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【来日直前インタビュー】ハンマーフォール、鋼鉄ライヴイベントMETAL WEEKEND 2019参戦

山崎智之音楽ライター
Hammerfall / courtesy of Ward Records

半世紀におよぶスウェーデンのハード・ロック/ヘヴィ・メタルの伝統を継承する覇者、ハンマーフォールが2019年9月、 “METAL WEEKEND 2019”で日本上陸を果たす。

9月14日(土)・15日(日)、東京・ZEPP DIVERCITYで開催されるこの鋼鉄ライヴ・イベントにはラウドネス、ミラス、ビースト・イン・ブラック、若井望&ロニー・ロメロのMETAL SOULSという強力なラインアップが集結するが、ハンマーフォールは2日目、15日(日)のヘッドライナーとして出陣することが決まっている。

ニュー・アルバム『ドミニオン』が本国スウェーデンのナショナル・チャートで2位、ドイツでも4位にランクインするなど、メタル界を超えて絶大な支持を獲得。盟友フレドリック・ノルドストロームをプロデューサーに迎えて、妥協なき正調メタルの鉄槌が、北欧の凍土を粉砕する。スウェディッシュ・メタルの英雄たちの魂が宿るサウンドは鋭い切れ味と圧倒的な破壊力、そして溢れんばかりのメロディで迫るものだ。

ヴォーカリストのヨアキム・カンスが「バンドの歴史の頂点」と断言するアルバムの世界観、そして日本公演への展望を語った。

<スウェーデンのメタル・バンドとして誇りに包まれる瞬間>

●『ドミニオン』は“制覇・覇権”という意味ですが、どのような思いが込められているのでしょうか?アルバムの多くの曲はメタル・コミュニティやメタル・ワールドを描いているようですが...。

Hammerfall『Dominion』ジャケット(ワードレコーズ/現在発売中)
Hammerfall『Dominion』ジャケット(ワードレコーズ/現在発売中)

確かに「ワン・アゲインスト・ザ・ワールド」は“メタル・ハート・クルセイダーズ”達が世界と戦うイメージだ。この曲は俺たちがステージに上がる前の気持ちを描いたものだ。バンドとファンが一体になって、聖戦に向かうんだ。ただ、多くの歌詞はメタル・ワールドのことだけでなく、日常生活にも当てはまることだよ。リスナーがそれぞれの人生に照らし合わせて、自由に解釈して欲しい。「チェイン・オブ・コマンド」の歌詞はウォリアーが戦地に赴くという、いかにもヘヴィ・メタルらしいテーマだけど、人生のさまざまな局面に当てはめることが出来るよね。『ドミニオン』は曲ごとに異なる方向性の、多彩なアルバムにしたかった。「セカンド・トゥ・ワン」と「ネヴァー・フォーギヴ、ネヴァー・フォーゲット」のメッセージは正反対といえるものだし、「ドミニオン」はミルトンの『失楽園』を緩くモチーフにしている。

●そんな中で「アンド・イェット・アイ・スマイル」はかなりの異色曲ですね。

初めて「アンド・イェット・アイ・スマイル」のデモ・トラックを聴いたとき、アルバムに合うか判らなかったんだ。でもある時、歌詞のイメージが頭の中にパッと浮かんだ。そうして完成させて、レコーディングしたんだ。今ではアルバムでも一番のお気に入りの曲だよ。この歌詞は死の床についた人物が、自分の人生を振り返っているんだ。人生で幾つも愚かな間違いをしてきた、でも最期になって後悔するのは、自分がやったことではなく、自分がやらなかったことだ...ってね。

●オーディオスレイヴの「ライク・ア・ストーン」も死の床についた人物の回想を描いていますが、聴いたことはありますか?

いや、それは知らなかった。クリス・コーネルは素晴らしいシンガーだったし、ぜひ聴いてみるよ。クリスのヴォーカルには凄いエモーションが込められているし、サウンドガーデンの頃から敬意を持ってきた。彼が亡くなったのは、ロックにとって大きな損失だね。

●アルバムからの先行シングル「(ウィ・メイク)スウェーデン・ロック」はスウェーデンのハード・ロック/メタルへのトリビュートですね。歌詞でフィーチュアされているアーティストや曲題をざっと挙げると、ヘヴィ・ロード「サン・オブ・ザ・ノーザン・ライト」、イングヴェイ・マルムスティーン「ファー・ビヨンド・ザ・サン」「ジューダス」、ヨーロッパ「サイン・オブ・ザ・タイムズ」、220ヴォルト「キャリー・オン」、トリート「ワン・ウェイ・トゥ・グローリー」「ウィ・アー・ワン」、キャンドルマス「ソリチュード」「ザ・ダイイング・イリュージョン」、シルヴァー・マウンテン「ブレイキン・チェインズ」、バソリー「コール・フロム・ザ・グレイヴ」、ジョン・ノーラム「エターナル・フレイム」、アンリーシュド「ソイル・オブ・アワ・ファーザーズ」...。

