年前まで駅員がいたと思えないほどに手狭だ。かつての窓口跡にはシャッターが下ろされている。
相模線は私鉄の相模鉄道の手によって開業した路線で、昭和19(1944)年6月1日の国有化で国鉄の路線となった。戦前の私鉄の駅舎は国鉄の駅舎と比べると簡素な造りのものや手狭なものが多く、国有化された路線においては他線の駅舎と比べて異彩を放っていた。宮山駅の駅舎もその一つである。ただでさえ小さな駅舎だが、右端の部分は平成3(1991)年3月16日の電化前後に増築されたものなので、それ以前はもっと小さな駅舎だった。
国鉄の駅として開業した駅の場合、駅前もある程度の空間が確保されていることが多いが、私鉄の駅として開業した宮山駅は駅前も手狭だ。私鉄の駅でも改築や駅前再開発によりこのような光景が減りつつある昨今、宮山駅は昔ながらの私鉄駅の風情を残す貴重な存在と言えるだろう。新駅舎移行まであと三カ月、小さな駅舎を目に焼き付けるなら今のうちだ。