「(ウィ・メイク)スウェーデン・ロック」の歌詞を書くのは難しかったけど、とても楽しい作業だった。1960年代末、ノヴェンバーというバンドからスウェーデンのハード・ロック/ヘヴィ・メタルは始まったんだ。それからさまざまなバンドが登場して現代、ゴーストやサバトンが活躍している。そんな豊潤な軌跡を1曲にしたかった。ただ、歴史の授業みたいにするのではなく、バンド名や曲タイトルをたくさんフィーチュアしたんだ。歌詞に登場するバンドは、全部大好きだ。初期の最も重要なバンドのひとつはヘヴィ・ロードだ。俺も十代の頃、大ファンだったよ。イングヴェイはスウェーデンから世界に飛び立って、ギターに革命を起こした。ヨーロッパは世界中でビッグになった。メジャーなバンドばかりじゃない。“A call from the grave where flames are eternal”という1節ではバソリーの「コール・フロム・ザ・グレイヴ」とジョン・ノーラムの「エターナル・フレイム」を引用しているけど、それらの曲を書いたクォーソンとマルセル・ヤコブはもうこの世にいない。彼ら2人を同じ1節に登場させることが出来て嬉しいね。「完璧だ!」と身体が震えたよ。

●アット・ザ・ゲイツやイン・フレイムスは比較的最近のバンドだし、あえて触れなかったのですか?

いや、もちろん彼らの曲タイトルなども入れたかったけど、良いフレーズの繋ぎ方などがなかったんだよ。決して長い曲ではないし、詰め込めるバンド名や曲タイトルは限られているからね。ただ、どちらのバンドもミュージック・ビデオには登場するよ。

●「(ウィ・メイク)スウェーデン・ロック」のビデオはどのような内容ですか?

いわゆるビデオ・クリップとリリック・ビデオを兼ね備えた感じかな。ハンマーフォールが演奏していて、スウェーデンのさまざまなバンドの写真やロゴがビデオ全編に散りばめられているんだ。40〜50、60バンドが登場するよ。膨大な量だから、管理関係をクリアするのが大変だった(苦笑)!スウェーデンのハード・ロック/ヘヴィ・メタルの50年を5分に凝縮している。

●ただ、そんな引用がひとつもなかったとしても、「(ウィ・メイク)スウェーデン・ロック」は最高のクラシック・メタル・ソングですね。

うん、俺もそう思うよ。一度聴いたら、メロディとコーラスは忘れられないんじゃないかな。世界中のライヴ会場でメタル・オーディエンスが「スウェーデン!」と叫ぶのは、スウェーデン出身のメタル・バンドである俺たちが誇りに満たされる瞬間だろう。もちろん日本でもみんなに一緒に歌って欲しいね。

<『ドミニオン』はメタルの扉を開け続ける>

●共同プロデューサーのフレドリック・ノルドストロームは初期ハンマーフォールの作品を手がけてきて、また1990年代にアット・ザ・ゲイツやイン・フレイムスなどをプロデュースして“イェーテボリ・サウンドの父”と呼ばれていますが、今回彼を起用したのは、彼のスウェーデンのロック史への貢献も考慮しているのでしょうか?

フレドリックは優れたプロデューサーだ。彼を起用したのは、それが最大の理由だよ。メタルの分野に留まることなく、あらゆる音楽のジャンルで、彼は最高峰のプロデューサーだね。もちろん彼の功績は素晴らしいものがある。彼の生み出したイェーテボリ・サウンドはスウェディッシュ・メタルを新たな次元へと導いたし、ハンマーフォールの最初の2作『グローリー・トゥ・ザ・グレイヴ』『レガシー・オブ・ザ・キングス』でもプロデュースを担当している。彼はスウェーデンのロックの歴史、そしてハンマーフォールの歴史において重要な位置を占めるプロデューサーだよ。

●スウェーデンは最高のハード・ロック/ヘヴィ・メタルだけでなく、優れたポップ・バンドを生んできましたね。ABBAはもちろんそうだし、ロクセットやエース・オブ・ベイスも世界的なヒットを生んでいます。

うん、俺自身は必ずしも彼らの熱心なファンではないけれど、ABBAには大きな敬意を持っているし、天才だと思う。エース・オブ・ベイスは1990年代に成功を収めたバンドだけど、俺はあまりハマらなかった。キャッチーなメロディがあったし、それがウケたんだろうけど、ABBAほどではなかった。今から40年後、彼らの音楽は聴かれていないと思う。1990年代の前半は音楽にとって決して良い時期ではなかった。特にグランジは好きではなかった。最悪だと思ったよ。

●ハンマーフォールがデビューした1990年代はメタルに逆風が吹いていた時期でしたが、どのように記憶していますか?

バンドが結成したのは1993年、グランジ・ブームの真っ只中だった。ハンマーフォールはイェーテボリのデス・メタル・バンドでやっていた仲間たちのサイド・プロジェクトだったんだ。みんなクラシック・ヘヴィ・メタルを聴いてミュージシャンを志した連中で、俺は元々クラシック・ヘヴィ・メタルをやっていて、彼らと趣味が合って意気投合した。そうしてハンマーフォールが生まれたんだ。当時、クラシック・ヘヴィ・メタルをやるのは自殺行為だと言われた。でも「そんなの知ったことじゃない。俺はやりたい音楽をやるんだ」と答えたよ。俺たちをせせら笑った連中の“クール”なバンドはどれも解散して、俺たちはここにいる。そういうことだよ。

●1990年代の停滞から現代の隆盛まで、ハンマーフォールはメタルの復活に多大な貢献をしてきましたが、それはどんなプロセスでしたか?

2019年、メタルはすごく盛り上がっている。夏フェスには何万人もの大観衆が集まるし、ヒット・チャートにもメタルのアルバムが何枚も入っている。現代のメタルの盛り上がりに少しでも貢献出来たとしたら、本当に嬉しく思うよ。ハンマーフォールを始めた頃、メタルは本当に低調だったんだ。アイアン・メイデンはブルース・ディッキンソンがいない時期で、800人収容のクラブも満員に出来なかった。ジューダス・プリーストやブラック・サバスもそうだった。でもその後、メタルは蘇ったんだ。俺たちがデビューしてから、いろんなバンドが来ては去っていくのを見てきた。良いバンドは、やはり長続きするね。ただ、バンドの寿命には限りがある。これから5年間で、メタル界の様子は大幅に変わると思うよ。KISSやアイアン・メイデン、エアロスミスなどが5年後に最前線で活動しているか判らないからね。そのとき、どんなバンドがフェスのヘッドライナーを務めるか...ヘヴィ・メタルの世代交代に興味があるよ。俺たちのファースト・アルバム『グローリー・トゥ・ザ・グレイヴ』はヨーロッパでメタルの扉を開け放ったかも知れない。『ドミニオン』は、その扉を開け続けるアルバムなんだ。

●レッド・ツェッペリン「移民の歌」やイングヴェイ・マルムスティーン「アイ・アム・ア・ヴァイキング」などを筆頭に、北欧神話や英雄伝説はヘヴィ・メタルにおいて、しばしば重要なテーマとなってきました。ハンマーフォールはそれらとは一線を画して、独自の“ヘクター伝説”を描いてきましたが、「ブラッドライン」であえて北欧神話を題材としたのは何故でしょうか?

うん、「ブラッドライン」では初めて北欧神話を題材にしている。これまでは、あえて距離を置いてきたんだ。俺たちよりもっと得意にしているバンドがいるからね。アモン・アマースに任せていたよ(笑)。でも俺たちがスウェーデン出身ということで、ヘクターのハンマーについて歌っているのに、“ソーのハンマーだね”と混同されたりもした。ハンマーフォールの歌詞は北欧神話よりもテンプル騎士団、あるいはアーサー王と円卓の騎士の伝説に近いと考えているよ。でも「ブラッドライン」のリフとメロディを聴いて、アスガルドや神々のイメージが浮かんできたんだ。その世界観が拡がってきて、止まることがなかった。それに抗うことなく、溢れる描写をそのまま歌詞にしたんだよ。

●2019年9月14・15日に開催されるライヴ・イベント“METAL WEEKEND”の2日目にヘッドライナーとして出演しますが、どんなショーを期待出来るでしょうか?

『ドミニオン』ワールド・ツアーがスタートして、ドイツの“ヴァッケン・オープン・エアー”やスウェーデンの“スウェーデン・ロック”フェスなどに出演してから日本に行くんだ。全身が熱い状態で東京のステージに立つことになる。ハンマーフォールのファンは栄光に包まれるだろう。ラウドネスはずっと昔からファンだし、一緒にショーをやりたいとずっと考えてきたんだ。『クリムゾン・サンダー』(2002)の日本盤ボーナス・トラックとして彼らの「CRAZY NIGHTS」をカヴァーしたほどだよ!ビースト・イン・ブラックは最近出てきたメタル・バンドでは最高の部類に入るし、最高にクールなライヴ・イベントになるだろう。日本に行くのが今から楽しみだ。

Hammerfall / courtesy of Ward Records
Hammerfall / courtesy of Ward Records

BURRN!創刊35周年記念

WARD LIVE MEDIA PRESENTS

METAL WEEKEND2019

Powered by Guardian Tokyo

出演

DAY1 9/14(土)   LOUDNESS / MYRATH / BEAST IN BLACK / Ronnie Romero + Nozomu Wakai METAL SOULS HR/HM Historia

DAY2 9/15(日) HAMMERFALL / MYRATH / BEAST IN BLACK / Ronnie Romero + Nozomu Wakai METAL SOULS HR/HM Historia

会場

東京:ZEPP DIVERCITY TOKYO

日程&開場/開演時間

9/14(土) 開場 15:00 / 開演 16:00

9/15(日) 開場 15:00 / 開演 16:00

※両日再入場可

METAL WEEKEND2019特設サイト

http://wardrecords.com/page/mw2019/

ハンマーフォール日本レーベル公式サイト

https://wardrecords.com/products/list_artist54.html

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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